決算・申告をしていない法人の方へ【期限後申告・無申告への対応方法】

決算・申告をしていない法人の方へ【期限後申告・無申告への対応方法】

会社は、会計期間が終了したら決算を行う必要があり、その決算に基づいて会計期間終了後2ヶ月以内に、税務署などに税金の申告を行わなければなりません。

しかし、何らかの事情により決算や税務申告を行っておらず、そのまま何年も放置してしまっているような方も実際にいらっしゃいます。

「設立初年度は忙しすぎて、経理や申告にまで手が回らなかった」
「知人から、小さな会社には税務調査は入らないから大丈夫と言われた」
「赤字だから申告しなくても良いかと思って放置していた」

このような方は、まずはこちらの記事をご一読いただいた上で、できるだけ速やかに税理士にご相談下さい。

 

個人の方が確定申告をしなかった場合については、こちらをご参照ください。

【参考記事】
【確定申告の基礎】確定申告書を提出しなかったらどうなるか?
【確定申告の基礎】マイナンバーで無申告はバレるか

決算・申告をしていない法人の方へ【期限後申告・無申告への対応方法】

「決算」は何のためにするのか?

決算を行う目的は?

会社が「決算をする」ということは、1年間にどれくらいの売上や仕入れがあり、どれくらい儲かったのかを把握する手段です。
今までの営業の結果を振り返り、今後の予測や計画・方向性を検討するための資料として、経営者としては最も重視すべき手続きとなります。

ただし、決算は経営状況を確認するためだけに行うものではありません。

そもそも「決算」は法律(会社法)により定められた義務であり、さらには税金を計算するための基礎手続きでもあります。

【参考記事】
【はじめての決算①】そもそも「決算」とは?

 

会社の税金は自分で計算する

法人税などの会社が支払う税金は、基本的に自分で税額を計算して申告する方式となっています。

これを「申告納税方式」と言います。

 

決算時に申告する税金は、主に次のようなものです。

会社決算時の税金

上記以外にも、土地や建物、減価償却資産を有する場合にかかる固定資産税や、印紙税、自動車税、登録免許税などもあります。

 

申告するのも申告しないのも自由かと言えばそうではなく、もし会社が申告しなければ、税務署は様々な方法で収入を調べて、税務署が税金の計算をすることもできることになっています。

かと言って、「税務署が計算してくれるのなら、わざわざ自分で計算するのは面倒だから放っておこう」と考えた方は、大きな間違いです。

 

申告しなかった場合のリスクとは?

自分で申告せず、税務署が税金を計算すると、最悪の場合は次のようなリスクがあります。

・正しい経費を認めてもらえない可能性がある(資料不足などのため)
・実際よりも多い売上に対して税金を払う可能性がある(同上)
・赤字の繰越や税額控除など、税務上の特典が使えない

そして、一番大きいのが、ペナルティとしての税金です。

自分できちんと申告していれば払わなくても良かった税金を、本税と合わせると最大で150%(1.5倍)近くも払わなくてはならないケースもあります。

 

申告しなかったらどうなるか?

無申告であったとしても、いずれは何らかの形で税務署から連絡が来ます。

 

まず第一に、法人が設立されたことは、法務局への法人設立登記や、開業届の提出などから判明しています。

会社を作ったのに申告をしていなければ、まずは税務署からの問い合わせがあり、それでも申告がなければ、通常の「税務調査」や、抜き打ちの「現況調査」などによって、会社の収入を調べることになります。

また、反面調査といって、取引をしている相手方の帳簿や取引記録から、会社に売上があることが判明するケースもあります。

さらには、銀行調査により、税務署は会社や代表者などの口座取引を調査することが可能ですので、入金の事実などを確認することにより申告漏れが判明することもあるでしょう。

このように、税務署は様々な手段で、会社に収入がないかを調べることができます。

 

