今年の確定申告でも間に合う節税方法は?
前回まで数回にわたって、来年の確定申告に向けた節税対策についてご紹介してきました。
節税は、基本的には事前の対策が必要になりますので、年を越してしまってからでは間に合いません。
それでも、どうしても今回の申告で税金を安くしたいという方に向けて、今からでもできる節税方法のヒントをご紹介したいと思います。
今年の確定申告でもできる節税方法
年が明けてからでもできる節税方法とは?
前回までご紹介してきたとおり、基本的に節税対策というのは、遅くとも年末までに実施しないと間に合わないものばかりです。
きちんと事前に対策を立てていれば、年間で数万円〜数十万円単位での節税を行うことができます。
しかし今回ご紹介するのは、節税対策として何年も使えるものではありませんし、効果としてそれ程大きなものではありません。
それでも、
「今年は利益が出過ぎてしまったので、利益の繰り延べができないか?」
「何か入れ忘れているものはないか?」
「処理の仕方を変えたら節税できるようなものはないか?」 ・・・
といった観点で、皆さんが気付きにくい節税方法のヒントになればと思います。
脱税などの違法なものではありませんので、安心してご一読ください。
未払費用を計上する
12月31日までに購入したり、サービスを受けているにもかかわらず、お支払いが翌年にズレ込んでいるような経費もあるかもしれません。
青色申告をする場合には、原則的にこのような経費も、「未払費用」として計上しなければなりません。
「計上しなければなりません」と書きましたが、このような費用を入れることで、今年の税金を安くすることができます。
ご自分で確定申告をされる方は忘れがちな項目になるので、ぜひ漏れがないように拾い出してみて下さい。
具体的によくある未払費用としては、次のようなものが挙げられます。
・電気、ガス、水道などの公共料金
・固定電話や携帯電話、インターネット料金などの通信費
・月末締めの請求書など
サービスだけでなく、モノの購入であっても、実際に納品まで受けていて使用しているのであれば、購入日(支払日ではない)に費用計上できる余地があります。
これらの費用は、例えば翌年に届いた請求書や口座振替通知書などをもう一度点検したり、領収書等に記載された対象期間をチェックしてみてください。
入れていない経費がないか思い出す
今まで経費にできないと思い込んでいた支払いの中には、もしかすると必要経費に入れられるものもあるかもしれません。
家事関連費
事業とプライベートの境目が微妙な支出について、一定部分を事業の経費として計上することができます。
このような支出を、「家事関連費」と言います。
多くの方が悩むのが、自宅兼事務所の場合の家賃や水道光熱費、通信費だったり、火災保険料や固定資産税、自動車の減価償却費、ガソリン代、各種交際費や旅費交通費などです。
これらのうち、少しでも事業に関連のある支出があれば、事業の経費に入れられないか検討する価値はあると思います。
家事関連費を按分して必要経費に参入する場合には、「事業に関連する部分」と「プライベートな部分」を合理的に按分して、それを明確に説明できるようにしておかなければなりません。
領収書がない経費
領収書がないからと経費に入れるのを諦めてしまったものがあれば、それらをもう一度洗い出してみてください。
そもそも領収書をもらえないような支払いでも、次のようなものは経費に入れることができます。
例えば、
・公共交通機関を利用した際の交通費
・ご祝儀やお香典
・新年会や忘年会の参加費や、取引先と飲食して割り勘で払った場合 など
これらの支払いは領収書がもらえないことが多いですが、実際に事業に関連して支払ったものであれば、必要経費に算入することができます。
また、レシートでも十分に支払った証明になりますし、領収書を無くしてしまった場合の最後の手段として、出金伝票を作るという方法もあります(もちろん、実際に支払ったことが前提ですので、支払いを裏付けられるような資料を別途用意しておくことが必要です)。
こちらの記事も参考にしてみてください。
→【確定申告の基礎】領収書のギモン③~領収書をなくしたときの対処法~
扶養控除をもう一度見直す
配偶者特別控除を適用する
配偶者であれば、年間の所得金額が38万円(給与収入ベースで103万円)以下の場合に、配偶者控除を受けることができます。
見落としがちなのが、配偶者の年間所得が38万円を超える場合でも、年間の給与収入が141万円までは、「配偶者特別控除」を受けられるということです。
配偶者控除の金額は38万円ですが、配偶者特別控除の場合は、配偶者の収入に応じて3万円〜38万円の控除を受けることができます。
扶養の入れ忘れを確認する
