【起業を考えている方へ】開業するまでの流れを解説します
職業柄、独立開業をしたい方や、起業を考えている方からのご相談が多くあります。
個人事業のような規模のものから、会社を作って大きくしたいと考えている方まで様々ですが、十分な準備をしないで事業を始めてしまうような方が少なからずいらっしゃいます。
世の中には「勢いで独立して成功した」という方もいらっしゃるでしょうが、それは結果論です。
逆に準備不足で開業後に大変な思いをしたり、最悪の場合は事業を畳んでしまうケースの方が圧倒的に多いのが実態です。
そこで今回から数回にわたって、起業を考えている方に向けて、開業前に知っておくべき基本的な事項をお伝えしていこうと思います。
「起業したいが何から手を付けたら良いか分からない」という方は、ぜひ目を通してみて下さい。
また、既に開業してしまった方や、創業して間もない方にも、ご一読頂ければと思います。
【起業を考えている方へ】開業するまでの流れ
開業までの流れ
一般的に、起業を考え始めてから実際に開業するまでは、次のようなステップで進めていくことになります。
最初のステップは、開業する1年くらい前〜遅くとも3ヶ月前までには考え始めておいたほうが良いでしょう。
それぞれのステップについて、以下概要をご説明していきます。
<STEP 0>本当に起業すべきか考える
このブログをご覧いただいている方の中には、起業するつもりで準備を進めている方や、既に開業されている方もいらっしゃるでしょうが、まだ起業するかどうか迷っていらっしゃる方もいるかもしれません。
私個人としては、起業の準備を始める前に、「本当に起業すべきかどうか」迷うことはとても大事だと思っています。
起業すれば誰にも縛られることなく自分でやりたいことができますし、時間も自由に使えます。
自分の働きで稼いだお金は(基本的に)自分のものですから、同じ仕事をしても、会社員として働いていたときよりも多くのお金を手に入れられる可能性もあります。
その一方で、起業は「たぶん何とかなるだろう」とか「とにかくやってみよう」という軽い気持ちでうまくいくものではありません。
会社員であれば毎月安定した収入が保障されていますが、独立したら自分で収入の全てを稼ぎ出さなければなりません。
また、最初はうまくいったとしても、将来にわたって順調に収入が入ってくるとは限りません。
このブログを始めたばかりの頃、
「独立開業する前に、もう一度立ち止まって考えてみましょう」
といった内容のことを書いたことがあります。
独立したら、どんな仕事であれ、確実に収入が減る時期があることを覚悟しなければいけません。
十分な収入がない期間、生活費のために貯金を切り崩していくことになります。
また、開業準備の資金として、今まで貯めてきたお金を使わざるをえないと思います。
本当に厳しいときは借入金でまかなう方法もありますが、その場合でも、毎月の返済と利息はかかります。
自分が実現したいことを形にするためには、十分な覚悟が必要です。
覚悟があれば、辛い時期があっても乗り越えられます。
自分に本当に覚悟があるのかどうか、起業の準備を始める前にしっかり悩んで考えることが大切だと思います。
<STEP 1>組織の形態を決める
「個人」か「法人」か?
最初からネガティブな部分から入ってしまいましたが、本気で事業をやりたいと考えている方は、以下の起業のステップに沿って準備を進めていきます。
まず最初は、どのような形態で起業するか、です。
起業の形態には、大きく分けて「個人事業」か「法人」かの2種類があります。
「個人事業」の場合は、法人に比べて起業の手続きが簡単で、起業した後も事業運営が比較的ラクですが、会社に比べると信用が低いのと、社会保険や税金の面で若干法人よりも不利になるケースがあります。
「法人」は、会社を作って起業する方法です。
設立手続きと、起業後の経理などが面倒ですが、取引先や銀行に対しての信用度は高くなります。
法人にも何種類かあり、主にこれから起業される方であれば、「株式会社」か「合同会社」を選ぶことになると思います。
それぞれの特徴をきちんと理解して、どちらの形態で起業するのかをまずは考えてみて下さい。
このタイミングで決める必要はある?
組織形態を決めるのは、次のビジネスプランなどを考えた後でも良いのでは?と思われるかもしれません。
敢えてこのタイミングで「個人」か「法人」かを考えるのは、自分が起業によってどの規模で事業を行いたいのかを最初に考えた方が良いからです。
人を何人も雇って将来的には規模を大きくしたいのか?
