利息ゼロで借りられる|物価高騰・中東情勢の影響を受けている事業者が使える自治体の融資制度

こんにちは。杉並区・西荻窪の下島聡司税理士事務所です。

今回は、物価高騰や中東情勢の影響で売上が落ちている事業者が使える、自治体の低金利融資についてご案内します。

利息ゼロで借りられる制度が、各自治体にあります

原材料費やエネルギーコストの上昇が続くなか、多くの自治体が利子を全額補助する融資制度を用意しています。多くは本人負担の利率が0%、つまり利息を払わずに借りられる制度です。

ただし、こうした制度は自治体ごとに要件も限度額も期限もばらばらです。「隣の区では使えるのに、うちの区にはない」ということも起こります。また受付期限があり、期限が過ぎれば申し込めません

この記事では、杉並区の制度を中心に、近隣自治体の制度を整理してご紹介します。

杉並区|中東情勢・物価高騰対策特例資金

杉並区では、令和8年8月3日から「中東情勢・物価高騰対策特例資金」の受付が始まっています。

限度額 小規模企業小口資金:2,000万円まで
経営安定運転特例資金:700万円まで
本人負担の利率 0%(区が利子を全額補給)
返済期間 7年以内(据置1年以内を含む)
資金使途 運転資金のみ
申込期間 令和8年8月3日~12月25日

要件は「減少していること」

この制度の特徴は、減少率の下限が定められていない点です。次のいずれかが前年同期と比べて減少していれば対象になります。

・最近3か月の売上高の合計額
・最近3か月の平均営業利益率
・最近1か月の売上高と今後2か月間の売上高見込みの合計額
・最近1か月の営業利益率と今後2か月間の平均営業利益率の見込み

後述するとおり、他の自治体では「10%以上」「20%以上」といった下限が設けられていることが多く、杉並区は要件が緩やかといえます

そのほかの条件

・杉並区内に主たる事業所(法人は本店登記)を1年以上有すること
・区内で同一の事業を1年以上営んでいること
・住民税・事業税を滞納していないこと
・信用保証協会の保証対象業種であること

なお小規模企業小口資金を使う場合は、従業員20人以下(卸売業・小売業・サービス業は5人以下)であること、保証付き融資の合計残高が2,000万円以下であることも必要です。

信用保証料について

杉並区独自の保証料補助は設けられていません。ただし東京都の信用保証料補助を併用できる場合があります(小規模企業小口資金なら都の「小口フリーランス」、経営安定運転特例資金なら「経営一般」の要件を満たす場合)。

区の資料にも「杉並区の特例資金とは要件が異なる場合があります」と注記されており、都の窓口への確認が必要です。

近隣自治体の制度

杉並区以外にも、同種の制度があります。お住まいや事業所の所在地によって使える制度が変わりますので、該当するものをご確認ください。

中野区|中東情勢対応資金

限度額 2,000万円
本人負担の利率 0%(区が1.9%を補給)
信用保証料 区が全額負担(小規模企業者は都と区が各2分の1)
返済期間 7年以内(据置1年以内)
要件 最近3か月の売上が前年同期比5%以上減少、または売上高営業利益率が20%以上減少など
受付期間 令和8年6月1日~9月30日

利率0%に加えて保証料も全額補助されるため、条件が合えばもっとも有利な制度のひとつです。ただし受付は9月30日までですので、該当する方はお早めにご検討ください。

渋谷区|緊急中小企業支援資金(人件費・物価高騰対策)

限度額 2,000万円以内
本人負担の利率 0%(区が1.7%以内を補助)
信用保証料 区の補助はなし(自己負担)
返済期間 7年以内(据置1年を含む)
要件 最近3か月間の売上高・売上総利益・営業利益のいずれかが前年同期比10%以上減少
受付期間 令和8年4月1日~令和9年3月31日

創業1年未満の事業者向けの要件も別途定められています。なおバーチャルオフィスは原則としてあっせん不可ですが、区内に事業実態がある場合は対象となることがあるとされています。該当する場合は事前に区へご確認ください。

世田谷区|中東情勢対応緊急資金

限度額 1,000万円
本人負担の利率 0%(区が2.0%を負担)
信用保証料 2分の1補助(小規模企業以外の事業者向け)
返済期間 5年以内(据置6か月以内を含む)
要件 最近3か月間の売上高が前年同期比20%以上減少など
受付期間 令和8年8月3日~令和9年3月31日

