海外の大学教授や技術者に講演料を支払う場合の源泉徴収【国際取引の税務~支払編・事例⑦~】

【国際取引の税務~支払編・事例⑥〜】海外のデザイナーに支払うデザイン料

産業と学術の連携が進んでいる企業では、海外の大学教授が技術者を日本に呼んで講演や講習をしてもらうような機会もあるかと思います。

今回は、海外の大学教授に講演料を支払う場合の源泉徴収の取扱いについて説明します。

【支払編・事例⑦~】海外の大学教授や技術者に講演料を支払う場合

 

【質問】
海外の大学教授に講演料を支払う場合、源泉徴収は必要か?

当社は、この度、日本国内でインターネット技術に関するワークショップを開催することとなり、演目のひとつとして、海外の大学に勤務する有名な外国人教授に講演を行ってもらうことにしました。

その外国人教授に対しては、講演料としてお支払する金額のほかに、往復の航空券と、日本における宿泊費を負担することとしています。

この場合、その講演料のお支払に対して源泉徴収は必要でしょうか?

 

 

ご質問への回答

ご質問のように、その外国人教授の方にお支払する報酬は、その講演の直接的な対価である講演料だけでなく、原則的に往復の渡航費や日本における滞在費を含む全額に対して源泉徴収が必要です。

ただし、もし往復の航空券や宿泊代を、航空会社やホテルに対して貴社が直接支払うような形で負担するのであれば、その航空券代や宿泊代に相当する部分については源泉徴収をしなくても差し支えないものとされています。

なお、もしその教授の居住国との間に租税条約が締結されている場合には、源泉徴収の減免を受けられる可能性もあります。

 

解説

国内法の取扱い

日本に居住していない外国人(税法用語で「非居住者」とされる方)に対して、その者が日本において行った次に掲げる人的役務の提供に基づく報酬を支払う場合には、その支払いの際に、その支払う金額の20.42%を源泉徴収することになっています。

(1) 映画、演劇の俳優、歌手、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の人的役務の提供に対する報酬

(2) 弁護士、公認会計士、建築士その他の自由職業者の人的役務の提供に対する報酬

(3) 科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技術を有する者のその知識又は技能を活用して行う人的役務の提供に対する報酬

その報酬の範囲としては、原則的には渡航費や滞在費も含めた全額に対して源泉徴収が必要となりますが、もし貴社が往復の航空券や宿泊代を、航空会社やホテルに対して貴社が直接支払うような形で負担するのであれば、その航空券代や宿泊代に相当する部分については源泉徴収をしなくても差し支えないものとされています。

 

租税条約の取扱い

租税条約では、上記「国内法の取扱い」に掲げるような方のうち、医師や弁護士など一定の者を「自由職業者等」として、その者が日本における拠点(固定的施設=「FB」)を設けて活動しているのでなければ課税しないという原則があります。

また、大学等の教育機関からの招へいに基づき、その機関で教育又は研究を行うために一時的に日本に滞在する大学教授等については、入国後一定期間に限り免税とする特例(「交換教授免税」)などもあります。

なお、芸能人等については、日本における滞在期間の長短にかかわらず、日本で何らかの活動(役務提供)を行った場合には、日本において源泉徴収等の課税が必要となるものとされています。

いずれにせよ、上記のような取扱いは、その締結している国との租税条約によって条件等が異なりますので、それぞれのケースに応じて取扱いを確認する必要があります。

 

源泉徴収の手続き

源泉徴収の手続きについては、こちらの記事を参照下さい。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編④~】源泉徴収の手続き(租税条約届出書、納付、法定調書)

 

租税条約の適用を受けることができる場合には、こちらの記事も参照ください。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編⑥~】租税条約による特例を受けるための手続き

 

参考条文

所得税法161
所得税基本通達161-8、同161-19、同161-40

 

 

当ブログでは、代表的な事例を基に基本的な考え方をご紹介しておりますので、全てのケースに該当するものではありません。
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(更新予定)
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