決算申告しないとどうなるか?(無申告・期限後)【はじめての決算④】

【はじめての決算④】決算・申告をしないとどうなるか?

会社が決算をするということは、1年間の業績や経営状況を知るという目的の他にも、税金の申告をしたり、銀行から借入をしたりするなど、決算書を利用する場面は数多くあります。

会社は、会計期間が終了したら決算を行う必要があり、その決算に基づいて会計期間終了後2ヶ月以内に、税務署などに税金の申告を行わなければなりません。

しかし、何らかの事情により決算や税務申告を行っておらず、そのまま何年も放置してしまっているような方も実際にいらっしゃいます。

今回は、決算や申告をしないとどうなるのか?というテーマでお話しようと思います。

「設立初年度は忙しすぎて、経理や申告にまで手が回らなかった」
「知人から、小さな会社には税務調査は入らないから大丈夫と言われた」
「赤字だから申告しなくても良いかと思って放置していた」

このような方は、まずはこちらの記事をご一読いただいた上で、できるだけ速やかに税理士にご相談下さい。

基本的に、会社の決算や税務申告については、ご自身で全てを行うのではなく、少なくとも税務申告については税理士にお任せいただくことが一般的です。
このシリーズでは、会社の決算や記帳についてはご自身で帳簿付けをされおり、決算や税務申告を税理士に依頼している方を対象としていますが、税理士に記帳まで全てお願いしている方であっても、決算にあたって税理士と相談する際に必要な知識となりますので、ぜひご一読ください。

【はじめての決算④】申告しないとどうなるか?

「決算」は何のためにするのか?

決算を行う目的は?

会社が「決算をする」ということは、1年間にどれくらいの売上や仕入れがあり、どれくらい儲かったのかを把握する手段です。
今までの営業の結果を振り返り、今後の予測や計画・方向性を検討するための資料として、経営者としては最も重視すべき手続きとなります。

ただし、決算は経営状況を確認するためだけに行うものではありません。

そもそも「決算」は法律(会社法)により定められた義務であり、さらには税金を計算するための基礎手続きでもあります。

【参考記事】
【はじめての決算①】そもそも「決算」とは?

会社の税金は自分で計算する

法人税などの会社が支払う税金は、基本的に自分で税額を計算して申告する方式となっています。

これを「申告納税方式」と言います。

申告するのも申告しないのも自由かと言えばそうではなく、もし会社が申告しなければ、税務署は様々な方法で収入を調べて、税務署が税金の計算をすることもできることになっています。

「税務署が計算してくれるのなら、わざわざ自分で計算するのは面倒だから放っておこう」と考えた方は、大きな間違いです。

申告しなかった場合のリスクとは?

自分で申告せず、税務署が税金を計算すると、最悪の場合は次のようなリスクがあります。

・正しい経費を認めてもらえない可能性がある(資料不足などのため)
・実際よりも多い売上に対して税金を払う可能性がある(同上)
・赤字の繰越や税額控除など、税務上の特典が使えない

そして、一番大きいのが、ペナルティとしての税金です。

自分できちんと申告していれば払わなくても良かった税金を、本税と合わせると最大で150%(1.5倍)近くも払わなくてはならないケースもあります。

申告しなかったらどうなるか?

無申告であったとしても、いずれは何らかの形で税務署から連絡が来ます。

まず第一に、法人が設立されたことは、法務局への法人設立登記や、開業届の提出などから判明しています。

会社を作ったのに申告をしていなければ、まずは税務署からの問い合わせがあり、それでも申告がなければ、通常の「税務調査」や、抜き打ちの「現況調査」などによって、会社の収入を調べることになります。

また、反面調査といって、取引をしている相手方の帳簿や取引記録から、会社に売上があることが判明するケースもあります。

さらには、銀行調査により、税務署は会社や代表者などの口座取引を調査することが可能ですので、入金の事実などを確認することにより申告漏れが判明することもあるでしょう。

このように、税務署は様々な手段で、会社に収入がないかを調べることができます。

それでは具体的に、会社が申告をしなかったら、どんな問題があるのかをご説明します。

ペナルティの税金がかかる

数年分の税金をまとめて支払う

一番大きいのが、これまで無申告だった期間の税金(法人税や消費税などの「本税」)を全て支払わないといけないことです。

当たり前の話ではありますが、数年分の税金を払うことになると、その金額は多額になるケースがほとんどです。

しかも、国に支払う法人税や消費税だけでなく、法人住民税や法人事業税なども同時期に請求が来ることになります。

それだけのキャッシュが社内に残っていれば何とか払えるかもしれませんが、多くの無申告の会社は、既に使ってしまっていたり、給料として社長や家族に支払ってしまっているケースが多いので、急激に資金繰りが悪化します。