武蔵野市|小口特別

武蔵野市には中東情勢に特化した制度はありませんが、売上減少に対応する「小口特別」があり、条件次第では有利に使えます。

限度額 1,000万円
本人負担の利率 0.2%(市が1.7%を補給)
信用保証料 市が全額補助
返済期間 6年以内
要件 最近3か月間または直近期の売上高が前年同期比10%以上減少、従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)など

利率は0.2%かかりますが、保証料が全額補助され、通年で受け付けている点が利点です。

新宿区・練馬区の場合

新宿区・練馬区では、中東情勢や物価高騰に特化した区独自の融資は確認できませんでした(令和8年8月時点)。ただし、通常の融資あっせん制度や、別の名称の制度が使える可能性があります

新宿区は「中東情勢関連対応特別相談窓口」を設けており、中小企業診断士が相談に応じています。練馬区にも「景気対策特別貸付」など複数の資金メニューがあります。

お住まいの自治体に制度が見当たらない場合でも、後述する東京都の制度が使えることがあります。まずはご相談ください。

東京都の制度も確認しましょう

区市町村の制度とは別に、東京都にも「経営一般(中東情勢関連)」という制度融資があります。令和8年度は信用保証料の補助が拡充されました。

信用保証料の補助 売上減少などの要件を満たす場合
 小規模企業者:4分の3補助
 中小企業:3分の2補助
要件を満たさない場合:全事業者2分の1補助
融資限度額 2億8,000万円(組合は4億8,000万円)
利率 2.15%~2.85%以内
融資期間 10年以内(据置2年以内を含む)
要件の例 売上が前年同期比5%以上減少、営業利益率が20%以上減少、売上原価の20%以上を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇し価格転嫁できていない など

都の制度は利子補給がないため利息はかかりますが、限度額が大きく、区の制度では足りない規模の資金にも対応できます。

なお区市町村の制度と都の制度を併用できるかどうかは、公表資料に明記がありません。杉並区のように「都の保証料補助を利用できる場合がある」と案内している自治体もあれば、記載のない自治体もあります。実際に使えるかは個別の確認が必要です。

申し込みまでの進め方

制度融資は、金融機関に直接申し込むのではなく、自治体のあっせんを受けてから手続きを進めるのが基本的な流れです。順番を間違えると二度手間になりますので、次の順序で進めてください。

1. まず税理士など専門家に相談する

最初にご相談いただきたい理由は、要件に当てはまるかどうかの判断に、決算書や試算表の数字が必要だからです。「売上が前年同期比で何%減っているか」「営業利益率がどう変化しているか」は、帳簿を見なければ分かりません。

また、複数の制度が使える場合、どれが自社にとって有利かの比較も必要です。限度額・利率・保証料・返済期間はそれぞれ異なりますので、借入の目的や金額によって最適な選択は変わります。

2. 使えそうな制度を決める

要件を満たす制度が複数ある場合は、保証料の負担まで含めて総額で比較します。利率0%でも保証料が自己負担なら、利率0.2%で保証料全額補助のほうが安く済むこともあります。

3. 金融機関に相談する

制度融資は、地元の信用金庫や地方銀行が窓口になることが多くあります。すでにお取引のある金融機関があれば、そちらに相談するのがスムーズです。

4. 自治体の相談窓口で申し込む

自治体の窓口で融資あっせんの申し込みを行います。申込書のほか、確定申告書や決算書の写し、売上高や営業利益率が確認できる資料(試算表や売上元帳など)、納税証明書、印鑑証明書などが必要になります。

自治体によっては面談の予約が必要で、期限間際は混み合います。余裕をもって動くことをおすすめします。

さいごに

物価高騰への対応は、価格転嫁と資金繰りの両輪で考える必要があります。値上げ交渉には時間がかかりますので、その間の運転資金を低利で確保しておくことは、経営の選択肢を広げることにつながります。

ただし、これらの制度には受付期限があります。特に中野区は令和8年9月30日で受付が終了します。

「自社が要件に当てはまるか分からない」「どの制度を選べばよいか迷っている」という段階で構いませんので、お気軽にご相談ください。決算書の数字を確認して、使える制度をご一緒に整理します。

※本記事は令和8年8月時点の各自治体・東京都の公表資料に基づいて作成しています。制度の内容や受付期間は変更される場合がありますので、最新の情報は各自治体の窓口にご確認ください。

監修:下島聡司税理士事務所
代表税理士 下島聡司
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