会社設立前の費用はどこまで経費に入れられるのか?【法人の決算に向けて⑤】

【法人の決算に向けて⑤】法人設立前の費用を忘れずに計上する

個人事業からの法人成りや、会社を作って起業をした場合、会社設立前にも費用が掛かっているかと思います。

弊社にご相談いただく中でも、会社設立前に支払ったものについて、どこまで会社の経費に入れられるかというご質問をよく受けます。

そこで今回は、法人設立”前後”で発生する費用をどのように処理するのかをご説明します。

基本的に、会社の決算や税務申告については、ご自身で全てを行うのではなく、少なくとも税務申告については税理士にお任せいただくことが一般的です。

このシリーズでは、会社の決算や記帳についてはご自身で帳簿付けをされおり、決算や税務申告を税理士に依頼している方を対象としていますが、税理士に記帳まで全てお願いしている方であっても、決算にあたって税理士と相談する際に必要な知識となりますので、ぜひご一読ください。

個人事業者で青色申告をされている方も基本的には同様ですので、個人の方もぜひ参考にしてください。

【法人の決算に向けて⑤】法人設立前の費用を忘れずに計上する

会社設立前後の費用

「創立費」と「開業費」

会社を設立し、実際に事業を始めるまでには、様々な支出を行います。

会社を設立する”前”に支払うようなものもありますが、会社設立前に支払ったものでも、それが事業に関連するものであれば、会社の経費として計上することができます。

事業を始めるまでに支払うような経費としては、大きく分けて次の2種類があります。

創立費・・・会社を法律的に作るまでにかかる費用

開業費・・・営業を開始するまでにかかる費用

上記の中には、会社に資本金を払い込んで設立するより”前”に支払いが発生するようなものもあるかと思います。

会社としてはお金がありませんので、一旦は代表者などが個人で立て替えておいて、会社設立後に会社からその立替金を返してもらうようにすれば問題ありません。

どのタイミングで費用化するか

詳しくは次回ご説明しますが、「創立費」や「開業費」は、原則的には5年間で均等に償却(費用化)するものと決められているものの、会社の任意のタイミングで費用化することも認められています。

そのため、会社設立の初年度から多額の利益を計上できるようであれば、原則通り5年間で均等償却しても良いですし、初年度に全額を一括で費用化しても構いません。

反対に、設立後数年間は赤字が続くようであれば、償却しないで残しておいて、黒字になってから費用化するという方法もあります。

つまり、どのタイミングで費用化するのが良いかは、会社の損益を見ながら決めることができるということになります。

創立費

具体的に、どのような支出が「創立費」に該当するかというと、主に次のような支出が考えられます。

登録免許税
定款や諸規則の作成費用
会社設立のための司法書士への報酬
金融機関の取扱手数料
株券印刷費用
その他会社設立にかかった費用

上記のように、その会社の設立手続きに関するような支出を「創立費」と言います。

開業費

一方で、「開業費」に該当するような支出は、主に次のようなものがあります。

土地・建物の賃借料や水道光熱費
広告宣伝費
関係者との飲食代など接待交際費
従業員への給料
準備のための交通費
印鑑作成費
名刺作成費
営業を開始するための費用

※上記のうち、開業準備のために特別に支出したものを「開業費」として処理します

「創立費」は会社という組織の設立に関する費用で、「開業費」は、会社を設立してから実際に営業を開始するまでの費用と考えて頂ければよいかと思います。

ただし、厳密に期間で区切って、○月×日までに支払ったものが「創立費」で、○月×日より後に支払ったものが「開業費」というわけではありません。

実際には、会社設立前に「開業費」を支払うようなこともあるでしょうから、その内容に応じて区分することになります。

なお、個人事業からの法人成りで会社を設立する場合、法人成りの”前”に行った売上などについては、個人事業として申告しなければなリませんので、注意が必要です。

【参考記事】
【法人の決算に向けて⑦】法人設立前の売上については、個人で確定申告が必要

さいごに

次回は、創立費や開業費を費用化するタイミングについて、もう少し詳しくお話したいと思います。

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【法人の決算に向けて④】個人事業で使っていた資産を引き継ぐ

次の記事【法人の決算に向けて⑥】開業費を経費に算入する

【はじめての決算】
①そもそも「決算」とは?
②決算整理とは?
③税務申告で作成する書類は?
④申告しないとどうなるか?

<その他、会社決算に関する記事>

【会社決算のポイント】
【会社決算のポイント①】発生主義とは?
【会社決算のポイント②】未払費用を計上する
【会社決算のポイント③】短期前払費用を経費に入れる
【会社決算のポイント④】残高を合わせる
【会社決算のポイント⑤】減価償却費を計算する
【会社決算のポイント⑥】少額減価償却資産の処理方法
【会社決算のポイント⑦】固定資産か修繕費か
【会社決算のポイント⑧】棚卸しをして在庫を計上する
【会社決算のポイント⑨】消費税や法人税の期末処理
【会社決算のポイント⑩】その他の決算処理

【法人の決算に向けて】
【法人の決算に向けて①】領収書がない費用を計上しなかった場合
【法人の決算に向けて②】役員に対する貸付金がある場合
【法人の決算に向けて③】自宅を法人の事務所として使用している場合
【法人の決算に向けて④】個人事業で使っていた資産を引き継ぐ
【法人の決算に向けて⑤】法人設立前の費用を忘れずに計上する
【法人の決算に向けて⑥】開業費を経費に算入する
【法人の決算に向けて⑦】法人設立前の売上については、個人で確定申告が必要

【法人税の申告調整】
【法人税の申告調整①】役員報酬を期中に減額した
【法人税の申告調整②】期末に役員賞与や親族への賞与を未払計上した
【法人税の申告調整③】交際費の計算(区分)
【法人税の申告調整④】貸倒損失
【法人税の申告調整⑤】税金の調整(費用になるもの、ならないもの)

決算や申告がはじめての法人のお客様へ

このシリーズでは、簿記や経理をある程度理解している方を前提として、決算整理の際に注意すべき点をご説明していきます。

基本的には、帳簿だけをご自身で作成して、決算書や税務申告書の作成を税理士(会計事務所)に依頼しているような方を対象としてご説明します。

「どうせ赤字だから、決算や申告が少しくらい間違っていても大丈夫だろう」
「うちは規模が小さいから、税理士や会計事務所に頼むまでもない」
「会計ソフトを使えば自分でも作れそうだから、わざわざ高い報酬を払ってまで税理士に依頼するのがばかばかしい」

・・・実際にこういったお話をお聞きすることも多いです。

しかし、間違いが多い決算申告では銀行にも税務署にも信用されませんし、経営判断や節税対策には全く使えません。
また、個人事業の確定申告と比べると、法人の決算や申告は格段に難易度が高くなりますので、ご自身で正しい決算申告をすることは非常に難しいと思います。

私どもの事務所では、お客様の方で会計ソフトへの入力が済んでおり、決算や税務申告だけを頼みたいというご依頼もお引き受けしております。

もちろん、会計ソフトへの入力まで丸投げしたいというお客様や、日々の節税相談をご希望のお客様、更には過去数年分の申告をまとめて依頼したいという法人の方も、ぜひ一度ご相談ください。

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