一括で支払うことができないと、この後ご説明する延滞税が、本税を完納するまで積み上がっていきます。

ペナルティの「加算税」がかかる

法人税などの「本税」だけでも数年分をまとめて支払うのは大変なのに、更にペナルティの税金も課されます。

無申告である場合は、納付すべき「本税」に対して、次の「無申告加算税」を払わなければなりません。

本税が50万円まで 15%
50万円を超える金額 20%

※税率は提出するタイミングにより異なる場合があります。

例えば、納めるべき本税が100万円の場合は、

500,000円×15%=75,000円
(1,000,000円ー500,000円)×20%=100,000円

合計175,000円が無申告加算税として追加で支払うペナルティになります。

また、地方税(法人事業税)においても同様に「不申告加算金」というペナルティがあります。

なお、脱税が悪質な場合には、「重加算税」という更に重い罰則が用意されていますし、最悪の場合には刑事事件に発展する可能性もあります。

利息としての「延滞税」がかかる

税金を納期限までに支払わないと、納期限の翌日から実際に支払った日まで、「延滞税」という利息的なペナルティの税金が日割りで課されます。

延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月以内が年2.7%、それ以後は年9.0%です。

利息と言うには、あまりにも高い税率ですので、こちらもペナルティと考えて頂いた方が良いと思います。
(2017年4月現在。延滞税の利率は延滞期間に応じて異なります。)

延滞税は、本税を完納するまで積み上がっていきますので、まずは本税を支払うことが重要です。

(加算税や延滞税を滞納しても、ペナルティに対しては延滞税はかかりません)

税務調査が入る前に自主的に申告を

無申告の方の場合、税務調査が入ってからようやく事の重大さ(払う税金の多さ)に気付かれる方が多いです。

しかし、税務調査が入る前(事前通知前)に自主的に期限後申告をした場合は、上記のペナルティが一部少なくなります

無申告加算税については、上記で15%や20%とされていた税率が、5%に軽減されます。

延滞税については軽減はありませんが、早めに支払うことで、その後の延滞税が増え続けるのを止めることができます。

さらに、申告期限を過ぎてからすぐに提出すれば、無申告加算税が課されないケースもあります。

もし「うっかり」申告書の提出が間に合わなかったような場合には、速やかにご相談ください。

いずれにせよ無申告である場合には、できるだけ早く、自主的に申告することが何よりも重要です。

青色申告が取り消される

期限内に申告しないと青色取り消しに

会社を設立すると、最初に開業届(法人設立届)を提出しますが、ほとんどの会社が「青色申告承認申請書」も合わせて提出しているかと思います。

この青色申告については、申告書を2年連続で期限内に提出できなかった場合、その承認を取り消されてしまいます。

青色申告が取り消されるとどうなるか?

青色申告が使えない最大のデメリットは、赤字を翌年以降に繰り越すことができないことです。

会社設立直後や、成長期や事業拡大時など、どうしても赤字になってしまう年はあるかと思います。

しかし、赤字(欠損金と言います)の繰越ができれば、その後で黒字になった際に利益と相殺することができるので、税金を安くすることができますが、これは青色申告の特典となります。

さらに、法人税には「税額控除」という税金が安くなる制度が設けられており、例えば人を雇った場合や従業員の給与を増やした場合、機械や設備などの新規投資をした場合、研究開発にお金を投資した場合に税金を一定額安くしてくれる制度があります。

この制度を利用できるのも、青色申告であることが条件となっています。

銀行からの借入ができない

銀行からの借入をされている会社の場合、借入時と毎年の決算時に、申告書と決算書の一式を銀行に提出されているかと思います。

銀行は、会社にお金を貸すときや、その返済能力を見るために、決算書によって判断しています。

申告していない会社の場合は、おそらく現時点で銀行から借入をされていないと思いますが、もし今後金融機関から融資を受けたい局面が訪れても、無申告の状態だと融資を受けることは現実的に厳しいものと思われます。

