個人事業を開業する時の手続き【起業の基礎】
個人事業を始めるためには、税務署・社会保険・労働保険などの手続きや、銀行口座開設など、各種の開業手続きが必要になります。
それぞれ専門的な知識がないとできない手続きもありますので、基本的には税理士や社会保険労務士、行政書士などの専門家に依頼することになりますが、基礎知識として、どのような手続きが必要になるのかを把握してことが大切です。
【起業の基礎】個人事業を開業する時の手続き
どのような手続きが必要か
事業を始めるためには、税務署・社会保険・労働保険などの手続きや、許認可手続き、銀行口座開設など、各種の開業手続きをすることになります。
許認可がなければ、税務署や自治体への開業届を出せば基本的には事業は開始できますが、人を雇う予定があれば社会保険の手続きが必要になるケースもありますので、できれば事前に社会保険労務士や税理士にご相談下さい。
なお、やり方を調べればご自身でも手続きを進めることはできます。
しかし、例えば人を雇うのであれば、就業規則や賃金規定、雇用契約書などの内容はどうするのがベストかといった点については専門家のアドバイスが必要となりますし、もしかすると開業時に受けられる助成金や補助金があるかもしれません。
知らずに損をしていたり、後々トラブルになることを避けるためにも、早い段階で専門家に相談することをお勧めします。
税金関係の手続き
個人事業開業時の主な税金関係の手続きは、下表のとおりです。
ひとつひとつ、簡単にご説明します。
個人事業の改行・廃業等届出書
個人事業を開業する場合に提出します。
この届出書を提出しなくても開業して事業を行うことはできますが、青色申告の特典を受けるためには「青色申告承認申請書」を開業時に提出することになりますから、合わせて出しておきましょう。
屋号で銀行口座を作る際には、開業届の提出が必要になります。
また、この届出書を提出すれば、確定申告の前に記入用紙などの案内が届くようになります。
こちらの届出書は、税務署に提出するものです。
この他に、都道府県税事務所や市区町村にも提出が必要になります(下記参照)。
『個人事業の開廃業等届出書』(国税庁ホームページ)
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/04.pdf
事業開始等申告書
開業届は、都道府県や市区町村にも提出します。 この届出書は、税務署に提出する用紙とほぼ同じ内容を記載することになりますが、念のため各自治体のフォーマットをご確認ください。
(ご参考)東京都の場合
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shomei/03-a.pdf
青色申告承認申請書
青色申告の特典(65万円控除など)を受ける場合には、提出が必要です。
提出期限があり、期限を1日でも遅れてしまうとその年は青色申告できませんので、注意してください。
『青色申告承認申請書』(国税庁ホームページ)
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/09.pdf
給与関係の届出書
青色申告で家族に給与を支払う場合には、『青色事業専従者給与に関する届出書』を提出します。
また、家族以外の方に給与を支払う場合にも、『給与支払事務所等の開設届出書』などの提出が必要です。
これは、所得税の源泉徴収を行います、ということを税務署にお伝えする書類です。
なお、源泉徴収したら、原則的に毎月、税務署に納付しなければなりません。
ただし、常時10人未満の従業員に給与を支払っているような小規模事業者は、この納付を年2回にすることができます。
そのための書類が、『源泉所得税の納期の特例に関する申請書』です。
[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続 http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/13_14.pdf
[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/2801h009.pdf
[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請 http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm
その他の届出書
初年度に多額の初期投資がある場合で消費税の還付を受けたい方など、開業初年度から消費税の納税義務者になる場合には、届出書を提出することで消費税の納税義務者となります。
また、棚卸資産の計算方法や、減価償却資産の償却方法などを、原則とは異なる方法で計算したい場合には、その旨の届出書を提出することになります。
これらに該当する場合には、基本的には税理士などの専門家に相談していただいた方が良いでしょう。
社会保険関係の手続き
個人事業を開業して、人を雇うときは、次のような手続きが必要となります。
この他に就業規則などの作成も必要ですし、ケースによって必要な手続きは異なりますので詳細は社会保険労務士などにご相談頂いたほうが良いですが、ここでは主な手続き書類だけご紹介しておきます。
ひとつひとつ、簡単にご説明します。
労働保険関係
従業員を雇用したら、労働保険への加入が必要です。
開業時から雇用する予定がある場合には、開業後10日以内に、労働基準監督署に届出を出します。
また、これと合わせて、労働保険概算保険料申告書を作成し、向こう1年間の労働保険料を概算で支払います。
用紙は労働基準監督署で入手できます。
雇用保険関係
労働保険への加入が済んだら、次はハローワークへの手続きです。
こちらでは、雇用保険に加入することになります。
自分の事業が、雇用保険が適用される事業所であることを届け出る書類と、実際に雇った従業員を雇用保険に加入させる手続きが必要です。
こちらも、用紙はハローワークで入手することができます。
社会保険関係
個人事業の場合は、全ての事業所が社会保険(厚生年金)に加入するわけではありません。
適用業種に該当する事業を営んでいる方が、5人以上の従業員を雇った場合には、社会保険に加入する義務があります(強制適用)。
なお、適用業種でも従業員が5人未満の場合や、適用業種に該当しない事業を営む方でも、一定の手続きをすれば社会保険に加入できます(任意適用)。
詳細は社会保険労務士や税理士などにご相談ください。
その他
許認可
事業の内容によっては、それぞれの官庁に許可や届出が必要な場合があります。
飲食業や中古品販売業など、許可が必要なものは審査に時間が掛かる場合があります。
場合によっては事業のスタートが遅れてしまう可能性もあるので、事前にきちんと確認しておきましょう。
許認可が必要となる主な事業は、以下の通りです。
ご不安な方は、行政書士や商工会にご相談ください。
(手続きの代行が必要な方には、行政書士をご紹介します)
事業用の銀行口座の作成
個人事業を開始したら、事業用の銀行口座をひとつご用意いただき、仕事関連のお金の出し入れは一元化することをお勧めします。
(できれば、クレジットカードも、1枚事業専用にすることをお勧めします)
個人事業の場合、特に屋号を付けて振込をしないようであれば、個人口座をビジネス用に利用することも可能です。
銀行の各種手数料は、個人口座の方が安く設定されています。
もし特別な取引(総合振込や振替予約など)をする予定がないのであれば、個人口座として開設するのでも良いかと思います。
ご参考までに、法人用(ビジネス用)の銀行口座についてまとめたものをご紹介します。 個人事業主は法人口座を利用できない銀行もありますので、ご利用の金融機関にご確認ください。
手続きの際の注意事項
・住所地や本店所在地ごとに、手続きを行う窓口となる官庁が決められています。事前にどこの官庁に手続きを行うのかを確認する必要があります。
・それぞれの手続きには、提出期限が決められています。期限を過ぎると適用を受けられないものもありますので、必ず期限内に提出するようにします。
・手続きの中には、届出書や申請書のほかに、定款や謄本などの添付書類が必要となるものがあります。
・提出用とは別に、控え用として全く同じものを1部用意しておきます。
・都道府県税事務所や市区町村への提出は忘れがちですので、税務署に提出する書類とまとめて作成する必要があります。
・提出は郵送で行うこともできますし、インターネットで手続きできるものもあります。
さいごに
個人事業の開始前後には、上記手続きに加えて、各種ビジネス環境を整える必要があります。
次回以降で、法人の設立手続きと、関連するビジネス環境の整備についてご紹介致します。
実印やホームページの作成、電話回線など、個人事業でも必要になる各種ツールについてご案内しますので、ご興味あればご一読ください。