それでは具体的に、会社が申告をしなかったら、どんな問題があるのかをご説明します。

 

ペナルティの税金がかかる

数年分の税金をまとめて支払う

一番大きいのが、これまで無申告だった期間の税金(法人税や消費税などの「本税」)を全て支払わないといけないことです。

 

当たり前の話ではありますが、数年分の税金を払うことになると、その金額は多額になるケースがほとんどです。

しかも、国に支払う法人税や消費税だけでなく、法人住民税や法人事業税なども同時期に請求が来ることになります。

それだけのキャッシュが社内に残っていれば何とか払えるかもしれませんが、多くの無申告の会社は、既に使ってしまっていたり、給料として社長や家族に支払ってしまっているケースが多いので、急激に資金繰りが悪化します。

一括で支払うことができないと、この後ご説明する延滞税が、本税を完納するまで積み上がっていきます。

 

ペナルティの「加算税」がかかる

法人税などの「本税」だけでも数年分をまとめて支払うのは大変なのに、更にペナルティの税金も課されます。

 

無申告である場合は、納付すべき「本税」に対して、次の「無申告加算税」を払わなければなりません。

本税が50万円まで 15%
50万円を超える金額 20%

※税率は提出するタイミングにより異なる場合があります。

 

例えば、納めるべき本税が100万円の場合は、

500,000円×15%=75,000円
(1,000,000円ー500,000円)×20%=100,000円

合計175,000円が無申告加算税として追加で支払うペナルティになります。

 

また、地方税(法人事業税)においても同様に「不申告加算金」というペナルティがあります。

 

なお、脱税が悪質な場合には、「重加算税」という更に重い罰則が用意されていますし、最悪の場合には刑事事件に発展する可能性もあります。

 

利息としての「延滞税」がかかる

税金を納期限までに支払わないと、納期限の翌日から実際に支払った日まで、「延滞税」という利息的なペナルティの税金が日割りで課されます。

延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月以内が年2.7%、それ以後は年9.0%です。

利息と言うには、あまりにも高い税率ですので、こちらもペナルティと考えて頂いた方が良いと思います。
(2017年2月現在。延滞税の利率は延滞期間に応じて異なります。)

延滞税は、本税を完納するまで積み上がっていきますので、まずは本税を支払うことが重要です。

(加算税や延滞税を滞納しても、ペナルティに対しては延滞税はかかりません)

 

税務調査が入る前に自主的に申告を

無申告の方の場合、税務調査が入ってからようやく事の重大さ(払う税金の多さ)に気付かれる方が多いです。

 

しかし、税務調査が入る前(事前通知前)に自主的に期限後申告をした場合は、上記のペナルティが一部少なくなります

無申告加算税については、上記で15%や20%とされていた税率が、5%に軽減されます。

延滞税については軽減はありませんが、早めに支払うことで、その後の延滞税が増え続けるのを止めることができます。

 

さらに、申告期限を過ぎてからすぐに提出すれば、無申告加算税が課されないケースもあります。

もし「うっかり」申告書の提出が間に合わなかったような場合には、速やかにご相談ください。

 

いずれにせよ無申告である場合には、できるだけ早く、自主的に申告することが何よりも重要です。

 

青色申告が取り消される

期限内に申告しないと青色取り消しに

会社を設立すると、最初に開業届(法人設立届)を提出しますが、ほとんどの会社が「青色申告承認申請書」も合わせて提出しているかと思います。

この青色申告については、申告書を2年連続で期限内に提出できなかった場合、その承認を取り消されてしまいます。

 

青色申告が取り消されるとどうなるか?

