税務申告では、どんな書類を作成するの?【はじめての決算③】
会社は毎年、決算日から2ヶ月以内に法人税などの税務申告書を作成・提出し、税務署に税金を納めなければなりません。
起業したばかりの会社ですと、節約のために決算から税務申告まで自力でやってしまおうという方が少なくありませんが、正直に言ってお勧めしません。
会社の税務申告では作成しなければならない書類が多く、専門知識と経験がないと難しいものもあり、個人事業の確定申告からは格段に難易度が上がります。
今回は、税務申告で作成しなければならない書類にはどんなものがあるのかをご紹介したいと思います。
基本的に、会社の決算や税務申告については、ご自身で全てを行うのではなく、少なくとも税務申告については税理士にお任せいただくことが一般的です。
このシリーズでは、会社の決算や記帳についてはご自身で帳簿付けをされおり、決算や税務申告を税理士に依頼している方を対象としていますが、税理士に記帳まで全てお願いしている方であっても、決算にあたって税理士と相談する際に必要な知識となりますので、ぜひご一読ください。
【はじめての決算③】税務申告で作成する書類は?
決算時に必要な税務申告
税務申告と言っても、決算時に提出しなければならない税務上の申告書は、ひとつではありません。
主に、次のような種類に分かれており、それぞれ提出先も異なります。
法人税の申告に必要な書類は?
法人税申告書には「別表1~18」までがあり、そのうち別表1を「確定申告書」と呼んでいます。
別表1以外の別表は、確定申告書の「明細書」という位置づけで、必要に応じて確定申告書に添付します。
税金の計算は別表4という書類で行いますが、それ以外の書類(別表)は、個々の計算根拠を説明するためのものになります。
以下、主な別表をご紹介します。
申告書に添付する書類
法人税の確定申告書には、少なくとも次の書類を添付することになっています。
・決算書(BS、PL、株主資本、注記表)
・勘定科目内訳明細書
・事業概況書
<決算書(BS、PL、株主資本、注記表)>
<勘定科目内訳書>
<法人事業概況書>
地方税の申告に必要な書類は?
法人事業税・法人住民税(法人都道府県民税)
事業税と住民税は、税金の種類や計算方法は異なりますが、ひとつの様式(第六号様式)にまとめて記載します。
これは、提出先の税務機関が同じであるため、利便性を考慮してのものと思われます。
(法人税と消費税も提出先は同一の税務署ですが、こちらは別々の様式で提出します)
<欠損金がある場合>
<外形標準課税の対象となる法人>
市町村民税(法人市民税等)
「第二十号様式」という申告書様式を使用します。
なお、事務所が複数ある法人などの場合は、別途追加で提出しなければならない申告書用紙があります。
※以下は横浜市の申告書様式例
消費税の申告に必要な書類は?
消費税の確定申告書である「第27号様式」(※)に加えて、一般課税であれば「付表2」を、簡易課税であれば「付表5」を添付します。
(※)一般用と簡易課税用があります。
さらに、もし税率が混合している場合(例えば同一課税期間中に8%の税率と5%の税率の両方が含まれる場合)などには、別途追加で付表を添付することになります。
※上記の第27号様式は一般用。付表2は一般課税の場合、付表5は簡易課税の場合に添付。
<還付が生じる場合>
決算で作成する書類
総勘定元帳や残高試算表、仕訳帳や補助元帳を必要に応じて作成します。
これらの書類は税務申告書に添付する必要はありませんが、税務調査等のために保管が必要です。
税理士に依頼すべきか?
