来年の確定申告に向けて①(概要編〜主な節税対策〜)
今回から、来年の確定申告に向けたお話を書いていこうと思います。
気が早いと思われるかもしれませんが、実は節税対策の中には、年の初めに準備を始めないと間に合わないものもあります。
節税対策は、知っているかどうかで、支払う税金が変わってきます。
もう既に今年の確定申告を済ませた方だけでなく、まだこれから手を付けるという方も、ぜひ一度目を通してみて下さい。 毎年2月16日〜3月15日は、確定申告の受付期間となります。
今年の確定申告(平成28年分)は、平成29年2月16日(木)〜同3月15日(水)ですので、既に始まっています。
確定申告書の提出期限・納付期限ともに3月15日(水)となっています。 まだ手を付けていない方は、急いで取り掛かって下さい。
来年の確定申告に向けて①(概要編〜主な節税対策〜)
来年の確定申告で節税するためにやっておくべきこと
ご自分で確定申告をされている方は、税金の本やインターネットを調べて、節税対策について色々と勉強されていることと思います。
私たちプロの目から見ても、よく勉強されている方とそうでない方は、少しお話すれば分かります。
節税するためには、正しい知識と、事前の準備・検討が不可欠です。
まず今回は、来年の確定申告に向けて、個人事業主の方が考えるべき主な節税対策をご紹介します。
個々の詳しい内容については次回以降にもう少しご説明しますが、まずは概要だけ確認してみてください。
青色申告をする
青色申告のメリット
青色申告は、個人事業主が確定申告する際の、基本中の基本です。
ただ、「青色申告」については、名前は聞いたことがあっても、具体的にどんなメリットがあるのかご存知ない方が意外と多くいらっしゃるようですので、簡単にご説明しておきます。
青色申告のメリットはいくつかありますが、最も大きなものが、「青色申告特別控除」というものです。
個人事業主やフリーランスの方は、青色申告の要件に沿った帳簿等を作成するだけで、65万円の特別控除を受けることができます。
これは、税金にすると約10万円以上の節税効果があります。
青色申告を行うと、特別控除以外にも幾つかの特典があります。
詳細は次回ご説明しますが、とりあえず代表的なメリットをご紹介しておきます。
・最大で65万円の経費を認めてもらえる(青色申告特別控除)
・家族への給与を経費として認めてもらえる(青色事業専従者給与)
・赤字になった時に、翌年以降に繰り越せる(純損失の繰越控除)
・30万円未満の固定資産を一括で費用処理できる
逆に青色申告をすることのデメリットは、「帳簿付けが大変」ということです。
簿記を勉強したことがある方なら、ある程度は自分でもできるかと思います。
ただ、数字や計算が苦手という方にとって、日々の帳簿付けは何とかできても、決算をしたり、損益計算書や貸借対照表を作成するのは少し難しく感じるかもしれません。
確定申告ソフトを購入しなければなりませんし、ある程度の時間を記帳や確定申告のために割かなければいけません。
それでも、先ほど上げたメリット(節税効果)は大きいので、個人事業主の方は青色申告すべきです。
青色申告をするなら3月15日までに申請を
青色申告を行うためには、事前に税務署に申請しなければなりません。
平成29年分から青色申告を開始したい方は、前の年の確定申告書の提出期限、つまり平成29年3月15日までに申請書を提出する必要があります。
(これから提出する平成28年分については、今からでは間に合いませんのでご了承下さい)
なお、平成29年1月16日以降に事業を開始した方は、事業開始後2ヶ月以内に申請書を提出すれば、青色申告を行うことができます。
青色申告の個別のメリットやデメリットなどについては、次回もう少し詳しくご説明します。
→来年の確定申告に向けて②(青色申告の基礎)
家族に給料を支払って節税する
飲食店などの店舗を営んでいる方は、ご家族総出で家業を手伝っていることが多いと思います。
専業主婦だけど、夫の事業の帳簿付けや雑用を手伝っている、という方もいらっしゃるでしょう。
通常、同一家計内の家族(同居してひとつの財布で生活していたり、仕送りをしている家族など)に給与を支払っても、事業の経費としては認めてもらえません。
しかし、実際に家業を手伝っているのに、全く給料を認めてもらえないというのは酷ですので、一定の要件を満たせば、家族へのお給料も経費として認めてもらえます。
まず白色申告の場合は、年間50万円(配偶者の場合は86万円)の給料相当額を、事業主として申告する方の所得から控除することができます。
さらに青色申告の場合は、「事前に届出を出すこと」「届出の上限内で支払うこと」などの要件を満たせば、ルール上は上限なく経費にできます。
これを「青色事業専従者給与」と言います。
