【29年度税制改正】配偶者控除の改正と扶養手当への影響

こんにちは。

東京都杉並区・西荻窪の税理士、下島です。

 

平成29年度(2017年度)の税制改正大綱が22日に閣議決定されました。

今回の改正の目玉は、配偶者控除に関する所得税の改正です。

ネット上にも既に多くの記事が出回っていると思いますが、このブログでは、抑えておきたいポイントを絞ってお伝えします。

※税金に詳しくない方のために、一般的なサラリーマンの事例でお話しています。下記以外の事例や詳細な要件の違いによって効果は異なりますのでご了承下さい。また、用語を厳密に使用していない箇所もあります。

 

【29年度税制改正】配偶者控除の改正と扶養手当への影響

 

「配偶者控除」「配偶者特別控除」とは?

今回の改正では、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」のいずれも見直しがされています。

「配偶者控除」は聞いたことがあるけど、「配偶者特別控除」って何?という方もいらっしゃるかもしれません。

「配偶者控除」とは、例えば配偶者の給与収入が103万円以下の場合に、本人の税金(所得税・住民税)を一定額減らすことができる制度です。お子さんのアルバイトや、奥様のパート収入を103万円以下に抑えないといけない、という話は良く耳にするかと思います(お子さんの場合は、扶養控除になります)。

しかし実際には、税法上は103万円を超えても「配偶者特別控除」という制度によって、給与収入141万円未満までは段階的に税金を減らすことができることになっています。ただし配偶者の給与収入が103万円を超えると、配偶者も税金を払わなくてはならなくなります。ちなみに、配偶者の給与収入が103万円の場合の住民税は、約5,000円となりますので、世帯全体で見た手取り額は増えることになります。

なお、配偶者控除が38万円というのは、本人の所得税率が20%の場合、税額にして11万円程度の減税額となります。

 

 

改正のポイントは3点

今回改正される主な内容は、次の通りです。

・38万円控除の対象となる配偶者の所得基準が「103万円以下」→「150万円以下」に増えた

・配偶者特別控除の給与収入の上限が「201万円以下」まで拡大した

・本人の所得に応じて、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用に制限ができた

(上限は給与収入1,220万円)

 

改正後の控除額を表にまとめてみましたので、こちらをご参照ください。

 

念のため、制度ごとの変更点は以下の通りとなります。

 

配偶者控除

配偶者控除を適用することができる本人の所得区分が3段階に増えた上で、本人の所得が1000万円(給与収入で1220万円)を超える場合には、適用できないことになりました。

 

配偶者特別控除

38万円控除の対象となる配偶者の所得基準が、103万円から150万円に増えました(上表ブルーハイライト部分)。

通常の「配偶者控除」の金額も38万円ですので、今回の改正により配偶者控除の対象となる給与収入の基準が、103万円→150万円に上がったことになります。

さらに、配偶者の給与収入の上限が201万円以下(現状は141万円未満)に拡大しています。また、本人の所得区分に応じて、控除額が3段階となった上で、本人の所得が1000万円(給与収入で1220万円)を超える場合には、適用できないことになりました

 

 

改正されるタイミングは平成30年度から(住民税は平成31年度から)

今回の改正が適用されるのは、平成30年分以後の所得税からとなります。

住民税は、平成31年分からです。

※税制改正は例年3月頃に国会での審議を経て成立します。

 

扶養手当への影響

現在、勤め先の会社から扶養手当(家族手当)や配偶者手当をもらっている方も多いかと思います。

ある統計によると、家族手当の制度がある企業は75%にも及ぶそうで、そのうち9割の企業が配偶者手当を支給しています。

さらに、配偶者の収入制限を設けている企業は、103万円を基準としている企業が約68%、130万円を基準としている企業が約25%となっています。

(人事院「扶養手当の在り方に関する勉強会」資料より)

http://www.jinji.go.jp/kenkyukai/fuyou-benkyoukai/fuyou-benkyoukai.htm

 

 

このように、配偶者控除の制限金額を、配偶者手当の支給基準額として設けている企業が多いため、もし企業側が支給基準額を変更しなければ、注意が必要になります。

今回の配偶者控除制度の見直しを受けてパート収入を増やした結果、配偶者手当を受け取れなくなる可能性も想定されます。

改正は平成30年度からですので、事前にお勤め先の制度を確認することをお勧めします。

 

ちなみに、公務員の配偶者手当の支給基準額は、130万円(社会保険の加入基準)を採用しているようです。

配偶者手当の支給月額は13,000円だそうです。

 

社会保険への影響

社会保険への加入基準としては、現在106万円の壁130万円の壁の2つがあります。

106万円の壁は、つい最近できたものです(後述)。

パートタイマーなどの短時間労働者の方でも、この106万か130万のいずれかの基準を超えると、社会保険に加入しなければならなくなります。

社会保険に加入すると手取り額が減ってしまいますが、社会保険に加入することで出産手当金がもらえたり、年金が増えたりするメリットもあるので、一概に悪いことばかりではありません。

 

106万円の壁については、今年(平成28年)10月の改正により新しくできたものです。

ニュースなどでも取り上げられたように、パート社員など短時間労働者の方に対する社会保険加入の拡大を目的としています。

具体的には、次の要件を満たす場合に、社会保険に加入する必要が出てきました。

・1週間の労働時間が20時間以上

・雇用期間が1年以上の見込みがあること

・月収が「月88,000円以上」であること(年収106万円以上)

・学生でないこと

 

ただしこの改正は、社会保険の対象となる従業員が501人以上の大企業で働いているパートタイマーの方(短時間労働者の方)が、適用拡大の対象となっています。

パート先が該当するような大企業ではない場合には、従来どおり130万円が社会保険の壁になります。

 

社会保険については、後日もう少し詳しい内容を書きたいと思います。

 

終わりに

上記の通り、適用される制度(所得税の配偶者控除や、社会保険、住民税など)によって、手取額や将来の保障に違いが出てきます。

それぞれのケースに応じて、事前に十分なシミュレーションと検討が必要になるかと思います。

 

 

今回書いた内容は、一般的なサラリーマンを対象としたお話です。

本人または配偶者が自営業の場合には当てはまらない制度もございますのでご了承ください。

 

 

 

下島聡司税理士事務所
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