来年の確定申告に向けて③(退職金や保険で節税する)
今回は、個人事業者やフリーランスの方に人気のある節税方法をまとめてみました。
個人事業主の方が、退職金や年金資産を作りながら節税する方法です。
まだいずれも加入していない方は、ぜひご検討ください。
来年の確定申告に向けて③(退職金や保険で節税する)
個人事業主や経営者が退職金を作る方法
会社員であれば、退職する時は通常、会社から退職金を受け取ることができます。
また、会社員は厚生年金に加入できますので、国民年金よりも将来受け取る年金が多くなります。
一方で個人事業主には、退職金の制度はありませんし、年金も基本的には国民年金に加入することになります。
公的年金制度は「2階建て年金」(または3階建て年金)と言われますが、1階部分が基礎年金である国民年金で、その上乗せとして2階部分の厚生年金があります。
ちなみに現時点で、20歳から60歳までの40年間保険料を支払った場合、受け取れる年金は年額で80万円弱となります。
個人事業主の方が将来の不安を解消するための方法として、次のような制度が用意されています。
それぞれ特徴が少しずつ異なりますが、いずれも将来への準備をしつつ、節税対策ができるので、とても人気のある制度です。
・小規模企業共済
・経営セーフティ共済
・個人型確定拠出年金
・国民年金基金
これらの制度への加入は任意ですが、支払った掛金が経費(または所得控除)として認められるため、毎年の税金が安くなります。
また、受け取る際にも退職所得や公的年金として、税金の計算上、優遇されることになるため、節税効果はとても高い制度になります。
さらに、掛金をある程度自由に決められるため、最初は多めに支払っておいて途中で減額したり、1年分を前払いする、というようにご自身の経営状況に合わせた支払方法を選ぶことができます。
今回は、それぞれの特徴を簡単にご紹介したいと思います。
小規模企業共済
多くの経営者・個人事業主が加入している、節税対策としてはオーソドックスな制度です。
個人事業主が事業を廃止した場合や、会社等の役員が退職した場合など、第一線を退いたときに、それまで積み立てた掛金に応じた共済金を受け取れるため、一般的に、個人事業主や経営者の退職金制度として利用されています。
【掛金】
掛金は月額7万円(年間84万円)を限度として、500円単位で決められます。
掛金は、個人の所得から全額を控除することができます。
【受け取ることができるとき】
個人事業を廃止した場合や法人(会社など)を解散した場合、役員を退任した場合、個人事業主の廃業に伴い共同経営者を退任した場合など。
また、満65歳以上であり、掛金を15年以上払い込んでいる方であれば、事業を続けながら老齢給付として年金のように共済金を受け取ることもできます。
一括で受け取る場合には、退職所得として、一定金額までは税金が優遇されます。
また分割で受取る場合には、公的年金等として取り扱われます。
【中途解約】
任意解約すると返戻金が減額されてしまいますので、注意が必要です。
【掛金額の変更】
掛金の払込はいつでも変更できます。
また、最大で13ヶ月分を前払いすることができます。
そのため、利益が予想以上に出て税金が多くなると分かった段階で、節税のために年末になって駆け込みで支払う方も多いです。
なお、掛金の払い込みを中止する「掛止め」もできます。
【取扱い窓口】
各商工会議所や商工会、金融機関など (下記ホームページで取扱い窓口を確認できます)
中小企業基盤整備機構HP ー小規模企業共済ー
http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/index.html
経営セーフティ共済
小規模企業共済と同様に、こちらも個人事業主の方に人気のある節税対策です。
月20万円まで掛金を設定することができて、取引先が倒産したときなどに、その掛金の10倍まで借入ができる制度になっています。
また、掛金は掛け捨てではなく積み立てですので、40ヶ月以上の契約期間を経過すれば、解約しても全額戻ってきます。
【掛金】
5,000円〜200,000円/月までの5,000円単位。
限度額は800万円まで。
掛金は、個人の所得から全額を控除することができます。
【受け取ることができるとき】
12ヶ月以上納付していれば、任意解約で解約金の受取が可能。
掛金納付月数が40ヶ月未満の場合は、受取額が掛金を下回ってしまうため注意が必要。
また、解約金の受取には税金が掛かるため、掛金支払時よりも解約金受取時の方が所得が大きいと、税率差で損をしてしまうケースもあります。
【中途解約】
12ヶ月以上の納付で解約が可能。
【掛金額の変更】
増額・減額ともに可能ですが、減額の場合は一定の要件があります。
また、前納も可能です。
そのため、今年は予想以上に利益が出てしまったという方が、年末に1年分まとめて掛金を納めることで節税をするというケースがあります。
ただし、1年を超える前納については、「長期前払費用」として必要経費算入できません。