例えば、今まで配偶者控除を取っていた妻に、年間100万円程度の給料を支払うだけでも、家計全体で10万円前後の節税になる可能性があります。
届出が必要
青色事業専従者給与は、事前の届出が必要です。
もし、今年の1月から給料を支払うのであれば、原則は3月15日までに届出書を提出しなければなりません。
届出書の提出前に支払ったとしても、その分は経費として認められません。
もし年の初めから給料を支払いたいなら、今のうちに提出すべきかどうか検討する必要があります。
そのためにも、1年分の所得(収入や経費を見込んで、1年分の儲けを予測する)を試算して、いくらくらいが妥当かをあらかじめ決めておくことになります。
こちらについても、次回もう少し詳しくご説明したいと思います。
→来年の確定申告に向けて②(青色申告の基礎)
退職金や保険で節税する
会社員であれば、退職する時は通常、会社から退職金を受け取ることができます。
また、会社員は厚生年金に加入できますので、国民年金よりも将来受け取る年金が多くなります。
一方で個人事業主には、退職金の制度はありませんし、年金も基本的には国民年金に加入することになります。
公的年金制度は「2階建て年金」と言われますが、1階部分が基礎年金である国民年金で、その上乗せとして2階部分の厚生年金があります。
ちなみに現時点で、20歳から60歳までの40年間保険料を支払った場合、受け取れる年金は年額で80万円弱となります。
そこで、個人事業主の方が将来の不安を解消するための方法として、次のような制度が用意されています。
それぞれ特徴が少しずつ異なりますが、いずれも将来への準備をしつつ、節税対策ができるので、とても人気のある制度です。
・小規模企業共済
・経営セーフティ共済
・個人型確定拠出年金
・国民年金基金
これらの制度への加入は任意ですが、支払った掛金が経費(または所得控除)として認められるため、毎年の税金が安くなります。
また、受け取る際にも退職所得や公的年金として、税金の計算上、優遇されることになるため、節税効果はとても高い制度になります(一部を除く)。
さらに、掛金をある程度自由に決められるため、最初は多めに支払っておいて途中で減額したり、1年分を前払いする、というようにご自身の経営状況に合わせた支払方法を選ぶことができます。
小規模企業共済などの詳しいお話については、こちらでご説明します。
→来年の確定申告に向けて③(退職金や保険で節税する)
法人成りの検討
ビジネスは個人でも法人でもできますが、個人事業としてスタートして、ある程度ビジネスの規模が大きくなると、法人化した方が良いと一般的に言われています。
これを、「個人事業の法人成り」と言います。
何となく「法人化」した方が良さそうな気がするものの、法人にすることのメリットやデメリットが分からないという方や、自分の事業にとってどちらが合っているのか、いつ法人成りするのが良いのか、判断が難しいところです。
一般的に法人化するタイミングとしては、次の場合が考えられます。
・事業が安定して来て、所得が一定額を超えてきたとき
・売上が1000万円を超えて、消費税の申告が必要となるとき
税金だけの観点からすれば、法人にした方がトータルで支払う税金は安くなることが多いです。
法人の場合は、どんなに所得が大きくても、現段階で所得に対して20%〜30%程度の税負担です。
その一方で個人の場合、所得が大きいと最高で56%もの税率が掛かってきます。
あまりにも規模が大きくなれば、法人成りした方がメリットはあるかもしれません。
その他にも、法人化した方がビジネスとしての信用力が上がりますし、親族への給料など節税策が個人事業よりもやりやすかったり、といった利点もあります。
ただその一方で、法人化のデメリットもあります。
例えば、
・赤字でも払わなければならない税金がある
・設立時や運営にあたって費用が掛かる
・社会保険に加入する義務がある(メリットの場合もあります)
法人成りの検討をするのも、年末や年が明けてからでは遅すぎます。
遅くとも昨年の決算が終わってすぐのタイミングで、次の方針を決めた方が良いと思います。
法人成りについては、こちらの記事でもう少し詳しく解説します。
→来年の確定申告に向けて④(法人成りを検討する)
その他の節税対策
上記以外にも、できることはまだまだあります。
経費を増やす
当たり前かもしれませんが、経費を増やせば、税金は安くなります。
しかし、ここで言う「経費を増やす」というのは、ただ単に「たくさん経費を使いましょう」という意味ではありません。
今まで経費にできると知らずに入れていなかった支出を、できるだけ経費として計上することです。
最も手っ取り早いのが、事業とプライベートの境目が微妙な支出について、一定部分を事業の経費として計上できないか検討することになります。