前回も少し触れましたが、専門家に依頼せずにご自身で決算・申告を済ませてしまおうとされる方が少なからずいらっしゃいます。
特にいわゆる「法人成り」をした方ですと、個人事業の確定申告はご自身でされていた方が多いので、その延長で会社の決算・申告も自分でできるのでは?と考えている方が多いようです。
ただ、私たち税理士の営業のために言うわけではありませんが、個人の確定申告ならまだしも、法人の場合は、経理や税務の知識がない方がご自身のみで決算・申告をされるのは無謀と言っても過言ではないと思います。
前回もご説明したとおり、決算を行うためには税務の専門知識が不可欠です。
さらに税務申告のためには、決算書だけでなく、法人税や地方税の申告書を作成しなければなりませんが、これは個人の確定申告書とは比べ物にならないほど複雑ですし、計算の至るところに様々なルールがありますので、これらを全て頭に入れた上で対応することは非常に難しいと思います。
ご自身で勉強して、四苦八苦して決算書や申告書を作るのに掛かる時間を考えれば、専門家である税理士に依頼した方が時間の節約にもなり、本業に集中して頂けます。
帳簿付けだけはご自身で行い、専門知識が必要な決算・申告だけを税理士に任せるという形でも結構かと思います。
いずれにせよ、会社の決算・申告に関しては、ご自身で解決しようとせず、税理士にご依頼頂くことをお勧めします。
次回に続きます
次回は、「申告しないとどうなるか?」というテーマで、会社が税務申告を行わなかった場合のペナルティ等についてご説明します。
→次の記事
【はじめての決算④】申告しないとどうなるか?
【はじめての決算】
①そもそも「決算」とは?
②決算整理とは?
③税務申告で作成する書類は?
④申告しないとどうなるか?
<その他、会社決算に関する記事>
【会社決算のポイント】
【会社決算のポイント①】発生主義とは?
【会社決算のポイント②】未払費用を計上する
【会社決算のポイント③】短期前払費用を経費に入れる
【会社決算のポイント④】残高を合わせる
【会社決算のポイント⑤】減価償却費を計算する
【会社決算のポイント⑥】少額減価償却資産の処理方法
【会社決算のポイント⑦】固定資産か修繕費か
【会社決算のポイント⑧】棚卸しをして在庫を計上する
【会社決算のポイント⑨】消費税や法人税の期末処理
【会社決算のポイント⑩】その他の決算処理
【法人の決算に向けて】
【法人の決算に向けて①】領収書がない費用を計上しなかった場合
【法人の決算に向けて②】役員に対する貸付金がある場合
【法人の決算に向けて③】自宅を法人の事務所として使用している場合
【法人の決算に向けて④】個人事業で使っていた資産を引き継ぐ
【法人の決算に向けて⑤】法人設立前の費用を忘れずに計上する
【法人の決算に向けて⑥】開業費を経費に算入する
【法人の決算に向けて⑦】法人設立前の売上については、個人で確定申告が必要
【法人税の申告調整】
【法人税の申告調整①】役員報酬を期中に減額した
【法人税の申告調整②】期末に役員賞与や親族への賞与を未払計上した
【法人税の申告調整③】交際費の計算(区分)
【法人税の申告調整④】貸倒損失
【法人税の申告調整⑤】税金の調整(費用になるもの、ならないもの)
- 決算や申告がはじめての法人のお客様へ
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このシリーズでは、簿記や経理をある程度理解している方を前提として、決算整理の際に注意すべき点をご説明していきます。
基本的には、帳簿だけをご自身で作成して、決算書や税務申告書の作成を税理士(会計事務所)に依頼しているような方を対象としてご説明します。
「どうせ赤字だから、決算や申告が少しくらい間違っていても大丈夫だろう」
「うちは規模が小さいから、税理士や会計事務所に頼むまでもない」
「会計ソフトを使えば自分でも作れそうだから、わざわざ高い報酬を払ってまで税理士に依頼するのがばかばかしい」・・・実際にこういったお話をお聞きすることも多いです。
しかし、間違いが多い決算申告では銀行にも税務署にも信用されませんし、経営判断や節税対策には全く使えません。
また、個人事業の確定申告と比べると、法人の決算や申告は格段に難易度が高くなりますので、ご自身で正しい決算申告をすることは非常に難しいと思います。私どもの事務所では、お客様の方で会計ソフトへの入力が済んでおり、決算や税務申告だけを頼みたいというご依頼もお引き受けしております。
もちろん、会計ソフトへの入力まで丸投げしたいというお客様や、日々の節税相談をご希望のお客様、更には過去数年分の申告をまとめて依頼したいという法人の方も、ぜひ一度ご相談ください。