【国際取引の税務〜支払編⑧〜】支払先から租税条約の適用を受けたいと言われたら
海外との取引で支払いをする際に、租税条約を適用すれば源泉徴収が免除または税率が軽減されることは知ってはいたものの、相手方から租税条約の適用を受けたい旨の申し出がなく、租税条約届出書の提出も行っていなければ、原則通りの税率で源泉徴収を行うことになります。
しかし後日、既に支払いが済んだ取引について、相手先から租税条約の適用を受けたいとの申し出があったら、どうすれば良いでしょうか?
租税条約届出書は、支払いの後にでも提出することができ、既に源泉徴収して支払った税金の還付を受けることができます。
今回は、租税条約を適用しないで支払った取引について、後から租税条約を適用する場合の流れをご説明します。
【国際取引の税務〜支払編⑧〜】支払先から租税条約の適用を受けたいと言われたら
既に支払いが終わった取引について、後から租税条約届出書を提出できるか
まだ支払う前の段階で、相手方から「租税条約の適用を受けたい」との申し出があったのであれば、租税条約届出書などを急いで準備すれば、租税条約に基づく減免措置を受けることはできます。
【参考記事】租税条約による特例を受けるための手続き
しかし、一旦原則通りの税率で源泉徴収をして支払った後で、相手方から「租税条約の適用を受けたい」と言われた場合であっても、一定の書類を提出すれば軽減措置を受けることができ、既に納付した税額についても還付を受けることは可能です。
ただし、提出しなければならない書類が多くなってしまいます。
以下、手続きの概要を説明していきます。
源泉徴収後における租税条約適用と還付手続き
ケースの前提
今回のケースの前提を整理すると、次の通りとなります。
1.租税条約を適用せず、原則通り源泉徴収を行って、相手方に支払いをした
2.上記1の源泉税を、税務署に納付した
3.支払いが終わった後で、相手先から、租税条約の適用を受けたい旨の申し出があった
上記のようなケースであっても、後日所定の手続きを行うことにより、当初源泉徴収した税額と、租税条約の減免を受けた後の税額との差額について、税務署から還付を受けることができます。
誰が手続きを行うか
厳密に言うと、源泉徴収税額を負担しているのは、その支払いを受ける者になりますので、後から租税条約の適用を受けて源泉税の減免を受ける場合には、その支払いを受ける者(外国法人等)が還付請求を行うことになります。
ただし、実務上は、還付請求者(取引対価の支払いを受ける人)ではなく、源泉徴収義務者(取引対価を支払った者)が手続きを取ることも多いようです。
その場合は、源泉徴収義務者を「代理人」として、手続きを行います。
還付を受けるための手続き
還付手続きを行うためには、次の書類を税務署に提出します。
『租税条約に関する源泉徴収の還付請求書(様式11又は12)』 正副2部
『租税条約届出書』 正副2部
必要に応じて、『特典条項に関する付表』や『居住者証明書』など
【参考記事】租税条約による特例を受けるための手続き
源泉徴収義務者が代理で手続きを行う場合
上述の通り、この手続きは支払いを受ける者(外国法人等)の名義で行うことになりますが、源泉徴収義務者(支払いを行う者)が代理で手続きを行うこともできます。
その場合は、外国法人等による委任状と、その翻訳文を還付請求書に添付して提出することになります。
源泉徴収義務者の口座に還付してもらう場合
還付請求書には、還付金の受領場所(受取口座)を記載する欄があります。
(上に添付した請求書フォームの1枚目「2 還付請求金額に関する事項」(3)をご覧ください)
通常であれば、その支払いを受ける者(外国法人等)の口座を記載することになります。
ただし、もし源泉徴収義務者(支払いを行う者)の口座に一旦振り込んでもらい、源泉徴収義務者から外国法人等にその金額を送金することも可能です。
その場合は、請求書フォームに源泉徴収義務者の口座を記載した上で、外国法人等からの委任状と、その外国法人等のサイン証明書(日本で言う印鑑証明書の代わりとなるもの)及びこれらの翻訳文を合わせて提出することになります。
さいごに
租税条約に基づいて減免措置の適用を受けることができる場合には、届出書を提出するなどの適切な手続きを行わないと、結果的に上記の通り、後日面倒な手続きが必要になってしまいます。
できるだけ最初の支払の時点で、租税条約の適用を受けられるかどうか、また、相手方が租税条約の適用を受けるかどうかを確認することが必要です。
- 国際税務について相談できる税理士をお探しの方へ
- 私どもの事務所では、BIG4税理士法人において国内外のグローバル企業に対して国際税務に関するアドバイスを行ってきた税理士が、実務における豊富な経験を基に、貴社の国際税務に関するご相談に対応致します。
海外子会社との取引価格の決定(移転価格)や、グローバルの組織再編制を行っているような大企業であれば、いわゆるBIG4の税理士法人や、国際税務を専門としている大手の税理士法人にご相談頂くことをお勧めします。
ただ、中小企業を含む一般的な企業にとって、BIG4を含む大手の税理士法人の顧問報酬は非常に高額ですし、敷居が高く感じられると思います。
弊社では、次のようなお客様に大変ご満足頂いております。
・リーズナブルな料金で国際税務の相談ができる税理士を探しているお客様
・大手税理士法人に頼みたいが、顧問報酬が高額で躊躇しているお客様
・大企業の子会社で、親会社と同等の税務レベルを必要とされるお客様
・海外取引を開始したが、税務の検討や対策を行っていないお客様
・顧問税理士が国際税務について詳しくないので、スポットで国際税務の相談ができる税理士を探しているお客様スポットでのご相談もお受けしております。
国際取引に関する税務についてお困りの際には、ぜひお問い合わせください。
海外企業への支払いに関するテーマで、ブログを更新しています。
ご興味のあるテーマをぜひご講読ください。
(更新予定)
海外企業に支払いをする際に気をつけること
源泉徴収の要否を判定する(基本的な流れ)
源泉徴収しないとどうなるか
源泉徴収の手続き(租税条約の届出、納付方法、法定調書など)
海外企業に仕入れ代金を支払う場合
海外企業にロイヤルティを支払う場合
海外企業にソフトウェア開発の委託費を支払う場合 など
FacebookやTwitterで更新情報をお知らせしています。
ご興味がある方は、ぜひフォローをお願い致します。
現時点で作成済みの国際税務関連の記事は、随時こちらのページにまとめていきます。
→国際税務に関するご相談