株式会社と合同会社の違い【起業の基礎】
起業をする際には、法人か個人事業かの2つの形態があることを以前ご説明しました。
法人を作って起業される場合には、次にどのような法人形態にするかを決めなければなりません。 ひと口に”法人”と言っても、その形態は「株式会社」などの会社形態だけでなく、「一般社団法人」や「NPO法人」などの形態もあります。
今回は、一般的な法人の形態である「株式会社」と「合同会社」について、それぞれの特徴や違いをご紹介します。
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【起業の基礎】株式会社と合同会社の違い
会社形態の4つの種類
起業をする方にとって一般的な法人の形態は、「株式会社」か「合同会社」になります。
会社法で定められている”会社”には上記に加えて「合資会社」と「合名会社」もありますが、現在これらの形態で起業される方はほとんどいません。
株式会社と合同会社の出資者は”有限責任”ですが、「合資会社」と「合名会社」の2つの形態は、基本的に出資者が無限責任となり、会社の債務について個人が弁済義務を負うことになります。
※本記事の下部で、有限責任と無限責任について少しだけ補足します。
個々の法的な解説は弁護士先生や司法書士の先生にお譲りするとして、ここでは簡単に「株式会社」と「合同会社」の2種類について比較してみたいと思います。
株式会社と合同会社の大きな違いは?
これから起業される方が気にされるポイントに絞って、いくつか違いを挙げてみます。
所有と経営の分離
「株式会社」と「合同会社」の法的な違いとして大きなものは、会社の所有者と経営者が同じかどうか、ということかと思います。
株式会社の場合は、出資者である株主と、経営者である取締役(役員)は、形式上は別の人になります。
一方の合同会社の場合は、出資者は「社員」と呼ばれ、会社の意思決定は社員全員が行います。
また、社員は通常「業務執行社員」という役員となり、それぞれが事業の経営を行うことになります。
もちろん、株式会社でも小さな会社であれば、通常は株主=取締役(社長)でしょうから、その場合は所有と経営は一致することになります。
この場合、株式会社と合同会社の違いをあまり気にする必要はありません。
設立費用・維持費用
設立時に掛かる費用は、上記に記載したとおり、株式会社ですと最低24万円以上、合同会社ですと最低10万円以上となっており、合同会社の方が安く済みます。
(この費用には、司法書士報酬などを含んでいません。また、電子定款にすると印紙代が不要になります。)
さらに、役員の任期がないので、任期ごとに改選をして登記(役員変更登記)する必要がありません。
その他にも、株主総会や取締役会などの決議、議事録の作成など、株式会社に比べて作成しなければならない書類も少なくて済む場合が多いです(最初の機関設計によります)。
従って、設立時に掛かる費用、また設立後の維持費用についても、合同会社の方が株式会社よりも安く済むという違いがあります。
税務上の違いは?
税務面では、株式会社であっても、合同会社であっても、取扱いは全く同じです。
どちらも、法人税の世界では「普通法人」に区分され、税制上の優遇措置も受けられますので、どちらにした方がメリット・デメリットがある、ということはありません。
その他の違い
一般的に、株式会社の方が認知度が高く、合同会社という組織形態のことを知らない方もいるかもしれません。
会社と言えば「株式会社」というイメージを持っていらっしゃる方も多いので、若干信用度が下がってしまうかもしれません。
また同じ観点で、株式会社の代表は「代表取締役社長」であることが多いですが、合同会社の場合は「代表社員」となります。
「社員=役員」という知識がない方が多いので、肩書を重視する方は、注意したほうが良いでしょう。
(合同会社でも、定款で定めれば組織の機関として「社長」を置くことはできますが、取締役は付けられません)
さらに、起業時に既に上場を視野に入れている方は、株式会社を選んで下さい。
合同会社の場合は上場できませんし、もし合同会社から株式会社に組織変更するのに再度手続きと費用が掛かってしまいます。
名刺やホームページ、パンフレットなど名前が入った媒体すべてについて名称変更をしなければならないので、かなりの手間になってしまいます。
ご注意下さい。
さいごに
今回は簡単に、株式会社と合同会社の違いをご説明しました。
次回は、起業をするなら知っておきたい合同会社のメリット・デメリットについてご説明したいと思います。
※少しだけ補足 「合名会社」や「合資会社」の大きな特徴は、原則的に出資者である経営者が、会社の債務に対して「無限責任」を負うことにあります。
つまり、会社が倒産したときに債務が残るようなら、個人的にその返済義務を負うことになります。
株式会社や合同会社の場合、出資者の責任は「有限責任」です。
つまり、会社に万が一のことがあっても、基本的にはその債務まで追求されることはありません。
ただし、一般的に銀行借入時には、社長が連帯保証人になることがほとんどです。
そのため、会社が倒産しても社長は銀行の借入返済について返済義務がついてまわります。
その代わり、仕入債務などは連帯保証が付かないので、有限責任であれば 株式会社の取締役の場合は、経営責任を問われることもありますので注意が必要です。
(その場合は、損害賠償になるかと思われます)
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【起業を考えている方へ】<STEP2>ビジネスプランを考える
【起業を考えている方へ】<STEP3>事業計画を作る
【起業を考えている方へ】<STEP4>開業資金を検討する
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