【国際取引の税務~支払編⑩~】外貨建てで支払う場合の換算方法

【国際取引の税務〜支払編⑥〜】租税条約による特例を受けるための手続き

海外との取引においては、外貨建てで支払いを行うことも多いかと思います。

ライセンス料などを外貨建で支払う場合には、源泉所得税を計算したり、その取引を帳簿に記入する際に、換算方法によって金額が異なってきてしまいます。

今回は、外貨建てで支払った場合に、どのように換算するのかについてご説明したいと思います。

【国際取引の税務~支払編⑩~】外貨建てで支払う場合の換算方法

外貨建てで支払う場合の源泉所得税の計算

海外取引において、外貨建てで支払う場合には、まずはその支払額を日本円の金額に換算した上で、源泉徴収税額を計算します。

 

この換算方法については、相手方と取り決めた金額(請求書や契約書などの金額)が円建てなのか外貨建てなのか、その支払い(決済)は日本円で行うのか外貨で行うのか、さらに外貨で支払う場合には支払期日が定められているのかどうかで、換算方法が異なります。

これを整理すると、次の通りとなります。

円換算に使用する為替レートは、原則的には、その支払をする者の主要取引金融機関が公表しているTTB(対顧客直物電信買相場)とされています。

 

具体例

例えば、次のような支払いの場合には、源泉所得税は10,500円となります。

・海外の会社に特許権のライセンス料を支払う

・支払う金額は、契約書にUSD10,000と記載されている

・支払期日は4月30日である

・当社のメインバンクが公表する4月30日の為替レート(TTB)は、1ドル=105円である

・租税条約の適用により、源泉税率は10%

 

(1)円換算
USD10,000 × 105円/ドル = 1,050,000円

(2)源泉所得税の計算
1,050,000円 × 10% = 10,500円

 

外貨建取引の換算方法

上記は、あくまで源泉徴収税額を算出する場合のお話です。

外貨建取引(取引の表示価格が外貨である取引)を行った場合には、それを会計帳簿に記帳する際(仕訳をする際)にも、日本円に換算する必要があります。

 

取引を行ったとき

法人税法の取扱いにおいて、外貨建取引を行った場合には、その取引を行った時点の為替レートにより日本円の金額に換算することとなっています。

この為替レートは、原則としてその法人の主たる取引金融機関の為替レートを用いて換算することとされています。

また、この為替レートは、基本的にTTM(電信買相場と電信売相場の仲値)を使用することになります。

※例外的に、収益や資産については取引発生日におけるTTB、費用や負債については取引発生日におけるTTMを使用することができますが、その場合は継続適用が条件となっています。

 

なお、もし継続的に次のような社内レートを設定している場合には、その取引日のレートではなく、社内レートを使用することも認められています。

(1)前月末や前週末等の一定時点の為替レート

(2)前月や前週の為替レートの平均値など

 

売掛金や買掛金の決済をしたとき

売掛金が入金されたり、買掛金の支払いをする際には、その決済(入金または支払)により実際に入金又は支払った日本円の金額で記帳することになります。

もし自社が保有する外貨で支払った場合には、その外貨について換算が必要です。

ここで、その決済日の為替レートにより換算した金額と、当初の円換算額との差額が生じることがありますが、この差額は為替差損益として、収益又は費用に計上します。

 

期末に売掛金や買掛金が残っているとき

海外取引における支払いや売上について、期末時点で未払い又は未回収の買掛金・売掛金がある場合には、これらを期末時点の為替レートで円換算しなければならない場合があります。

これらの売掛金や買掛金は、いったん取引日において円換算されていますが、これを期末日時点の為替レートに置き換えるような処理を行います。

 

期末日に改めて換算する必要があるのは、次の表で「期末時換算法」により換算する外貨建資産負債です。

 

さいごに

外貨建の取引を行った場合には、どの時点の為替レートを使用するのかを整理しておかないと、正しい処理をすることができません。

特に源泉徴収税額については、使用するレートによって納付する税額が異なってしまいますので、注意が必要です。

 

次回のお話

次回以降は、海外への支払いに関して、具体的な事例をご紹介していきます。

個々のケースによって取扱いが異なる可能性があるため、簡単な事例紹介にとどめたいと思います。

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