【税務相談】国庫補助金を受けた場合の記帳方法について

【税務相談】国庫補助金を受けた場合の記帳方法について

【ご質問】

当社は事業用に取得した資産について、国庫補助金を受ける予定です。
この補助金について、法法42①に規定する国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮記帳の規定の適用を受けようと考えています。
なお、帳簿価額を損金経理により減額する方法により経理する予定です。

 

この場合、補助金収入と圧縮損を相殺(下記③の仕訳を計上)しても、損金経理したものとみなされるでしょうか?

 

仕訳:
①現預金/補助金収入
②圧縮損/固定資産
③補助金収入/圧縮損

 

【回答】

圧縮記帳制度は、受贈益等として実現した利益を法人の内部的計算により減殺し、課税延期を認める一種の内部取引であるとされており、圧縮限度額の範囲内で圧縮額をいくらにするかは法人の自主的な判断に任せられている一方で、その意思を法人が確定決算において表示することが求められています。
貴社が採用しようとする帳簿価額を直接減額する方法とは、確定した決算において圧縮限度額以内の金額を費用又は損失として経理するとともに、固定資産の帳簿価額を同額だけ減額することとされています。
法令の文言上は必ずしも要件が明確になっておりませんが、貴社が会計処理として②の仕訳を計上することで、「確定した決算において圧縮限度額以内の金額を費用又は損失として経理する」また「固定資産の帳簿価額を同額だけ減額する」という要件は満たしていると考える余地はあるかと思われます。

 

一方で、個別通達(*1)において、国庫補助金等を受け入れたときは、「当該利益および当該圧縮損を損益計算書にそれぞれ特別損益の項目として計上する」とされています。
これを文言どおり解釈しますと、開示資料である損益計算書において、特別損益の項目に利益と損失をそれぞれ区分して表示しなければならないと記載されているように読むことができるかと思われます。
また、旧法人税基本通達においても、受け入れた国庫補助金等を益金の額に算入しないで、これと取得した固定資産の取得価額とを相殺することによりその帳簿価額を減額する経理処理は、固定資産の帳簿価額を損金経理により減額したことには該当しないものとされていました(*2)。

 

すなわち、貴社の想定仕訳である③により利益と損失を相殺していることから、結果的に「国庫補助金等を益金の額に算入しないで、これと取得した固定資産の取得価額とを相殺することによりその帳簿価額を減額する経理処理」となっているものと考えられます。

 

上記を踏まえますと、法令の文言上は明確にはされておりませんが、本制度の適用に当たっては、補助金収入と圧縮損は区分して計上することが求められていると考えるのが保守的かと考えます。
この場合、当該開示が要求される「損益計算書」ですが、それが会社が作成する全ての損益計算書(有価証券報告書用、アニュアルレポート用、決算公告用等)を指すのか否かについて明文規定はありませんが、全てと解することは合理的ではなく、例えば、法人税申告書に添付する財務諸表の中の損益計算書において上記の通り開示すれば足りると考える余地はあるかと思われます。

 

なお、補助金等の交付前に資産を取得する場合においても圧縮記帳は適用できますが、この場合には、実際の取得価額に対する補助金等の交付を受けた時点における当該資産の帳簿価額の割合を当該補助金等の額に乗じて計算した金額をもって圧縮限度額を計算することになりますので、ご留意ください。

 

(*1)「圧縮記帳に関する会計処理及び表示について」(昭51.5.15直法2-19)
(*2) 旧通達昭40直審(法)84「119」

 

 

 

下島聡司税理士事務所
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