また、扶養親族であれば、年間の所得金額が38万円(給与収入ベースで103万円)以下の場合に、扶養控除として38万円を所得から差し引くことができます。
なお、その扶養親族が19歳以上23歳未満の場合は63万円、70歳以上で同居していれば58万円、別居していても48万円の控除が受けられます。
扶養控除のポイントは、別居していても適用できることです。
例えば実家の親や、親元を離れて大学に行っている子どもに仕送りをしている場合、扶養親族として取り扱うことができる場合があります。
また同居している場合でも、その親族の収入によっては、扶養控除を受けられるかもしれません。
いずれにせよ、念のため改めて家族の状況を確認してみても良いかと思います。
家族の医療費や社会保険料をまとめる
もし同一生計内で生活している家族がいるようなら、その家族のために支払った医療費や社会保険料をまとめて控除することが可能です。
例えば、子供の国民年金を親が代わりに払っている場合や、親の社会保険料や医療費を払っている場合もあるかと思います。
このような場合には、その支払った人の確定申告でまとめて控除をすることができます。
さらに、薬局やドラッグストアで購入した市販薬やドリンク剤であっても、それが①治療・療養のために購入したものであり、②医薬品であれば、医療費控除の対象にできる可能性があります。
また忘れがちなのが、病院への通院のための交通費も医療費控除の対象になることです(ただし、不必要なタクシー代などは除かれます)。
市販薬などは領収書が必要ですが、通院のための交通費は領収書がないので、それぞれ集計して確定申告書に記載すればOKです。
なお、社会保険料で、本人の公的年金から天引きされていたり、本人の銀行口座から自動振替されているようなものについては、本人以外の確定申告に入れることはできません。
内職や副業をされている方が65万円控除を取る方法
内職や副業をされている方で、一定の方については、実際に支払った経費が65万円に満たない場合でも、65万円を限度として必要経費を認めてくれるという制度があります。
これを、「家内労働者の特例」といいます。
この制度は、次のような方が対象となります。
・在宅で下請けなどのお仕事をされている方
・特定の会社と契約してデザインやプログラミング、講師やモデル、マッサージなどのお仕事をされている方、
・シルバー人材センターでお仕事をされている方 など
詳細は、こちらの記事をご覧ください。
→【確定申告の基礎】内職や副業でも65万円控除が取れる方法
変動所得の特例
業種が限定されてしまいますが、年によって収入に波があるお仕事をされている方や、臨時の収入があった方のために、「平均課税の特例」という制度が用意されています。
この特例は、たまたま今年だけ収入が大きくなった場合に、通常よりも低い税率で税金を計算することができる制度です。
この制度の対象となる方は、次のような所得がある方です。
変動所得
・原稿や作曲の報酬による所得
・著作権の使用料による所得
・漁獲やのりの採取から生ずる所得 など
臨時所得
・不動産の貸付けによる権利金や頭金(3年以上の期間契約を結んだ場合に、その金額が年額の2倍以上のもの。ただし、譲渡所得に該当する場合を除く。)
・プロ野球選手などが受け取る契約金(3年以上の期間契約を結んだ場合の契約金で、それの金額が報酬年額の2倍以上のもの。)
・公共事業の施行などに伴い事業を休業や転業、廃業することにより、3年以上の期間分の事業の所得などの補償として受ける補償金の所得 など
詳細は、こちらの記事を御覧ください。
→【確定申告の基礎】作家やライター、ミュージシャンの方が使える平均課税の特例
さいごに
今回ご紹介した方法の中で、少しでもお役に立てるものがあれば嬉しいですが、ここまでお読みいただいて、正直なところ大した節税方法ではないな、と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、年が明けてしまうと、効果の高い節税方法というのは、ほとんどありません。
そのため、年が明けた早い段階から、事前にきちんとした対策が必要になってきます。
前回までにご紹介した内容を改めてご覧いただき、ぜひ来年の確定申告では十分な対策を取って頂ければと思います。
<関連記事>
「来年の確定申告に向けて」
来年の確定申告に向けて①(概要編〜主な節税対策〜)
来年の確定申告に向けて②(青色申告の基礎)
来年の確定申告に向けて③(退職金や保険で節税する)
来年の確定申告に向けて④(法人成りを検討する)
来年の確定申告に向けて⑤(その他の節税対策)
今年の確定申告でも間に合う節税方法は? ←今回の記事です
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