会計帳簿の残高は何をチェックすればよいですか?【会社決算のポイント④】

【会社決算のポイント④】残高を合わせる

決算整理をする上で、意外とおろそかにされてしまうのが、勘定科目の残高チェックです。

残高チェックは地味な作業ですが、誤りを発見するためには大切な手続きのひとつになります。

今回は、残高試算表と科目残高のチェックについて簡単にお話します。

基本的に、会社の決算や税務申告については、ご自身で全てを行うのではなく、少なくとも税務申告については税理士にお任せいただくことが一般的です。
このシリーズでは、会社の決算や記帳についてはご自身で帳簿付けをされおり、決算や税務申告を税理士に依頼している方を対象としていますが、税理士に記帳まで全てお願いしている方であっても、決算にあたって税理士と相談する際に必要な知識となりますので、ぜひご一読ください。

個人事業者で青色申告をされている方も基本的には同様ですので、個人の方もぜひ参考にしてください。

【会社決算のポイント④】残高を合わせる

残高試算表を出力する

日々の取引を帳簿に記入する(会計ソフトに入力する)ときは、基本的に「仕訳帳」や「総勘定元帳」「補助元帳」などを使用するかと思います。

科目ごとの金額の推移や残高を確認するのであれば、「総勘定元帳」や「補助元帳」を使用します。

ただ決算時においては、これらを集計した「残高試算表」をチェックするのが便利です。

残高試算表とは?

会計帳票のひとつで、仕訳帳などに入力したデータを、勘定科目ごとに集計したものです。
期首の残高、当期中の増減、期末の残高を一覧で見ることができます。
一般的には「合計残高試算表」のことを指しますが、単に「残高試算表」「試算表」と言うこともあります。

帳簿に使用している勘定科目が全て表示され、それぞれの残高を一覧で確認することができます。

まずは「残高試算表」を出力して、ひとつひとつの科目をチェックするのが一般的です。

合計残高試算表

チェックポイント

管理表と金額が一致しているか

売掛金や買掛金については、会計ソフトなどの帳簿とは別に、独自の管理表を作って入金や支払いの管理をされている方が多いかと思います。

売上や仕入れの件数がそれ程多くなければ、敢えて管理表を作らなくても結構ですが、その場合でも、請求書を整理して、期末時点で未入金だったり、支払っていないようなものを集計してみてください。

その集計金額が、帳簿の残高と一致していない場合には、次のような状況が考えられます。

・売上や仕入れが帳簿から漏れている
・帳簿に二重に計上してしまっている
・売掛金の入金が遅れている
・買掛金の支払いを忘れている
・売掛金や買掛金以外の科目で仕訳を切ってしまっている

売上や仕入れについては、できれば毎月確認した方が良いですが、少なくとも決算月においては1年分の総点検をするためにもきちんとチェックすることが必要です。

マイナス金額はないか

お客様の帳簿を拝見していると、残高がマイナスとなっていることが良くあります。

基本的に、勘定科目の残高がマイナスになるようなことはありません。

もし残高がマイナスになっていたら、何かが間違っているのではないかと疑ってみてください。

使用していない勘定科目はないか

日々の帳簿への記入(会計ソフトへの入力)をしているときは、使用する科目はその都度考えて記入するため、1年経ってみたら、その科目を使ったのは1回だけだったというものもあるかと思います。

毎年その科目を使用していて、たまたま今年だけ取引が少なかったということであれば特に修正は不要ですが、もし今後も使用する頻度が少ないようであれば、他の科目にまとめてしまっても良いかと思います。

勘定科目は、絶対にこれを使わなくてはいけない!というルールがある訳ではありません。

もちろん、ある程度の決まりはありますが、帳簿の一番の目的は、自社の経営状況を自分が確認することにあります。

自分で管理・把握しやすいように、ご自身の会社に合わせて柔軟な科目設定をして頂ければと思います。

勘定科目ごとの残高チェック

残高チェックをする上で注意したいポイントをいくつかご紹介します。

現金

現金や小口現金といった科目は、間違いも多い反面、帳簿と残高を合わせやすい科目です。

期末時点の現金を実際に集計してみて、帳簿と合っているか確認してみてください。

もし帳簿と一致していなければ、他の決算整理を終えた後で、「現金過不足」という科目などに差額を振り替えます。

預金

銀行口座については、現金よりも更に残高を合わせやすいかと思います。

口座の残高はもちろん、日々の入出金についても通帳に明細が記載されていますので、1件ずつ帳簿と照合していきます。

特に、銀行口座を複数保有している場合は、口座間の振替をした場合に、帳簿への記入が二重になっているケースが多いので注意してみてください。

売掛金

売掛金や買掛金については、上記【チェックポイント】でご説明したとおりです。

売上や仕入れに直結しますので、間違いがあると当期の損益計算や、税金の計算に影響してしまいます。

間違いがないように、きちんと確認してください。

仮払金・仮受金

例えば、社長や社員にお金を渡したり、現金や預金の不明な入出金について、期末時点では仮払金や仮受金などの科目で処理しておくケースがあります。

期中にこれらの科目を使用したら、できるだけ早急に本来計上すべき科目に振り替える必要があります。

期末時点でこれらの科目に残高が残ってしまっていないか注意してください。

なお、社長や親族に対する仮払金の内容を「貸付金」として処理する場合には、その期間に応じて貸付金利息を収益として計上しなければなりません。

【参考記事】
【法人の決算に向けて②】役員に対する貸付金がある場合

前払費用

既に当期中に支払っていても、期末においてまだサービスの提供を受けていないようなものは、税務上は費用にすることはできませんので、決算時に「前払金」または「前払費用」として処理することになります。