それとも、こじんまりとした商売をした方が自分には合っているのか?
一般的なビジネスであれば信用が必要になるので会社形態の方が良いですが、カフェなどの飲食店であれば個人事業でも良いかもしれません。
ビジネスの形態によって、税金や社会保険にも大きな違いが出てきます。
できればこの段階から、専門家に相談してアドバイスをもらうことをお勧めします。
なお、次のステップの「ビジネスプラン」を考えた結果、最初に決めた形態を変更しても問題ありません。
ただ、それぞれの特徴については、ビジネスプランを考える前にある程度頭に入れておいたほうが良いと思います。
個人事業と法人の違いについては、次回以降に改めて、もう少し詳しくご説明したいと思います。
<STEP 2>ビジネスプランを考える
起業の方向性がある程度固まったら、次にビジネスプランを考えます。
これは、どのようなビジネスを行っていくのか、自分の頭の中で漠然と考えていることを具体化する作業です。
このステップを飛ばしてしまうと、次のステップである「事業計画」が作れませんし、開業後にビジネスを拡大する際や、行き詰った際など、次の手を打つときに何をすれば良いか判断に迷うことになってしまいます。
具体的には、次のようなことを明確にしていきます。
「誰に」
自分のビジネスがターゲットとする顧客層をイメージします。
「どんな商品・サービスを」
自分がこれから売っていこうとする商品や、自分が提供できるサービスの内容を具体的に考えます。
「どうやって提供するか」
店舗であればそのイメージ、ビジネスであればオフィスなのかネット取引なのか。
高級路線か低価格か、といった料金設定も必要です。
さらに上記に加えて、次のような点も考えておきます。
「自分がそのビジネスをすることの強みは何か」
自分の商品やサービスがなぜ良いのか、お客様に買ってもらったりお金を払ってもらう価値があるのか、といったことを考えます。
「ライバルは誰で、他社はどんなことをしているか」
いわゆるマーケティングを行います。実際にライバル店を視察するでも良いですし、インターネットや本で調べるのでも良いと思います。
自分がビジネスを行おうとしている市場(しじょう)の分析は必須です。
「なぜ自分がこのビジネスをやるのか」
自分の強みと、ライバルの分析を踏まえて、それでも自分がビジネスを行うのであれば「理念」が必要です。
それほど難しく考える必要はないですが、誰かに聞かれた時にぱっと答えられるような「ビジネスの志」を考えておくと、これから先のビジネスに軸が入ります。
なお、ビジネスの内容が決まったら、許認可が必要か調べておく必要があります。
飲食業や中古品販売業など、許可が必要なものは審査に時間が掛かる場合があります。
場合によっては事業のスタートが遅れてしまう可能性もあるので、事前にきちんと確認しておきましょう。
<STEP 3>事業計画を作る
ステップ2で考えたイメージを、具体的な計画に落とし込んでいきます。
どんなに素晴らしいイメージができ上がっていても、今の段階ではまだ絵に描いた餅ですから、これを実現可能な計画になるよう数値で検討します。
・1年間でどれだけの売上が上がるのか、そのためには1ヶ月または1日当たりどれくらいの売上が必要か
・売上を上げるための原価やコストはどれくらい掛かるのか
・事業を行うために必要な固定費(オフィス賃借料や備品、人件費、水道光熱費など)はどれくらい掛かるか
・開業資金はどれくらい必要で、どうやって工面するか
これらを、客観的に、現実的な眼で考えます。
「これくらい売れたらいいな」という楽観的な希望だけでなく、最悪のケースも考えておく必要があります。
最初は、ラフなものからでも結構です。
ただ、金融機関からお金を借りたり、補助金を申請しようとする場合には、しっかりした事業計画を作る必要があります。
その場合は、税理士などの専門家に依頼することになります。
何らかのフォームがあった方が計画しやすければ、税理士や専門家に相談してみて下さい。
もし自分で作るのであれば、例えば日本政策金融公庫の借入時に使用する、次のような創業計画書に記入してみるというのも、一つの方法です。
https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyou00_150401b.pdf
<STEP 4>開業資金を検討する
開業前に考えておくべき「3つの資金」
事業計画を立てたら、次に考えるのが資金の問題です。
まず最初に必要となるのが、「開業資金」になります。
店舗やオフィスを借りたり、内外装の工事をしたり、備品を購入したり・・・と初期投資にかなりの金額が必要になります。
