そもそも「決算」って何ですか?【はじめての決算①】
会社は1年ごとに会計期間を区切り、その会計期間中の取引を整理して決算を行わなければなりません。
さらに、決算日から2月以内に法人税などの税務申告書を作成・提出し、税務署に税金を納める事になります。
設立したばかりの会社にとって、はじめてのことだらけで戸惑ってしまうことも多いかもしれません。
そこで今回から数回にわたって、はじめて会社の決算を行うという方に向けて、基本的な部分からご説明しようと思います。
まず初回は、「そもそも決算とは何か?」というお話です。
基本的に、会社の決算や税務申告については、ご自身で全てを行うのではなく、少なくとも税務申告については税理士にお任せいただくことが一般的です。
このシリーズでは、会社の決算や記帳についてはご自身で帳簿付けをされおり、決算や税務申告を税理士に依頼している方を対象としていますが、税理士に記帳まで全てお願いしている方であっても、決算にあたって税理士と相談する際に必要な知識となりますので、ぜひご一読ください。
【はじめての決算①】そもそも「決算」とは?
「決算」とは何か?
帳簿の作成〜決算書まで
会社は、日々のお金の動き(取引)を帳簿に記入する必要があります。
これを「記帳」や「経理」と言います。
取引を記帳するときは、次のような流れで行います。
1.取引を「仕訳帳」に記入します。
2.「仕訳帳」の仕訳を「総勘定元帳」に転記します。
<総勘定元帳>
<帳簿作成の一連の流れ>
※必要に応じて、得意先別の「補助元帳」や、現金の出金・入金を記入する「現金出納帳」などを作成することもできます。
3.そして、1年間の帳簿を整理して、その年にどれくらい儲かったのか、また、期末時点でどれくらいの資産や負債があるのかという一覧表を作成します。
ここで作成するものを「決算書」と言います。
ここまでが、狭い意味での「決算」になります。
しかし、決算書を作ったらそれで終わりではありません。
税務申告書まで含めて「決算」
会社は、決算日から原則2ヶ月以内に、税務署に対して税金の申告をしなければなりません。
ここで作成するのが、法人税や地方税、消費税の「確定申告書」です。
従って、一般的に「決算」と言えば、決算書を作成し、法人税の申告書を税務署に提出して、税金を納めるまでの一連の流れのことを言うことが多いと思います。
「決算」までの一連の流れを簡単に図示すると、次の通りとなります。
会計ソフトに入力すれば「決算書」は自動的に作成できる?
クラウド会計ソフトで帳簿付けが簡単に
最近は、クラウド会計ソフトが急速に普及しており、新たに会社を設立された方の多くがクラウド会計ソフトを導入しています。
家計簿ソフトMoneyForwardでもおなじみの【MFクラウド会計】
クラウド会計ソフトの”売り”のひとつとして、仕訳を最小限にして、簿記や経理を勉強したことがない方でも簡単に帳簿を作ることができると言われています。
その一例として、銀行口座やクレジットカードを連携することで、自動で入出金明細や利用明細を取り込むことができ、ひとつひとつの取引の内容(売上や備品購入など)を選択することで、会計ソフトが簡単に仕訳を作成してくれるという機能が装備されています。
【freeeの口座連携イメージ(クレジットカード)】
自動連携しない口座やカード、現金取引などについては、自身でひとつひとつ入力が必要となりますが、それも従来の会計ソフトに比べれば比較的簡単に帳簿作成ができるようになりました。
【freeeの仕訳入力イメージ】
帳簿を作るだけでは「決算書」は完成しない
クラウド会計ソフトを導入することにより、簿記や経理の知識がない方でも比較的簡単に帳簿を作成できるようになった反面、いくつか注意しなければならないこともあります。
その中でも最も重要なことは、会計ソフトに入力するだけで終わりではない、ということです。
会計ソフトに入力することで何となく帳簿が出来たように見えますが、これだけでは決算書は作れません。
確かに帳簿を集計すれば「決算書」の形式は自動的に作成されますが、正しい「決算書」を完成させるためには、いくつかやらなければならない作業があります。
これを「決算整理」と言います。
繰り返しになりますが、帳簿に入力しただけでは、正しい決算書にはなりません。
会計ソフトに入力すれば決算書が自動的に作成される(ように見える)ため、決算整理を全く行っていないケースが多く見受けられます。
この点をご存知ない方が多いようで、後からご相談を受けて決算書を拝見すると、間違いだらけの決算書になっている会社が意外と多いのが実態です。