ただし、「前払費用」のうち、支払った日から1年以内にサービス提供を受けるものであれば、その支払った年度に一括で費用として計上することが認められています。

このような費用を、「短期前払費用」と言います。

効果は限定的ではありますが、少しでも今期の節税を考えているようであれば、短期前払費用として処理できないか検討してみてもよいかと思います。

【参考記事】
【会社決算のポイント②】未払費用を計上する
【会社決算のポイント③】短期前払費用を経費に入れる

買掛金

売掛金や買掛金については、上記【チェックポイント】でご説明したとおりです。

売上や仕入れに直結しますので、間違いがあると当期の損益計算や、税金の計算に影響してしまいます。

間違いがないように、きちんと確認してください。

未払費用

当期中にサービスなどを受けており、期末時点において支払義務が確定しているような費用は、実際の支払いが翌期であったとしても、税務上は費用に計上することが認められます。

たまに、「請求書が届かないと経費に計上できない」と思い込んでいる方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。

当期に計上すべき費用は、漏れなく費用として計上するように再度確認してみてください。

【参考記事】
【会社決算のポイント②】未払費用を計上する

未払金

会社用のクレジットカードを使用している会社も多いかと思います。

期末のクレジットカード未払い残高は、期末月の翌月と翌々月に支払うカード明細を見て帳簿と合わせることになります。

よくあるのが、期末のクレジットカード未払い残高と、帳簿の未払金残高が一致しないケースです。

毎月の支払いについては間違いなく記帳されていると思いますので、次のいずれかが原因であると想定されます。

・カード利用時の仕訳が記入されていない
・取引が二重で計上されている

クレジットカードの明細は捨てないようにして、1件ずつ帳簿と明細を突き合わせて確認します。

借入金

借入金の返済や借入時の取引はシンプルですが、まれに残高が一致しないことがあります。

これは主に、毎月の返済時の仕訳を入れるときに、利息金額と元本の金額が間違っていることが原因と考えられます。元本は「借入金」勘定からマイナスし、利息部分は「支払利息」勘定に計上するのが正しい仕訳です。

毎月の返済額全額を借入金勘定からマイナスしてしまうことがありますので、期末時点できちんと支払利息に振り替える必要があります。

さいごに

決算時の勘定残高チェックは、原則的には全ての科目について実施することになります。

一度決算をしてしまうと、翌年以降に修正することは大変ですので、間違いがないように注意してください。

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【はじめての決算】
①そもそも「決算」とは?
②決算整理とは?
③税務申告で作成する書類は?
④申告しないとどうなるか?

<その他、会社決算に関する記事>

【会社決算のポイント】
【会社決算のポイント①】発生主義とは?
【会社決算のポイント②】未払費用を計上する
【会社決算のポイント③】短期前払費用を経費に入れる
【会社決算のポイント④】残高を合わせる
【会社決算のポイント⑤】減価償却費を計算する
【会社決算のポイント⑥】少額減価償却資産の処理方法
【会社決算のポイント⑦】固定資産か修繕費か
【会社決算のポイント⑧】棚卸しをして在庫を計上する
【会社決算のポイント⑨】消費税や法人税の期末処理
【会社決算のポイント⑩】その他の決算処理

【法人の決算に向けて】
【法人の決算に向けて①】領収書がない費用を計上しなかった場合
【法人の決算に向けて②】役員に対する貸付金がある場合
【法人の決算に向けて③】自宅を法人の事務所として使用している場合
【法人の決算に向けて④】個人事業で使っていた資産を引き継ぐ
【法人の決算に向けて⑤】法人設立前の費用を忘れずに計上する
【法人の決算に向けて⑥】開業費を経費に算入する
【法人の決算に向けて⑦】法人設立前の売上については、個人で確定申告が必要

【法人税の申告調整】
【法人税の申告調整①】役員報酬を期中に減額した
【法人税の申告調整②】期末に役員賞与や親族への賞与を未払計上した
【法人税の申告調整③】交際費の計算(区分)
【法人税の申告調整④】貸倒損失
【法人税の申告調整⑤】税金の調整(費用になるもの、ならないもの)

決算や申告がはじめての法人のお客様へ

このシリーズでは、簿記や経理をある程度理解している方を前提として、決算整理の際に注意すべき点をご説明していきます。

基本的には、帳簿だけをご自身で作成して、決算書や税務申告書の作成を税理士(会計事務所)に依頼しているような方を対象としてご説明します。

「どうせ赤字だから、決算や申告が少しくらい間違っていても大丈夫だろう」
「うちは規模が小さいから、税理士や会計事務所に頼むまでもない」
「会計ソフトを使えば自分でも作れそうだから、わざわざ高い報酬を払ってまで税理士に依頼するのがばかばかしい」

・・・実際にこういったお話をお聞きすることも多いです。

しかし、間違いが多い決算申告では銀行にも税務署にも信用されませんし、経営判断や節税対策には全く使えません。
また、個人事業の確定申告と比べると、法人の決算や申告は格段に難易度が高くなりますので、ご自身で正しい決算申告をすることは非常に難しいと思います。

私どもの事務所では、お客様の方で会計ソフトへの入力が済んでおり、決算や税務申告だけを頼みたいというご依頼もお引き受けしております。

もちろん、会計ソフトへの入力まで丸投げしたいというお客様や、日々の節税相談をご希望のお客様、更には過去数年分の申告をまとめて依頼したいという法人の方も、ぜひ一度ご相談ください。

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