売上アップ、どこから手をつける? ― 3つの要素の優先順位を考える ―

弊社は、杉並・荻窪エリアで中小企業の経営を支援している税理士事務所です。
一般的な会計事務所・税理士事務所としての業務に加えて、中小企業の皆様の売上アップ・利益アップ・給料アップのお手伝いをすることを使命としています。
このブログが、皆様の経営に少しでもお役に立てると幸いです。

 

はじめに

「一生懸命やっているのに、なぜか売上が伸びない…」
「売上を伸ばしたいけれど、何から始めたらいいのか分からない」
・・・そんなご相談をよくいただきます。

前回の記事でお伝えしたように、
売上は「客数 × 客単価 × 購入頻度(リピート)」の3つの要素でできています。
つまり、この3つのうちどれかひとつを伸ばすだけでも、売上は必ず変化します。

前回の記事はこちら

頑張ってるのに売上が伸びない?見直したい「売上アップの3つのポイント」

しかし実際に取り組もうとすると、

「どれから手をつければいいのか」が分からず、
結局どれも中途半端になってしまう・・・

何をすればよいかわからずに時間だけが過ぎていく・・・

そんなケースが少なくありません。

そこで今回は、
売上アップの“3つの要素”のうち、
どこから着手すべきかを見極める考え方
を整理してみたいと思います。

これを読んでいただいている皆さまが、
売上アップのための第一歩を踏み出せるように、
このブログが参考になれば嬉しいです。

ケーススタディ1(A社のケース)

ご相談内容

飲食店を営むA社の社長さんから、こんなご相談をいただきました。

「ここ数年、売上は横ばいなんです。広告も出してるし、SNSも頑張っているんですが…」

詳しくお話を伺うと、実は新しいお客様は毎月のように増えている一方で、
既存のお客様のリピートが少ない状態でした。

つまり、
「客数」は変わらないのに、
「購入頻度」が高くないため、
全体としては売上が伸び悩んでいたのです。

売上が伸び悩んでいる状況では、広告費を増やそうにも資金繰りが不安で、
広告費を増やすことには及び腰になっていたようです。

この場合、どんな対策が考えられるでしょうか?

売上アップの3要素をもう一度整理

「売上」は、以下の3つの要素の掛け算でできています。

・客数(新規顧客の獲得)
・客単価(1人あたりの販売金額)
・購入頻度(リピート回数・継続率)
 

式で表すと、
売上 = 客数 × 客単価 × 購入頻度

です。

この3つのどこを伸ばすかによって、
戦略も必要な行動もまったく変わります。

対策案

このお客様の場合、売上の公式に当てはめてみると、

・新規のお客様をさらに増やす(客数)
・商品単価を上げる(客単価)
・再度来店してもらうよう促す(リピート率)

といった対策をとることで、売上が増えそうということはわかります。

 
それぞれ、もう少し深堀りしてみると、

新規のお客様を増やす
 →例えば、広告費用をもっと増やすとか、紹介制度を導入するとか

商品単価を上げる
 →要は値上げするということですね。
  他には、ついでに他の商品も一緒に買ってもらう(セット販売)というのも、客単価を上げる手段です。

再度来店してもらうよう促す
 →商品の魅力を高める、再来店のインセンティブを付ける(ポイントカードなど)、
  メルマガやDMなどで割引クーポンを配布する など

このように、どこ(3要素のどれ)に力を入れても、売上を増やす可能性は十分にあります。

どれを選ぶべきか

どこを伸ばすべきかは、もちろん経営者の判断になりますが、
実際に「どこから手を付けるか」を判断する際には、

・どれくらいの費用がかかるのか(コスト)
・どのくらいの期間で成果が出るか(スケジュール)
・どれくらいの売上が増えるのか(効果)

といった点を冷静に見極める必要があります。

結局、どれを選んだか

このお客様の場合、最も短期的に効果が出るのは、「単価アップ」でした。

しかし、社長はリピーターが少ない現状を最も問題視していたので、
リピーターを増やすためには、単価を上げることよりも、
まずは顧客満足度を上げることに注力することにしました。

相談に来た時は非常に落ち込んでいた社長の顔も、この段階になると表情が明るくなり、
お客様の声を聞いて魅力的な商品を開発したり、
ポイントカードを導入したり、
アプリを導入したりと、
リピーターを獲得するためのいろいろなアイデアが出てきました。

そして相談が終わって帰る頃には、やる気に満ち溢れてとても前向きな気持ちで事務所を後にされました。

穴の空いたバケツになっていないか?

