起業するなら知っておきたい合同会社のメリット・デメリット【起業の基礎】

【起業の基礎】起業するなら知っておきたい合同会社のメリット・デメリット

  前回に引き続き、今回は合同会社を設立する前に知っておくべき、合同会社形態のメリット・デメリットをご紹介します。 前回の記事はこちら →【起業の基礎】株式会社と合同会社の違い  

【起業の基礎】起業するなら知っておきたい合同会社のメリット・デメリット

合同会社とは?

合同会社とは、平成18年に誕生した新しい会社形態で、日本版LLCとして導入時は非常に注目されました。
LLCとは、米国では多くの会社が採用している組織形態で、Limited Liability Companyの略称です。
米国では、いわゆるパススルー課税(会社自体に税金が掛かるのではなく、その構成員である出資者等に課税される制度)が選択できるのですが、日本では認められなかったため、当初の期待に比べて合同会社の旨味が薄れてしまいました。

それでも最近では、設立費用の安さと、設立後の運営の手軽さと維持費用の安さから、年々、起業に当たって合同会社を選ぶケースが増えてきました。
合同会社には、株式会社にはないメリットもありますが、人によってはデメリットが大きいと感じるかもしれません。
もし以下に掲げるデメリットが問題にならないようであれば、起業する際に合同会社を選んでも良いかと思います。  

合同会社の概要

合同会社の特徴

まずは、一般的に言われている合同会社の特徴を挙げてみます。

・出資者を「社員」と言う
・社員は原則として「業務執行社員」となり、経営を行うことができる
・業務執行社員(役員)には任期の定めがない
・会社の意思決定は社員全員で決める(社員総会)
・取締役や監査役などの機関がない
・決算公告の義務がない
・法人が業務執行社員になることができる(職務執行者を定める)
・基本的に上場できない(株式会社への組織変更が必要)
・出資金額にかかわらず、利益の分配割合を決めることができる など  

設立件数

合同会社の新規設立件数は年々増加しており、平成27年には年間20,000件を超えました。
ここ数年、新規法人の設立に占める合同会社の割合が増えてきており、現在は約20%の新設法人が合同会社となっています。  

有名な合同会社

アップルジャパン合同会社
合同会社西友
アマゾンジャパン合同会社
ユニバーサル ミュージック合同会社
面白いところでは、アイドルユニットの乃木坂46も合同会社形態で運営しているようです。  

合同会社のメリット

上記を踏まえて、合同会社のメリットと考えられるのは、次の通りになります。  

諸々のコストが安い

設立費用は、株式会社よりも10数万円安くなっています。
さらに、役員の任期の定めがないため、役員変更に係る登記費用が不要です。
(株式会社の場合、取締役の任期は最長10年で、変更の都度、役員変更登記が必要です)

また、株主総会や取締役会などがないため、これらに係る議事録などの作成も不要となります。

すなわち、設立や維持に係るコストや手間が少ない、というメリットがあります。  

 

共同経営がしやすい

出資者は、出資金額にかかわらず、それぞれが平等な発言権を有しています。
そのため、共同経営がしやすいというメリットがあります。

また、利益を分配する際も、株式会社のように出資比率で配当が自動的に決まるのではなく、出資金額とは無関係に利益の分配割合を決めることもできます。

従って、一時期流行った大学ベンチャーのように、資金の出資者と技術者が同等の発言権、同等の利益分配を受けられるような組織体制を作ることも可能です。 ただし、これには逆にデメリットもあります(後述)。  

 

経営の自由度が高く、スピーディな意思決定が可能

定款などの設定を自由に決めることができ、さらに設立後の維持・運営に掛かるコストや手間が少ない分、自由に経営を行うことができます。
また、取締役会や株主総会の開催が不要であれば、意思決定もスピーディにできます。
そのため、特に大企業の子会社や、外国法人の日本子会社として、合同会社形態が選ばれることが多くなっています。

 

合同会社のデメリット

知名度が低い

圧倒的なデメリットとしては、合同会社という組織自体の知名度が低いことにあります。

対会社のビジネス(BtoB)では、株式会社としてビジネスをするのが一般的かと思います。
組織形態(株式会社か合同会社か)はあくまでイメージでしかありませんが、第一印象は割と重要だったりします。

また、同じことが人材を募集する際にも言えます。
合同会社からの求人広告が出ていた場合に、応募する側からすると、合同会社というのは小規模なビジネスなのではないか?との先入観が入ってしまうかもしれません。

 

上場できない

合同会社は株式形態ではないため、上場をすることができません。

従って、将来規模を大きくしようとしている場合や、外部からの資金調達を考えている場合には、最初から株式会社を選択しておいたほうが良いでしょう。  

 

社員間での意見対立が生じたときに大変

合同会社は、株主総会や取締役会、監査役などの機関(会社内の組織)が無い分、自由度の高い経営を行うことができます。
出資者である社員がそれぞれ経営を行うため、複数の社員がいる場合、それぞれの意見は対等に扱われることになりますが、意見が一致しているときにはスピーディに経営方針を決めたり、変更したりすることが可能です。

また、先述の通り、出資金額にかかわらず利益の配分方法を自由に決めることも可能です。
ただしその裏返しとして、もし意見対立が生じてしまった場合には、会社の方針が全く決まらないことになってしまいます。  

 

合同会社が向いている事業

会社名があまり関係ない事業

「合同会社」という組織形態の知名度が低いため、大会社ならともかく、対企業向け(特に中小企業向け)で新規の取引をする場合は、合同会社であることが不利に働く可能性も否定できません。

しかし、ビジネスの形態として、主にBtoC(一般消費者向け)の商売をする方は、合同会社でも全く問題がありません。

例えば、カフェやレストランなどの飲食店、雑貨などの小売店などは、合同会社でも問題ないと思います。  

 

個人または家族で経営している事業

社長一人で商売をしている場合(法人成りなど)や、近い親族だけで経営している事業で、それぞれの利害関係に対立が生じる要素が薄い場合であれば、合同会社でも問題ないと思われます。  

 

維持費用をできるだけ小さくしたい企業

設立費用が安く、設立後の維持費用(役員変更登記や株主総会議事録の作成など)もほとんど掛からないため、会社形態でビジネスをしたいけど維持費用は掛けたくないという、法人成りや定年退職後の方、主婦の方などが起業する際にも最適です。

また、資産管理会社など、法人格さえあれば良いという企業も合同会社で良いでしょう。  

 

上場まで視野に入れていない企業

先述の通り、合同会社では上場できませんので、そこまで規模を大きくする予定が全くないのであれば、合同会社でも結構です。

 

大企業や外資系企業の子会社

合同会社の場合、法人も業務執行社員となり、代表社員になることができます。
合同会社には、株主総会や取締役会・監査役などの機関が不要ですので、意思決定を迅速に行うことが可能です。

また、維持費用も安いため、子会社として運営するには最適の形態とも言えます。
特に米国系企業の子会社には、もともと株式会社形態だったものを合同会社に組織変更するパターンが増えています。
これには上記以外の別の理由もあるのですが、ここでは敢えて割愛します。  

 

さいごに

今回は、起業をするなら知っておきたい合同会社のメリット・デメリットについてご説明しました。
会社の設立登記をする際には、司法書士などの専門家にきちんと相談する必要がありますが、まずは基礎知識として会社形態について把握しておくと良いと思います。  

 

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