固定資産か修繕費かを判断するポイント【会社決算のポイント⑦】
固定資産の取得をした後で、その資産に対して修理をしたり改良をしたり、追加で工事などを行ったりすることがあります。
この場合、その追加工事等の内容に応じて、その金額を修繕費として費用計上できるのか、それとも固定資産として処理するのか、取扱いが異なることになります。
今回は、経理や税務の実務に携わる方々を常に悩まし続ける「修繕費か、資本的支出か」という論点について、会社経理や決算が初めての方に向けて簡単にご説明します。
基本的に、会社の決算や税務申告については、ご自身で全てを行うのではなく、少なくとも税務申告については税理士にお任せいただくことが一般的です。
このシリーズでは、会社の決算や記帳についてはご自身で帳簿付けをされおり、決算や税務申告を税理士に依頼している方を対象としていますが、税理士に記帳まで全てお願いしている方であっても、決算にあたって税理士と相談する際に必要な知識となりますので、ぜひご一読ください。
個人事業者で青色申告をされている方も基本的には同様ですので、個人の方もぜひ参考にしてください。
【会社決算のポイント⑦】固定資産か修繕費か
固定資産として計上すべき修繕費とは?
「修繕費」と「資本的支出」
建物や構築物、機械装置や自動車など、割と金額が大きな固定資産を取得した場合には、その資産を長く使用していると、いろいろと修理を行う必要が出てきます。
修理やメンテナンスであっても、その内容や金額などによって、「修繕費」としてその支出した年度に全額を費用として計上できるものもあれば、場合によっては固定資産を取得したものと同様に、減価償却をしなければならないケースもあるので注意が必要です。
このように、減価償却しなければならないような修繕のことを「資本的支出」と言います。
実務の世界では、修理やメンテナンスなど既に所有している固定資産に対して支出した金額については、「修繕費」か「資本的支出」かの判定を行う必要があります。
資本的支出とは?
まずは、それぞれの用語についてご説明しておきます。
・通常の維持や管理のために行う簡易な修理やメンテナンス
・災害や事故等により損傷した固定資産を復元するような修理
従って、主に機械設備や建物・構築物などについて、その一部が破損したり故障した場合に、その機能を回復させるためだったり、定期的にメンテナンスを行うことでその設備や建物などの現状維持をするために支出するような費用を言います。
・修理や改良を行うことにより、その資産の使用可能期間(寿命)を伸ばすようなもの
・その資産の価値を増加するような支出
具体的な判断が難しいところですが、例えば既に所有している固定資産について、もともと無かったような部品を設置することで新たな機能を追加したり、本来の寿命よりも長く使用できるようにするために素材をアップグレードするような行為などが該当します。
資本的支出になるものの具体例
次のようなものは、資本的支出に該当するものとされています。
(1) 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
(2) 用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
(3) 機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額
(4) ソフトウェアのプログラム修正等について、新たな機能の追加や機能の向上等に該当するような費用
判定のためのフローチャート
実際に支出した金額が、「修繕費」に該当するのか、「資本的支出」に該当するのかは、実務上の判断に迷うものが多いです。
また、少額な改良や周期的に行われる修繕についてまで資本的支出として処理することは煩雑であるため、一定のものについては修繕費として処理することが認められています。
これらを整理しますと、判定が難しい場合には次のようなフローチャートを使用していただいても良いかと思います。
※上記フローチャートは簡便的なものですので、実際の判断にあたっては顧問税理士等にご相談ください。
なお、資本的支出は少額減価償却資産の特例を適用することはできませんのでご注意ください。
【参考記事】
【会社決算のポイント⑥】少額減価償却資産の処理方法
さいごに
実務を行う上で、「修繕費」か「資本的支出」かの判定は、常に頭を悩ませる論点のひとつです。
税務調査でもよくチェックされる部分でもありますので、ひとりで悩まず、顧問税理士等にご相談頂くことをお勧めします。
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【はじめての決算】
①そもそも「決算」とは?
②決算整理とは?
③税務申告で作成する書類は?
④申告しないとどうなるか?
<その他、会社決算に関する記事>
【会社決算のポイント】
【会社決算のポイント①】発生主義とは?
【会社決算のポイント②】未払費用を計上する
【会社決算のポイント③】短期前払費用を経費に入れる
【会社決算のポイント④】残高を合わせる
【会社決算のポイント⑤】減価償却費を計算する
【会社決算のポイント⑥】少額減価償却資産の処理方法
【会社決算のポイント⑦】固定資産か修繕費か
【会社決算のポイント⑧】棚卸しをして在庫を計上する
【会社決算のポイント⑨】消費税や法人税の期末処理
【会社決算のポイント⑩】その他の決算処理
【法人の決算に向けて】
【法人の決算に向けて①】領収書がない費用を計上しなかった場合
【法人の決算に向けて②】役員に対する貸付金がある場合
【法人の決算に向けて③】自宅を法人の事務所として使用している場合
【法人の決算に向けて④】個人事業で使っていた資産を引き継ぐ
【法人の決算に向けて⑤】法人設立前の費用を忘れずに計上する
【法人の決算に向けて⑥】開業費を経費に算入する
【法人の決算に向けて⑦】法人設立前の売上については、個人で確定申告が必要
【法人税の申告調整】
【法人税の申告調整①】役員報酬を期中に減額した
【法人税の申告調整②】期末に役員賞与や親族への賞与を未払計上した
【法人税の申告調整③】交際費の計算(区分)
【法人税の申告調整④】貸倒損失
【法人税の申告調整⑤】税金の調整(費用になるもの、ならないもの)
- 決算や申告がはじめての法人のお客様へ
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このシリーズでは、簿記や経理をある程度理解している方を前提として、決算整理の際に注意すべき点をご説明していきます。
基本的には、帳簿だけをご自身で作成して、決算書や税務申告書の作成を税理士(会計事務所)に依頼しているような方を対象としてご説明します。
「どうせ赤字だから、決算や申告が少しくらい間違っていても大丈夫だろう」
「うちは規模が小さいから、税理士や会計事務所に頼むまでもない」
「会計ソフトを使えば自分でも作れそうだから、わざわざ高い報酬を払ってまで税理士に依頼するのがばかばかしい」・・・実際にこういったお話をお聞きすることも多いです。
しかし、間違いが多い決算申告では銀行にも税務署にも信用されませんし、経営判断や節税対策には全く使えません。
また、個人事業の確定申告と比べると、法人の決算や申告は格段に難易度が高くなりますので、ご自身で正しい決算申告をすることは非常に難しいと思います。私どもの事務所では、お客様の方で会計ソフトへの入力が済んでおり、決算や税務申告だけを頼みたいというご依頼もお引き受けしております。
もちろん、会計ソフトへの入力まで丸投げしたいというお客様や、日々の節税相談をご希望のお客様、更には過去数年分の申告をまとめて依頼したいという法人の方も、ぜひ一度ご相談ください。