新規顧客の獲得にばかり力を入れても、
既存顧客が離れていく状態では、
水を注いでもたまらない「穴の空いたバケツ」と同じです。

まずは、いまの顧客が離れていないかを確認することが大切です。

もし既存顧客の満足度が低ければ、
リピートを増やす施策から着手するというのは、
悪い手ではありません。

まずは現状分析を

なお、この会社の場合は、業種柄ということもあってか、
新規が多いのか既存客のリピートが多いのかきちんと集計できていたので、
「いまは新規が多くてリピートが少ない」という現状を正確に把握できていましたが、

一方で特に小売業や飲食店では、新規客なのかリピーターなのかを
正確には把握できない状況も多いかと思います。

こういった場合には、大体でも良いので
客数に占める新規とリピーターの割合を算出してみることで、
どちらに注力すべきかを判断しやすくなるかと思います。

ケーススタディ2(B社のケース)

ご相談内容

こんなご相談もありました。

ヨガスタジオを経営されているB社の社長さんです。

開業して3年、順調に生徒さん(お客さん)は増えており、
今まで退会された生徒さんはいないとのこと。

すべてのクラスがほぼ満室で、キャンセル待ちもある状況なので、
インストラクターでもある社長さんは、かなりお忙しそうです。

ただ、会社としては赤字で、なかなか黒字になりません。

つまり、固定費に対して、十分な売上が立っていない状況です。

社長さんとしては、早く事業を軌道に乗せたいので売上を増やしたいのだが、
忙しくて何をしたらよいのかわからない、というご相談でした。

この場合、この社長さんは何をすべきでしょうか?

対策案

B社の場合は、即効性のあるのは、単価を上げることです。

というのも、

現時点で社長のキャパシティはマックスであり、これ以上生徒さんを増やせない(客数)

いまいる生徒さんは退会はなく、リピート率は100%(購入頻度)

とすれば、すぐにできる方法は、客単価しかありません。

具体的には、
価格改定(値上げ)するとか、付加価値をつけた上位プランを設ける、などが考えられます。

もちろん、社長のキャパシティを増やして客数を増やすための対策や、
今後生じるであろう解約率を少しでも低くするための対策も重要ではありますが、
今すぐに売上を増やしたいのであれば、客単価を上げるというのが最善の策となります。

ケーススタディ3(C社のケース)

ご相談内容

もうひとつ例を見てみましょう。

デザインやHP制作を手掛けるC社の社長さんから、飛び込みでご相談がありました。

売上が減っている状況で、何をしたら良いのか悩んでいらっしゃるそうです。

新規のご相談でしたので、まずは「どんな対策をしているのか」をヒアリングしたところ、特に何もやっていないとのこと

つまり、以前は何もしなくても仕事の依頼が来ていたのに、最近はお仕事依頼の件数が減ってしまったという状況でした。

デザインもHP制作も、一件当たりの単価が大きいため、ある程度の件数の依頼があれば十分な売上が立っていたものの、
ちょっと仕事の依頼が減るだけで、売上が減少してしまうというビジネスでした。

対策案

このような場合、まずは次の2点を調べる必要があります。

以前はどうしてお客さんが来ていたのか

最近お客さんが減ってしまった原因は何かあるのか

原因が「リピートの減少」か「新規流入の減少」かによって、取るべき施策がまったく異なります。

この会社は、ここ数年は新規のお客様はゼロで、以前から付き合いのあるお客様からのリピートで細々と売上が立っている状況でした。

つまり、今まで完全に「待ち」の状態で、営業活動というものをしたことがなかったのです。

C社の場合、いつ来るともわからない受注を待っていても仕方がないですし、
受注自体が少ない状況で値上げをしても効果は少ないと判断して、
新規集客のための施策に力を入れることにしました。