多くの方が悩むのが、自宅兼事務所の場合の家賃や水道光熱費、通信費だったり、火災保険料や固定資産税、自動車の減価償却費、ガソリン代、各種交際費や旅費交通費などです。
これらのうち、少しでも事業に関連のある支出があれば、事業の経費に入れられないか検討する価値はあると思います。
こちらの記事も参考にしてみてください。
→【確定申告スタートダッシュ④】家事按分の基礎
生命保険などの見直しをする
生命保険や地震保険は、確定申告の際に、所得金額から一定額を控除することができます。
例えば生命保険であれば、支払う保険料と所得控除額の関係は次の通りとなります。
上記の通り、所得控除の限度額は、
①一般の生命保険、
②個人年金、
③介護医療保険
の3種類の合計で120,000円となっています。
それぞれ個別の限度額は40,000円です。
限度額である40,000円の控除を受けられるのは、1年間に80,000円超の保険料を支払った場合ですので、保険料が年額100,000円でも、150,000円でも、控除できる金額は一律40,000円となります。
保険はあくまでも将来の突発的な支出や生活費のために備えるものですので、まず第一に必要とする金額や保障、毎月負担できる金額を考慮してプランを決めるべきではあります。
ただ、もし見直しをする必要があるのであれば、税金上、最も控除額が大きくなるような加入の仕方を検討しても良いかもしれません。
消費税の有利な計算方法で節税する
消費税の申告は、売上に係る消費税から、経費に係る消費税を差し引いた残りを、国に納付することになります。
例えば、108円(消費税8円)の商品を仕入れてきて、324円(消費税24円)で売れば、差額の消費税相当である16円を国に納付します。
これは原則的な方法ですが、個人事業などの中小規模事業者に対しては、簡便的な計算方法が認められています。
「簡易課税」と呼ばれる方法で、例えば小売業であれば、80%の「みなし仕入率」というものを使って、実際に支払った金額に関係なく、消費税を計算できるようになります。
そうすると、例えば利益率(粗利ではなく、最終的な利益)が約30%の小売業であれば、納める消費税の金額は次のようになります。
※説明のため、簡便的に計算しています。
上記の通り、計算方法を変えるだけで、納税額に大きな違いが生じてきてしまいます。
この方法を採用する前に、まずは現在及び将来の事業の状況をシミュレーションが必要になります。
その上で、この方法で計算しようとする年の前年12月31日までに届出書を提出しなくてはなりません。
また、一度この方法を採用すると、2年間は継続しなければならないというルールになっています。
定期的に帳簿を付ける
帳簿をつけることが節税対策?と思われるかもしれません。
もちろん、青色申告をするのであれば帳簿付けは必須ですが、効果的に節税対策をするためには、1年が終わってからではなく、定期的に帳簿付けすることがとても重要です。 キチンと帳簿を付けておくことで、「今年の前半は例外的に売上が大きくなったけど、後半は減りそうだ」ですとか、「今年は利益が少ないけど、このままいけば来年は増えるだろう」といった見込みが立てられれば、効果的に節税対策を行うことが可能です。
また、先程の「法人成り」の検討も、常に帳簿を付けて経営状況をチェックすることで、いつ法人化するのが良いのか判断することができます。
この項目で取り上げた節税策についても、後日もう少し詳しくご説明します。
→来年の確定申告に向けて⑤(その他の節税対策)
さいごに
まだ今年の確定申告が終わっていない段階では、来年のことを考える気にはならないかもしれません。
ただ今回ご説明したように、このタイミングで検討しないと適用を受けられないものもありますので、注意が必要です。
場合によっては10万円以上も支払う税金が変わってくるケースがあります。
弊社では、それぞれの状況に応じた節税相談も随時お引き受けしています。
早めに今年の確定申告を済ませて、来年の節税対策を検討されることをお勧めします。
次回は、青色申告について、もう少し詳しくご説明していきます。
<次回以降の更新予定>
「来年の確定申告に向けて」
来年の確定申告に向けて①(概要編〜主な節税対策〜) ←今回の記事です
来年の確定申告に向けて②(青色申告の基礎)
来年の確定申告に向けて③(退職金や保険で節税する)
来年の確定申告に向けて④(法人成りを検討する)
来年の確定申告に向けて⑤(その他の節税対策)
今年の確定申告でもできる節税方法
確定申告受付中
当事務所では、確定申告のお申込み受付を開始しています。
お早めにお申込み頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。
サービス内容や料金についてご不明な点等ございましたら、ご遠慮無くお問い合わせください。