青色申告が使えない最大のデメリットは、赤字を翌年以降に繰り越すことができないことです。

会社設立直後や、成長期や事業拡大時など、どうしても赤字になってしまう年はあるかと思います。

しかし、赤字(欠損金と言います)の繰越ができれば、その後で黒字になった際に利益と相殺することができるので、税金を安くすることができますが、これは青色申告の特典となります。

 

さらに、法人税には「税額控除」という税金が安くなる制度が設けられており、例えば人を雇った場合や従業員の給与を増やした場合、機械や設備などの新規投資をした場合、研究開発にお金を投資した場合に税金を一定額安くしてくれる制度があります。

この制度を利用できるのも、青色申告であることが条件となっています。

 

銀行からの借入ができない

銀行からの借入をされている会社の場合、借入時と毎年の決算時に、申告書と決算書の一式を銀行に提出されているかと思います。

銀行は、会社にお金を貸すときや、その返済能力を見るために、決算書によって判断しています。

申告していない会社の場合は、おそらく現時点で銀行から借入をされていないと思いますが、もし今後金融機関から融資を受けたい局面が訪れても、無申告の状態だと融資を受けることは現実的に厳しいものと思われます。

 

許認可を受けられない

建設業や宅建業を営む会社や、医療法人などの場合は、毎年決算書などを所轄官庁に提出しなければならないことになっています。

さらに、取引先によっては帝国データバンクなどの信用調査機関への登録が必要だったり、場合によっては決算書を提出して欲しいと言われるケースもあります。

決算を行い、税務申告を行うことは会社の最低限の義務ですので、これを行っていない会社は信用を得ることが難しいと思います。

 

申告しなくてもバレなければ良いのか?

経営者仲間から、こんな話を聞いて信じていらっしゃる場合は要注意です。

「申告しなくてもバレなければ良い」
「今まで申告したことがないが、税務署から何も言われたことはない」
「小さな会社には税務調査は入らないから大丈夫」

申し訳ありませんが、上記はどれも間違いです。

これまでご説明してきたように、申告しなければ税務署は様々な手段で収入を調べることができますし、小さな会社でも税務調査は行います。

後から納税が必要な事態になると、ペナルティが上乗せされるため、当初納めるべき金額よりも多い税金を支払わなければなりません。

 

ただ残念なことに、私たち税理士が「申告した方が良いですよ」と言っても、次のように感じる方もいらっしゃるようです。

「税理士は杓子定規のことしか言わない」
「税理士は税務署の言いなりだ」
「税理士は大げさに脅してくるが、そんなに大したことはない」

確かに、私たち税理士は「脱税しても良いですよ」とは間違っても言いません。

 

ただ、ひとつ冷静に考えていただきたいことがあります。
それは、私たち税理士は、一般の方の何倍も、何十倍も多くの事例を見てきているということです。

私たち税理士が無申告であることを重大なリスクだと言うのは、申告しなくて大変なことになった事例を数多く見てきたからです。

 

先ほどの「バレなければ良い」という方は、どれだけの事例を見て言っているのでしょうか?
「税務調査は入らないから大丈夫」と言われたのに、自分の会社に税務調査が来てしまったら、大丈夫と言った方が責任を取ってくれるでしょうか?

 

間違った情報を鵜呑みにして、後で大変な思いをされるのは経営者である皆様です。

税務調査によって後になって多額の税金とペナルティを支払うことになるよりも、早い段階で正しい処理をして、納税予定を織り込んだ上で建設的な計画を立てて、将来の健全な経営に向けて方向転換していただくことを強くお勧めします。

 

さいごに

厳しいことばかり書いてしまいましたが、決算・申告ができないという事情は個々それぞれかと思います。

やむを得ない事情により、決算しないままの状況でいるような会社もあるかもしれません。

申告しないでいても状況は悪くなる一方ですので、早めに処理されることをお勧めします。

申告などの義務もきちんとしながらも、手元にお金を残して健全な経営をしていきたいと考えていらっしゃる会社の方は、まずは一度ご相談ください。

 

私たちの事務所では、正しい決算・申告をして頂いた上で、できるだけの節税をしていただき、皆様の手元に残るお金を増やすようなアドバイスを心がけています。


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