また、会社の設立や、事業によっては許認可の際に一定の資本金が必要になるケースもあります。
開業に当たって、どれくらいの資金が必要なのかをきちんと調べておきましょう。
開業資金が準備できたら、次に「運転資金」を考えます。
開業当初は、売上がほぼゼロの期間が続くかもしれません。
それでも、家賃や水道光熱費などの固定費は出ていってしまいますし、人を雇っていれば人件費も払わなければなりません。
最低でも半年間、できれば1年〜2年分の固定費を賄えるだけの資金があると安心です。
さらに忘れてはいけないのが、自分の「生活費」です。
ある程度軌道に乗って、固定費をまかなえるだけの売上が立ったとしても、すぐに利益が出るとは限りません。
経営者の方の生活費は、基本的には利益から取っていくことになります。
利益が出るまでは、貯金を切り崩して生活していくことになるかもしれません。
自己資金が足りないときは
貯金だけでは「開業資金」「運転資金」「生活費」が足りないようであれば、借入をすることを考えないといけません。
借入先として最もポピュラーなのが、親族や親戚から借りるケースです。
親族から借りれなければ知人から借りても良いですが、一般的にトラブルになる場合が多いので、お勧めしません。
借りるあてがなければ、金融機関や自治体の融資制度を利用する方法があります。
一般的なのが、「地銀や信金などの金融機関」「市区町村などの自治体」「日本政策金融公庫(以前の「国金」)」です。
それぞれの融資プランによって、保証人が不要な場合や、金利が優遇されるものがあるなど、融資の条件や対象、審査基準などが異なります。
また、手続きが大変にはなりますが、国の補助金や助成金を受けることも検討すべきだと思います。
申請すれば必ず受給できるものではありませんが、基本的には返済不要ですので、受給できれば資金がとても楽になります。
金融機関などからの借入や、補助金・助成金の申請を検討するのであれば、自分ひとりでやるのは無理がありますので、専門家に依頼されることをお勧めします。
<STEP 5>開業に必要なものを用意する
仕事をするためのオフィスや、飲食店なら店舗の賃貸契約を行い、内装や外装の工事を依頼します。
電気・ガス・水道などの開通手続きや、インターネットや電話回線などの手続きも必要です。
また、オフィスや店舗の備品を購入したり、宣伝のためにチラシやホームページを作成したりします。
この辺りから、ようやく開業が現実的なものになってきます。
忘れがちなのが、請求書や領収書、名刺や封筒などのペーパーツールです。
最近では、ネットだけで格安・手軽に注文できるサービスが増えてきました。
私自身も、請求書類は「misoca」というネットサービス、名刺などのペーパー類は「ラクスル」を使っています。
【初期費用0円!月額利用料0円!】クラウド請求書・見積書・納品書管理サービス Misoca(みそか)
準備することは割と楽しいですが、意外と手間と時間が掛かるものですから、事前にやることをリストアップして、やり忘れがないかチェックするようにしましょう。
<STEP 6>開業手続きをする
ここまで来たら、あとは開業手続きだけです。
会社であれば公証人や法務局への会社設立の手続き、税務署や自治体への開業届、社会保険関係の手続きを行います。
個人の方は、税務署や自治体への開業届を出せば基本的にはOKです。
許認可が必要な事業であれば、所轄官庁への手続きも必要です。
各種の手続きが済んだら、事業用の銀行口座も作っておきます。
最後に
長々とお読みいただき、ありがとうございました。
概要だけ、と思って書き始めたのですが、お伝えしたいことが多すぎて、結果的に長文になってしまいました。
図表やグラフもなく、読みづらくて申し訳ありません。
次回以降、上記それぞれのステップについて、もう少し詳しく解説していこうと考えています。
ご興味のある方は、引き続きご講読ください。
【起業を考えている方へ】開業するまでの流れを解説します ←今回の記事です
【起業を考えている方へ】<STEP1>「個人」か「法人」か
【起業を考えている方へ】<STEP2>ビジネスプランを考える
【起業を考えている方へ】<STEP3>事業計画を作る
【起業を考えている方へ】<STEP4>開業資金を検討する
【起業を考えている方へ】<STEP5>開業に必要なものを準備する
【起業を考えている方へ】<STEP6>開業手続きをする
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