海外の会社に機械のリース料を支払う場合【国際取引の税務~支払編・事例⑤~】

【国際取引の税務~支払編・事例⑤~】機械のリース料を支払う場合

外国法人から機械などをリースにより借り受けて使用する場合に、そのリース料について源泉徴収が必要かどうかの検討を行っていないという企業は大変多いと思います。

特に、海外支店で使用しているリース資産については、所定の手続きを行わずに源泉徴収漏れとなっているケースが多々見受けられます。

今回は、海外に対して機械などのリース料を支払う場合に、源泉徴収が必要となるケースについてご説明します。

【支払編・事例⑤】機械のリース料を支払う場合

 

【質問】機械のリース料を支払う場合に源泉徴収が必要か?

当社は日本国内に工場を有する日本法人ですが、このたび海外から特殊な産業用機械をリースにより導入することになりました。

なお、その機械のメーカーは日本国内に拠点等を有しておらず、かつ、その居住国と日本との間には租税条約が締結されているとのことです。

この場合、そのリース料の支払いについて源泉徴収は必要でしょうか?

 

 

ご質問への回答

ご質問のように、機械設備のリースを受けて国内で使用する場合には、原則として、そのリース料の支払いについて源泉徴収が必要となります。

ただし、その支払先の国との間に租税条約が締結されている場合、源泉徴収の減免を受けられる可能性があります。

さらに、そのリース資産を国外で使用する場合にも、源泉徴収が必要となるケースがあるため注意が必要です。

 

解説

「使用料」に関する国内法の取扱い

非居住者等(海外の会社や個人など)に対して、以下に掲げるような特許権や著作権、設備の使用料といった支払いをする場合には、その支払者が日本国内の業務に使用するものについて、20.42%の源泉徴収が必要とされています。

このような支払いを、「使用料」と言います。

(1)工業所有権等その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずる者の使用料又は譲渡による対価

(2)著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価

(3)機械、装置、車両、運搬具、工具、器具及び備品の使用料

 

ご質問のケースでは、リースにより導入する機械設備を国内の工場で使用するとのことですので、国内法に基づけば、そのリース料の支払いは原則として源泉徴収が必要となります。

ただし、租税条約の適用により源泉徴収が減免されるケースもありますが、具体的な取扱いは、締結されている租税条約に応じて国ごとに取扱いが異なります。

 

 

「使用料」に関する租税条約の取扱い

租税条約においては、設備の使用料について、国内法とは異なる取扱いをしています。

具体的には、次のような種類に分けられます。

(1)事業所得として取扱うもの

(2)使用料として取扱うもの

(3)使用料の範囲からは除いているもの

 

このうち、(1)については、その支払先の会社や個人が、日本に拠点を有してビジネスを行っている場合(これを税法用語で「PE(恒久的施設)」と言います)を除き、日本において課税されることはありません。

また、(2)や(3)の場合には、日本において源泉徴収が必要となりますが、その支払先の会社や個人が租税条約の適用を受けられる対象者(税法用語である「居住者」に該当する者)である限りにおいて、源泉徴収税率の減免(軽減又は免除)を受けられる可能性もあります

 

これらのうち、具体的に(1)(2)(3)のどれに該当するかは、その締結されている租税条約に応じて国ごとに異なるため、個別に取扱いを確認する必要があります

もし、租税条約に基づく減免措置を受けることができる場合には、租税条約届出書などの所定の手続きを行う必要があります。

 

なお、その設備を国外で使用する場合(例えば、支店において使用する場合など)には、国内法では源泉徴収の対象になりませんが、租税条約の定めにより源泉徴収が必要となるケースがほとんどです。

 

このように、使用料については租税条約と国内法で取扱いが異なるため、その支払いの内容や使用状況等を詳しく確認した上で、慎重に検討を行わないと源泉徴収が漏れてしまうケースがとても多いので注意が必要です。

 

 

源泉徴収の手続き

源泉徴収の手続きについては、こちらの記事を参照下さい。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編④~】源泉徴収の手続き(租税条約届出書、納付、法定調書)

 

租税条約の適用を受けることができる場合には、こちらの記事も参照ください。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編⑥~】租税条約による特例を受けるための手続き

 

参考条文

所得税法161条七号、同162条
所得税法施行令284条

 

 

当ブログでは、代表的な事例を基に基本的な考え方をご紹介しておりますので、全てのケースに該当するものではありません。
詳細な検討や解答をご希望の方は、顧問税理士にご相談いただくか、弊社までお問い合わせ下さい。

 

ご注意事項(必ずお読みください)

・本記事は記事執筆当時の制度・税制をもとに執筆されたものであり、現在の法令や実務とは異なる可能性があります。内容の正確性・最新性について保証するものではありません。

・恐れ入りますが、本記事の内容に関する個別のご質問やご相談にはお答えいたしかねます。あらかじめご了承ください。

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