【取扱い窓口】
各商工会議所や商工会、金融機関など (下記ホームページで取扱い窓口を確認できます)
中小企業基盤整備機構HP ー経営セーフティ共済ー
http://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html
個人型確定拠出年金
こちらも国の制度で、最近特に話題になっている制度です。
iDeCo(イデコ)という名称でニュースに取り上げられているのを見た方も多いかもしれません。
平成29年1月から公務員や専業主婦の方も対象になったため、ほとんどの方が加入できるようになりました。
個人型確定拠出年金(いわゆるDC。日本版401K)は、個人型の年金制度で、運用商品を自分で選んで運用します。
国民年金などの公的年金制度との大きな違いは、「確定拠出型」という名称の通り、拠出金額は確定していますが、受取ることのできる年金等の金額は、運用次第で変わってくるという点にあります。
つまり、加入者ごとの運用実績に基づいて年金額が決定するため、給付金の額は、事前に確定しません。
ということは、元本割れの可能性もある、ということになります。
運用方法を加入者本人が決めることになるので、運用リスクは加入者の本人が負うことになります。
【掛金】
5,000円~68,000円/月までの範囲内で選べますが、他の年金制度への加入状況に応じて、上限額が異なります。
掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として、所得から控除することができます。
【受け取ることができるとき】
原則的に、老齢年金として受け取ります。
給付開始年齢は加入期間によって異なりますが、10年以上の加入で60歳から受給可能です。
その他に、障害一時金や死亡一時金も用意されています。
年金で受け取る場合は公的年金等として、税制上の優遇措置があります。
【中途解約】
原則的に中途解約できません。
【掛金額の変更】
増額・減額ともに可能ですが、変更できるのは年に1回までとなっています。
【取扱い窓口】
iDeCoの取扱金融機関で申し込みます。
※金融機関ごとに取扱い商品や口座管理手数料が異なるため、十分比較検討して加入する必要があります。
国民年金基金連合会
https://www.ideco-koushiki.jp
または取扱金融機関HPを参照下さい。
国民年金基金
こちらもオーソドックスな制度ですが、節税効果(と貯蓄効果)が高い制度です。
会社員の方が加入する厚生年金との受取額の差を解消するために創設されたもので、 支払った掛金に応じて、通常の国民年金に上乗せされて年金を受給することができます。
【掛金】
給付型や口数、加入時の年齢などによって、掛金の額を設定することができます。
上限は68,000円/月となっていますが、前述の個人型確定拠出年金にも加入している場合、合わせて68,000円/月が上限です。
掛金は全額を、個人の所得から控除することができます。
【受け取ることができるとき】
原則的に、65歳〜老齢年金として受け取ります。
増口分については、60歳〜の受給型も選択可能です。
老齢年金を受取る場合には、公的年金等として税制上の優遇措置を受けられます。
その他に、遺族一時金も用意されており、こちらは非課税です。
【中途解約】
原則的に中途解約できません。
個人事業をやめて会社員になった場合など、国民年金の被保険者でなくなったときは加入資格を喪失します。
その場合、掛金は将来の年金額に加算されます。
【掛金額の変更】
増額・減額ともに可能です。
また、前納も可能で、1年分を前納すると0.1ヶ月分の割引が受けられます。
そのため、今年は予想以上に利益が出てしまったという方が、年末に1年分まとめて掛金を納めることで節税をするというケースがあります。
【取扱い窓口】
国民年金基金連合会、金融機関など 国民年金基金連合会
http://www.npfa.or.jp
さいごに
個人事業をされている方は、会社員に比べて将来に対する不安が大きいと思います。
将来への備えをしつつも、節税効果のある制度をうまく活用したいところです。
次回は、個人事業をされている方であれば一度は考える、「法人成り」についてお話します。
最近では、その逆で法人で営業していた方が個人事業に変更する「個人成り」も増えているそうです。
「法人」と「個人事業」の違いについてもご紹介します。
<次回以降の更新予定>
「来年の確定申告に向けて」
来年の確定申告に向けて①(概要編〜主な節税対策〜)
来年の確定申告に向けて②(青色申告の基礎)
来年の確定申告に向けて③(退職金や保険で節税する) ←今回の記事です
来年の確定申告に向けて④(法人成りを検討する)
来年の確定申告に向けて⑤(その他の節税対策)
今年の確定申告でもできる節税方法
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