ただ、新規集客と言っても、いままで営業をしたことがない社長にはハードルが高かったので、
すぐにできてお金もかからない方法を社長と一緒に考えて実行することから始めることになりました。

どこから手をつけるかを考える3つの視点

このように、努力しても成果が出ない背景には、
どの要素を伸ばすべきかの見極め不足があるケースが多く見られます。

そこで、まずは自社がどのような状況にあるのか、現状分析をすることが最も大切です。

その上で、3要素のどこに力を入れるかを考える際には、次のような視点が参考になります。

1. 事業ステージによって優先順位は違う

創業期:まずは知ってもらうこと=客数を増やす段階。

成長期:次に、取引あたりの単価を上げて利益を確保する段階。

安定期:最後に、リピートや紹介を増やして継続的に回る仕組みを整える段階。

すべて大切ですが、どのステージにいるかで「今やるべきこと」は違います。

2. 事業の種類によっても優先順位は違う

事業の種類や販売する商品サービスの種類によっても、やるべきことは異なります。

・小売や飲食、美容院、単発でのビジネスでは、いかに新規顧客を集客するかが重要

・サブスクビジネスでは、客単価や継続率が重要になってきます。
例えば、学習塾やヨガスタジオ、コンサルタントなど、毎月の利用料や月額料金がもらえるようなビジネスです。

・高額商品やサービスを販売するビジネスでは、1回受注した時の単価が大きくなる上に、必ずしも継続するとも限らないため、継続して新規顧客を集客するとか、単価設定がとても重要になります。

3. 数字で見える化してみる

客数・単価・購入頻度をそれぞれ数値化してみると、
「どこを伸ばすのが一番効果的か」が見えてきます。

たとえば――

項目 現状 目標 改善率 売上への影響
客数 100人 120人 +20% +20%
客単価 5,000円 6,000円 +20% +20%
購入頻度 月1回 月2回 +100% +100%

この表のように、どの要素が伸びると一番インパクトが大きいかを数値で把握することで、
最初の一手を明確にできます。

まとめ:3つの会社の例

A社:新規は多いがリピートが少ない
 → 顧客満足度・フォロー体制を見直す。

B社:単価が低く利益が薄い
 → 値上げを検討する。セット販売や上位プランで付加価値を伝える。

C社:リピーターはいるが新規が少ない
 → 新規獲得の対策をする(HP・紹介制度・Googleマップ)

このように、会社ごとに「今やるべき一手」は異なります。

大事なのは、「どれもやる」ではなく「どこからやるか」を決めることです。

そして、どれかひとつに決めたとしても、そこに全てを賭けるのではなく、
スモールスタートで少しずつ効果を見ながら試すことが大切です。

どうしても起死回生の策を取りたくなる気持ちもわかりますが、
もし仮に数百万円の投資をして、その方向性で効果が出なかったとしたら、
他の策に方向転換することが難しくなります。

少しやってみて、うまくいかなかったら別の策を試す
くらいの気持ちでやるのが現実的で、失敗リスクの少ない進め方です。

さいごに

売上を伸ばすには、3つの要素をどれも伸ばすのが理想です。

しかし現実的には、リソース(時間・人・お金)には限りがあります

だからこそ、まずは「自社の現状を正しく把握し、
最も改善効果が大きい部分から取り組む」ことが大切です。

それが、遠回りに見えて、実は一番の近道です。

次回予告

次回は、3つの要素のうちのひとつ、
「客数を増やす」=新規顧客を増やすための導線設計について、
実際の事例を交えながらお伝えします。

売上に悩んでいる方、ご相談ください

私たちの事務所が行っているサポートは、単なる記帳や申告だけではありません。
日々の数字をもとに、どこを伸ばせば、どう変わるかを一緒に考えることも、私たちの大切な仕事と考えています。

もし「売上を増やしたいけど、何から手をつければいいか分からない」というお悩みがあれば、
ぜひ一度、ご相談ください。

売上アップのヒントは、意外と“すでにある数字”の中に隠れているかもしれません。

創業間もない方、今の売上に不安を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
数字の話だけでなく、「未来の選択肢を一緒に考えるパートナー」として、お力になれればと思っています。

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監修:下島聡司税理士事務所
代表税理士 下島聡司
下島聡司税理士事務所
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