海外の親会社に配当を支払う場合の源泉徴収【国際取引の税務~支払編・事例⑲〜】

【国際取引の税務~支払編・事例⑲〜】海外の親会社に配当を支払う場合

外資系企業の日本子会社の場合、海外の親会社配当を支払う機会は必ずあります。

配当の支払いは、他の海外への支払いと比較してシンプルに見えますが意外と奥が深く、税務調査でも源泉徴収漏れを指摘されるケースがあります。

今回は、海外の親会社に対して配当を支払う場合の取扱いをご説明します。

【支払編・事例⑲】海外の親会社に配当を支払う場合

 

【質問】
海外の親会社に配当を支払う場合の源泉税率は?

当社は外資系企業の日本子会社で、日本において設立登記をしていますので、税法上は内国法人に該当します。

当社は、今期利益を計上したため、設立以来初めて親会社に対して配当を行うことを予定しています。

この場合、この配当の支払時に源泉徴収が必要と思いますが、源泉税率は何%になるのでしょうか?

 

 

ご質問への回答

ご質問のように、海外の親会社に対して配当を支払う場合には、国内法によりその支払額の20.42%を源泉徴収する必要があります。

ただし、租税条約の適用により源泉徴収が免除又は軽減されることがありますので、支払先の国や状況に応じて確認が必要です。

 

解説

国内法の取扱い

内国法人が、海外の親会社等に対して剰余金の配当等を支払う場合には、その配当等の支払いに対して20.42%源泉徴収が必要です。

ただし、ほとんどの租税条約において配当等の減免措置が設けられていますので、必ず租税条約の内容も合わせて確認する必要があります。

 

租税条約の取扱い

租税条約においては、配当等に対する源泉徴収の免除または税率の軽減が規定されていることが一般的です。

また、その源泉徴収の減免措置(免除や軽減)も一律ではなく、その親会社の出資比率や株式の保有期間によって異なる場合があります。

特に100%の出資関係がある親子会社であれば、源泉徴収が免除されることもあります。

 

例えばアメリカとの租税条約の場合は、次のような規定ぶりとなっています。

出資比率 所有期間 源泉税率
(制限税率)
5%以上 6ヶ月以上 5%
50%超 12ヶ月以上 免税
上記以外 10%

 

この場合、減免措置を受けるための要件や、所有期間などの判定方法については個々の租税条約を確認するなど、慎重に判断しなければなりません。

さらに、アメリカやイギリスなどのいわゆる特典条項が設けられている租税条約の場合には、親会社の状況(親会社の株主や事業状況など)を確認したり、特典条項に関する付表に必要事項を記載する必要があります。

また、期中に親会社が変わった場合には、上記の減免措置の適用を受けられずに税務調査で誤りを指摘されるケースも見受けられますので、注意が必要です。

いずれにせよ、親会社に対して配当を行う場合には、海外取引や外資系企業の税務に詳しい専門家にご相談頂くことをお勧めします。

なお、租税条約による減免措置を受けるためには、租税条約届出書の提出など所定の手続きを行う必要がありますので、ご留意下さい。

 

源泉徴収の手続き

源泉徴収の手続きについては、こちらの記事を参照下さい。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編④~】源泉徴収の手続き(租税条約届出書、納付、法定調書)

 

租税条約の適用を受けることができる場合には、こちらの記事も参照ください。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編⑥~】租税条約による特例を受けるための手続き

 

参考条文

所得税法24条、同161条五号、同212条、同213条
各国との租税条約 ほか

 

 

当ブログでは、代表的な事例を基に基本的な考え方をご紹介しておりますので、全てのケースに該当するものではありません。
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(更新予定)
海外企業に支払いをする際に気をつけること
源泉徴収の要否を判定する(基本的な流れ)
源泉徴収しないとどうなるか
源泉徴収の手続き(租税条約の届出、納付方法、法定調書など)
海外企業に仕入れ代金を支払う場合
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海外企業にソフトウェア開発の委託費を支払う場合 など

 

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