決算書を作成するためには「決算整理が必須」となることを覚えておいて下さい。
税務申告書の作成は難しい
さらに言えば、たとえ決算書が作れても、法人税の申告を作るのは簡単ではありません。
専門家に依頼せずにご自身で決算・申告を済ませてしまおうとされる方が少なからずいらっしゃいます。
特にいわゆる「法人成り」をした方ですと、個人事業の確定申告はご自身でされていた方が多いので、その延長で会社の決算・申告も自分でできるのでは?と考えている方が多いようです。
ただ、私たち税理士の営業のために言うわけではありませんが、個人の確定申告ならまだしも、法人の場合は、経理や税務の知識がない方がご自身のみで決算・申告をされるのは無謀と言っても過言ではないと思います。
次回以降に詳しくご説明しますが、税務申告のためには、決算書だけでなく、法人税や地方税の申告書を作成しなければなりません。
これらは個人の確定申告書とは比べ物にならないほど複雑ですし、計算の至るところに様々なルールがありますので、これらを全て頭に入れた上で対応することは非常に難しいと思います。
次回以降、「決算整理」の方法や、「税務申告で作成する書類」について簡単にご紹介します。
まずは、決算ではどのような作業を行い、税務申告でどのような書類を作成しなければならないのかをご理解頂いた上で、できるだけ早い段階で税理士や会計事務所にご相談頂くことをお勧めします。
次回に続きます
次回は、「決算整理とは?」というテーマで、決算の作業内容について概要をご説明します。
→次の記事
【はじめての決算②】決算整理とは?
【はじめての決算】
①そもそも「決算」とは?
②決算整理とは?
③税務申告で作成する書類は?
④申告しないとどうなるか?
<その他の関連シリーズ>
【会社決算のポイント】
【会社決算のポイント①】発生主義とは?
【会社決算のポイント②】未払費用を計上する
【会社決算のポイント③】短期前払費用を経費に入れる
【会社決算のポイント④】残高を合わせる
【会社決算のポイント⑤】減価償却費を計算する
【会社決算のポイント⑥】少額減価償却資産の処理方法
【会社決算のポイント⑦】固定資産か修繕費か
【会社決算のポイント⑧】棚卸しをして在庫を計上する
【会社決算のポイント⑨】消費税や法人税の期末処理
【会社決算のポイント⑩】その他の決算処理
【法人の決算に向けて】
【法人の決算に向けて①】領収書がない費用を計上しなかった場合
【法人の決算に向けて②】役員に対する貸付金がある場合
【法人の決算に向けて③】自宅を法人の事務所として使用している場合
【法人の決算に向けて④】個人事業で使っていた資産を引き継ぐ
【法人の決算に向けて⑤】法人設立前の費用を忘れずに計上する
【法人の決算に向けて⑥】開業費を経費に算入する
【法人の決算に向けて⑦】法人設立前の売上については、個人で確定申告が必要
【法人税の申告調整】
【法人税の申告調整①】役員報酬を期中に減額した
【法人税の申告調整②】期末に役員賞与や親族への賞与を未払計上した
【法人税の申告調整③】交際費の計算(区分)
【法人税の申告調整④】貸倒損失
【法人税の申告調整⑤】税金の調整(費用になるもの、ならないもの)
- 決算や申告がはじめての法人のお客様へ
-
このシリーズでは、簿記や経理をある程度理解している方を前提として、決算整理の際に注意すべき点をご説明していきます。
基本的には、帳簿だけをご自身で作成して、決算書や税務申告書の作成を税理士(会計事務所)に依頼しているような方を対象としてご説明します。
「どうせ赤字だから、決算や申告が少しくらい間違っていても大丈夫だろう」
「うちは規模が小さいから、税理士や会計事務所に頼むまでもない」
「会計ソフトを使えば自分でも作れそうだから、わざわざ高い報酬を払ってまで税理士に依頼するのがばかばかしい」・・・実際にこういったお話をお聞きすることも多いです。
しかし、間違いが多い決算申告では銀行にも税務署にも信用されませんし、経営判断や節税対策には全く使えません。
また、個人事業の確定申告と比べると、法人の決算や申告は格段に難易度が高くなりますので、ご自身で正しい決算申告をすることは非常に難しいと思います。私どもの事務所では、お客様の方で会計ソフトへの入力が済んでおり、決算や税務申告だけを頼みたいというご依頼もお引き受けしております。
もちろん、会計ソフトへの入力まで丸投げしたいというお客様や、日々の節税相談をご希望のお客様、更には過去数年分の申告をまとめて依頼したいという法人の方も、ぜひ一度ご相談ください。