【確定申告の基礎】領収書のギモン②~領収書かレシートか~
事業に必要な経費を支払ったら、領収書をもらって、帳簿に記載する必要があります。
レシートはあるけど、領収書はもらっていない、というケースもあるかと思います。
また、お店でレシートがもらえるのに、わざわざ領収書を買いて貰う必要はあるのでしょうか?
今回は、「領収書」と「レシート」の違いについてまとめてみました。
【確定申告の基礎】領収書のギモン②~領収書かレシートか~
「領収書」と「レシート」の違い
一般的な「領収書」と「レシート」の違いは次の通りです。 ※最近では、レジから印字された紙に「領収書」と書かれており、後から店員が手書きで宛名を書いてくれるような店もあります。
確定申告で必要な「領収書」とは?
何かお買い物をしたり、飲食店などで支払いをする際に、わざわざ領収書をもらう方は多いと思います。
そもそも、確定申告のためには、いわゆる「レシート」ではダメで、必ず「領収書」を保管していなければいけないのでしょうか?
実のところ、個人の方に確定申告を義務付けている所得税法という法律では、経費を計上するために領収書が必要であるということは明確に書かれていません。
また、領収書とレシートの違いについても特に触れられていません。
ただし、全く根拠書類がないと、誰もが勝手に経費を架空計上したり、金額を水増ししたりできてしまうため、「実際に支払ったこと」「事業に使われたこと」などを証明できるような根拠書類が必要ということになります。
領収書とは本来、お買い物をしたりサービスを受けた時に、支払を受けたことを売手が証明するもので、通常は支払いをすれば必ず発行してもらえます。
そこで確定申告では、「支払いの事実」を証明する書類として通常入手するはずの領収書を、経費として認めてもらうための証拠書類として使っているということになります。
取引に関して相手方から受け取った領収書などの書類は、一定期間保管しなければなりません。
なお、「間違いなく支払いが行われたこと」「事業に使われたこと」などが分かるような書類であれば、名称は「領収書」ではなくても問題ありません。
別の法律にはなりますが、印紙税法という法律では、「お買上げ票」などでも、それが金銭を受領した事実を証明するものであるときは、これも領収書と同等の書類であるとしています。
従って、確定申告をするためには、「領収書」でも「レシート」でも、はたまた「お買上げ票」などの「金銭を受領したことを証明するための書類」であれば、その名称は関係ないことになります。
詳細はこちらも参照ください。
→【確定申告の基礎】領収書のギモン①~確定申告に必要な領収書とは?~
どちらが正式の書類か
領収書もレシートも価値は同じです。
よく、手書きの「領収書」の方が正式なものと考えている方もいらっしゃるかと思いますが、特に優劣はありません。
ただし、記載事項が極端に少ないレシートは別です。
以前は、レジから出るレシートには、金額しか記載されていないレシートをもらうことも多かったと思います。
レジによっては、日付も記載されていないケースもあったりします。
昔から営業している個人商店や飲食店などでは、今もこのようなレジを使用されている所があるかと思います。
このようなレシートでは、どのお店で、いつ、どんな商品・サービスにお金を支払ったのか証明することができません。
従って、会社の経費にするために、わざわざ手書きの領収書をもらう習慣が生まれたのだと思います。
記載事項については、その使用する目的が個人の確定申告用なのか、会社が法人税を申告するためなのか、または会社員の方が経費精算するためなのか、といった用途によって異なりますが、主に次のような事項が記載されている書類であればよいかと思います。
領収書をもらったほうが良い場合
上記の通り、領収書もレシートでも使用できるのですが、領収書をもらった方が良いケースもあります。
保存期間
これは、レシートの印字方法(用紙)に理由があります。
事業の経費として使った領収書などの書類は、受け取ってから7年間保存しなければなりません。
レシートは、従来から感熱紙を使っている事が多く、時間が経つとインクが消えてしまったり、光が当たると黒くなってしまう可能性があるため、長期の保存には向きません。
従って、感熱紙のレシートを確定申告で使う場合には、わざわざコピーを取る必要があります。
消費税の申告をする場合
消費税の納税義務がある方は、もう少し要件が厳しくなっているので、注意が必要です(原則課税の場合)。
消費税の申告において経費を認めてもらうためには、次の5項目が記載された書類を保管していなければなりません。
①「書類の作成者の氏名又は名称」
②「年月日」
③「買ったものの内容やサービスの内容」
④「支払った金額」
⑤「支払った人の氏名又は名称」
