国際税務

【国際取引の税務~支払編・事例⑭〜】海外在住の個人に翻訳と通訳を依頼した場合

【国際取引の税務~支払編・事例⑭〜】海外在住の個人に翻訳と通訳を依頼した場合

今回は、海外駐在している社員や海外に居住する日本人の方に、翻訳や通訳を依頼するようなケースを取り上げます。

翻訳や通訳は、語学を使用している点では同じですが、その税法上の取扱いは若干異なります。

また、租税条約によっても個々に取扱いが異なっているため、それぞれのケースに応じて確認が必要となります。

【支払編・事例⑭】海外在住の個人に翻訳と通訳を依頼した場合

 

【質問】
翻訳料や通訳料に源泉徴収は必要か?

この度、当社で出版する専門書への掲載を目的として、海外に永住している日本人の方に外国語論文の翻訳を依頼しました。

またこれに合わせて、その論文の著者が来日する際に通訳として同行してもらい、日本国内で行われる会議などで通訳を依頼することにしました。

翻訳料と通訳料は別々に支払うことにしていますが、これらの支払いに対して源泉徴収は必要でしょうか?

 

 

ご質問への回答

海外に永住している日本人の方は、税法上は「非居住者」に該当するものと考えられます。

国内法上は、非居住者に対して支払う翻訳料や、非居住者が日本国内で行う通訳に対する報酬は、それぞれ源泉徴収が必要になります。

ただし、その方が居住する国との間で租税条約が締結されている場合には、源泉徴収の減免を受けられる可能性もありますので、確認が必要です。

 

解説

海外に永住している日本人の取扱い

税法上は、国内に住所を有しない個人で、国内に引き続き1年以上居所を有しない者は「非居住者」に該当し、日本国内に居住する方(「居住者」)とは異なる取扱いをすることになります。

厳密には詳細な確認が必要ではありますが、今回のご質問のケースでは、海外に永住されている日本人の方にお支払をするとのことですので、その方が「非居住者」に該当するものとして以下ご説明していきます。

 

翻訳料の取扱い

(1)税法上の区分

今回のご質問のケースでは、「翻訳」という行為が、税法の区分として「人的役務の提供」に該当するのか、または上記の「著作権の使用料等」に該当するのかを検討することになります。

日本の著作権の考え方に基づくと、学術論文は著作権法上の著作物に該当し、さらにその著作物を翻訳したものも二次的著作物として、同様に著作物に含まれるものと解されますので、「著作権の使用料等」として取り扱うことになるものと考えられます。

ここで、その翻訳物の所有権が、翻訳家である個人と貴社のどちらに帰属するのかという問題はあるものの、いずれにせよ源泉徴収の要否については、「著作権の使用料」であることに変わりありません。

 

(2)国内法の取扱い

非居住者等(海外の会社や個人など)に対して、以下に掲げるような「使用料」の支払いをする場合には、その支払者が日本国内の業務に使用するものについて、20.42%の源泉徴収が必要とされています。

このような支払いを、「使用料」と言います。

①工業所有権等その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずる者の使用料又は譲渡による対価

著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価

③機械、装置、車両、運搬具、工具、器具及び備品の使用料

 

上記(1)を踏まえますと、国内法においては、その支払について20.42%の源泉徴収が必要と考えられます。

 

(3)租税条約の取扱い

なお、もしその方が居住する国との間で租税条約が締結されている場合には、取扱いがそれぞれ異なっており、源泉徴収が不要となるケースもあります。

また、国内法と同様に「使用料」として取り扱う場合でも、源泉徴収が減免されるケースもありますので、個々に確認をする必要があります。

もし租税条約により源泉徴収の減免を受けられる場合には、租税条約届出書などの所定の手続きが必要になりますのでご留意ください。

 

通訳料の取扱い

(1)国内法の取扱い

非居住者に対して、その者が日本において行った次に掲げる人的役務の提供に基づく報酬を支払う場合には、その支払いの際に、その支払う金額の20.42%を源泉徴収することになっています。

①映画、演劇の俳優、歌手、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の人的役務の提供に対する報酬

②弁護士、公認会計士、建築士その他の自由職業者の人的役務の提供に対する報酬

③科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技術を有する者のその知識又は技能を活用して行う人的役務の提供に対する報酬

 

ご質問の通訳料は、上記②の「自由職業者の人的役務の提供に対する対価」に該当するものと考えられますので、20.42%の源泉徴収が必要と考えられます。

 

(2)租税条約の取扱い

また、租税条約では、上記に掲げるような方のうち、医師や弁護士など一定の者を「自由職業者等」として、その者が日本における拠点(固定的施設=「FB」)を設けて活動しているのでなければ課税しないという原則がありますので、日本における源泉徴収が不要とされることも想定されます。

この場合、租税条約届出書などの所定の手続きが必要となります。

ただし、租税条約上の取扱いは、その締結している国との租税条約によって条件等が異なりますので、個別の条約の規定内容を見て取扱いを確認する必要があります。

 

なお、その報酬の範囲としては、原則的には渡航費や滞在費も含めた全額に対して源泉徴収が必要となりますが、もし貴社が往復の航空券や宿泊代を、航空会社やホテルに対して貴社が直接支払うような形で負担するのであれば、その航空券代や宿泊代に相当する部分については源泉徴収をしなくても差し支えないものとされています。

 

源泉徴収の手続き

源泉徴収の手続きについては、こちらの記事を参照下さい。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編④~】源泉徴収の手続き(租税条約届出書、納付、法定調書)

 

租税条約の適用を受けることができる場合には、こちらの記事も参照ください。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編⑥~】租税条約による特例を受けるための手続き

 

参考条文

所得税法161条、同204条
所得税基本通達161-21、同161-23
著作権法2条1項
各国との租税条約 ほか

 

 

当ブログでは、代表的な事例を基に基本的な考え方をご紹介しておりますので、全てのケースに該当するものではありません。
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