許認可を受けられない

建設業や宅建業を営む会社や、医療法人などの場合は、毎年決算書などを所轄官庁に提出しなければならないことになっています。

さらに、取引先によっては帝国データバンクなどの信用調査機関への登録が必要だったり、場合によっては決算書を提出して欲しいと言われるケースもあります。

決算を行い、税務申告を行うことは会社の最低限の義務ですので、これを行っていない会社は信用を得ることが難しいと思います。

さいごに

厳しいことばかり書いてしまいましたが、決算・申告ができないという事情は個々それぞれかと思います。

やむを得ない事情により、決算しないままの状況でいるような会社もあるかもしれません。

申告しないでいても状況は悪くなる一方ですので、早めに処理されることをお勧めします。

今後も事業を継続し、申告などの義務もきちんとしたいという会社の方は、ぜひご相談ください。

今まで真面目に決算・申告をしてきた会社の方は、当然ですが、今後も毎年きちんと申告していただくようご留意下さい。

←前の記事
【はじめての決算③】税務申告で作成する書類は?

次の記事【会社決算のポイント①】発生主義とは?

【はじめての決算】
①そもそも「決算」とは?
②決算整理とは?
③税務申告で作成する書類は?
④申告しないとどうなるか?

<その他、会社決算に関する記事>

【会社決算のポイント】
【会社決算のポイント①】発生主義とは?
【会社決算のポイント②】未払費用を計上する
【会社決算のポイント③】短期前払費用を経費に入れる
【会社決算のポイント④】残高を合わせる
【会社決算のポイント⑤】減価償却費を計算する
【会社決算のポイント⑥】少額減価償却資産の処理方法
【会社決算のポイント⑦】固定資産か修繕費か
【会社決算のポイント⑧】棚卸しをして在庫を計上する
【会社決算のポイント⑨】消費税や法人税の期末処理
【会社決算のポイント⑩】その他の決算処理

【法人の決算に向けて】
【法人の決算に向けて①】領収書がない費用を計上しなかった場合
【法人の決算に向けて②】役員に対する貸付金がある場合
【法人の決算に向けて③】自宅を法人の事務所として使用している場合
【法人の決算に向けて④】個人事業で使っていた資産を引き継ぐ
【法人の決算に向けて⑤】法人設立前の費用を忘れずに計上する
【法人の決算に向けて⑥】開業費を経費に算入する
【法人の決算に向けて⑦】法人設立前の売上については、個人で確定申告が必要

【法人税の申告調整】
【法人税の申告調整①】役員報酬を期中に減額した
【法人税の申告調整②】期末に役員賞与や親族への賞与を未払計上した
【法人税の申告調整③】交際費の計算(区分)
【法人税の申告調整④】貸倒損失
【法人税の申告調整⑤】税金の調整(費用になるもの、ならないもの)

決算や申告がはじめての法人のお客様へ

このシリーズでは、簿記や経理をある程度理解している方を前提として、決算整理の際に注意すべき点をご説明していきます。

基本的には、帳簿だけをご自身で作成して、決算書や税務申告書の作成を税理士(会計事務所)に依頼しているような方を対象としてご説明します。

「どうせ赤字だから、決算や申告が少しくらい間違っていても大丈夫だろう」
「うちは規模が小さいから、税理士や会計事務所に頼むまでもない」
「会計ソフトを使えば自分でも作れそうだから、わざわざ高い報酬を払ってまで税理士に依頼するのがばかばかしい」

・・・実際にこういったお話をお聞きすることも多いです。

しかし、間違いが多い決算申告では銀行にも税務署にも信用されませんし、経営判断や節税対策には全く使えません。
また、個人事業の確定申告と比べると、法人の決算や申告は格段に難易度が高くなりますので、ご自身で正しい決算申告をすることは非常に難しいと思います。

私どもの事務所では、お客様の方で会計ソフトへの入力が済んでおり、決算や税務申告だけを頼みたいというご依頼もお引き受けしております。

もちろん、会計ソフトへの入力まで丸投げしたいというお客様や、日々の節税相談をご希望のお客様、更には過去数年分の申告をまとめて依頼したいという法人の方も、ぜひ一度ご相談ください。

お問い合わせ・無料相談

下島聡司税理士事務所
  • 対応地域
    杉並・中野・吉祥寺をはじめ東京・神奈川・千葉・埼玉ほか関東全域、日本全国対応
  • 事務所
    〒167-0042
    東京都杉並区西荻北2-3-9
    トラストビル5F
  • 連絡先
    03-6454-7471
    contact@shi-tax.com