①~④はレシートに記載されていることも多いですが、⑤の支払った人(レシートを受け取る人)の氏名や名称は、レシートには記載されていないことが多いです。
また、3万円未満である場合や、自販機で買った場合や公共交通機関の乗車券など、領収書等を受け取れないようなやむを得ない事情がある場合には、領収書等を保存しなくても構わないことになっています(ただしその場合でも、帳簿に一定の事項を記載する必要があります)。
経費精算をする場合
確定申告とは関係ないですが、会社員の方が会社で経費精算をする場合には、会社のルールで領収書しか認めていないことがあります。
その場合は、レシートではなく領収書をもらう必要があります。
領収書を確定申告の証拠とする時に注意すること
上記とは逆に、領収書を確定申告の証拠書類とする場合に、注意した方が良いこともあります。
但し書き
領収書の場合、「但し書き」というものがあって、その支払の内容を記載することになっています。
何かお買い物をすると、「お品代として」といった書き方をされたりします。
確定申告の根拠書類として考えると、「但し書き」には、本来はもう少し詳細な情報が必要です。
事業の経費として認めてもらうためには、
①何を②いつ③誰から④いくらで⑤誰が支払ったのか
という情報と加えて、
⑥何のために支払ったのかという説明も必要になります。
領収書の場合は、②いつ③誰から④いくらで、という情報は記載されていますが、「①何を」「⑥何のために」という情報が不足しています。
例えば、「お品代として」としか書かれてしなかった場合、それが文房具なのか、電化製品なのか、具体的な内容が分かりません。
もちろん購入したお店の名前からある程度は推測できますが、それが事業とどのように関係しているのか、ぱっと見ただけでは理解するのが難しいです。
更に、その中に家庭用に買ったものが含まれている可能性もあります。
家庭用に買ったものは、事業の経費になりません。
また、「食事代として」と書かれた領収書が、家族で食事をしたものか、ビジネスの相手と食事をしたものか分かりません。
これは領収書でも同じですが、レシートだともう少し情報が増えます。
レシートの場合、人数や注文した料理名まで記載されることがありますので、より客観的に経費の証拠となります。
逆に、例えば「大人2人、小人1人」といった記載がされていると、家族で食事をしたのではないかと疑われる可能性もあります。
従って、領収書の但し書きが「お品代」や「飲食代」となっているときは、「何を」「何のために」支払ったのかをメモ書きしておくことが必要です。
「上様」でも良いのか
領収書の場合、宛名を「上様」とされたり、空欄の領収書をもらうことがあります。
消費税の申告をしないのであれば、宛名は記載していなくても法律上は問題ありません。
また、領収書を頼むと必ず「宛名はどうしますか?」と聞かれますので、あまり意味がないかもしれません。
それでも、別の人が支払ったものを不正利用しているのではないかという疑いの目で見られないためにも、宛名はあった方が無難です。
押印されていない領収書
領収書には、一般的に発行者のゴム印や押印がされていることが多いです。
ただ、領収書への押印がないからと言って、その領収書が無効であるわけではありませんので、必ずしも税務上は押印は必要ありません。
それでも、税務調査が入った時に、押印がされていない領収書だと、偽造したものではないかと疑われる可能性もありますので注意が必要です。
領収書とレシートを両方もらえるか
基本的には、二重発行は認めていないところが多いと思います。
領収書の本来の目的のひとつには、領収書の発行元(売手)が、支払いを受けたことを証明することにあります。
発行元としては、領収書とレシートの両方をお客様に渡してしまうと、後でトラブルになりかねませんし、受け取った側も経費の二重計上をしてしまう原因となります。
もしどうしても領収書とレシートの両方が欲しいときは、まずは一度頼んでみると良いと思います。
お店によっては、領収書とレシートの両方を発行する場合に、例えばレシートには「領収書発行済」などと記載し、あくまでレシートは領収書の控えとして取り扱っているところも良く見かけますが、これは正しいやり方だと思います。
最後に
結局のところ、確定申告では、事業に関連のある経費であることが証明できるのであれば、領収書でもレシートでも構いません。
上記の「領収書の記載事項」がきちんと記載されており、かつ、事業に関連のあることを説明できるようにしておくことが大切です。
領収書については、今後も数回にわたってご説明したいと思います。 ご興味のある方は、次の記事もご参照ください。
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