【確定申告の基礎】控除証明書をなくしたときの対処方法
確定申告や年末調整をする際に、その年に支払った社会保険料や生命保険料などの控除を受けるためには、各種の「控除証明書」を提出しなくてはなりません。
「控除証明書」は早ければ10月頃に届くため、申告時期になって紛失される方がとても多いです。
今回は、確定申告書に添付すべき各種の証明書を無くしてしまった時の対処方法についてまとめてみました。
【確定申告の基礎】控除証明書をなくしたときの対処方法
確定申告書に添付すべき証明書とは
個人の所得税では、家族を扶養していたり、多額の医療費を支払ったり、更には社会保険料や生命保険料などを払った場合に、所得金額(儲けや利益の金額)から一定額を控除することができます。
これを、「所得控除」と言います。
また、多額の医療費を支払った方や、住宅ローンを借りてマイホームを取得した方は、一定の税額控除を受けることができます。
所得控除や税額控除を受けるためには、(扶養控除など一部を除き)それぞれ証明書などの添付が必要となります。
なお、e-Taxを利用して申告する場合は社会保険料や生命保険料の証明書を添付する必要はありませんが、証明書を5年間保存しなければなりません。
【国税庁HP】よくある質問(Q&A)
会社員の方で、年末調整で計算済の所得控除(社会保険料控除や生命保険料控除など)については、改めて控除証明書を添付する必要はありません。
社会保険料(国民健康保険や健康保険、介護保険など)
本人や生計を一にする親族の健康保険料などを支払ったときは、その支払った保険料の金額全額を所得金額から控除することができます。
添付する証明書
証明書の添付は不要です。
1年間に支払った保険料の金額を、確定申告書に記載すれば問題ありません。
自治体によっては「国民健康保険料支払額のお知らせ」のような通知を送ってくれるところがありますので、金額はそちらも参考にしてください。
※会社員の方で、年末調整で控除済の方は添付する必要はありません。
社会保険料(国民年金保険料)
社会保険料のうち、国民年金や国民年金基金の保険料を支払った場合には、控除証明書の添付が必要となります。
添付する証明書
「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」
証明書に記載がない保険料(過去の分や将来の分など)を支払った場合には、その納付済領収書も添付します。
e-Taxを利用して申告する場合は証明書の添付は不要ですが、控除証明書を5年間保存しなければなりません。
なお、会社員の方で、年末調整で控除済の方は添付する必要はありません。
なくした時はどうする?
日本年金機構の専用ダイヤルか、最寄りの年金事務所で再発行手続きが可能です。
その際は、年金手帳など基礎年金番号のわかるものをお手元に用意するか、持参しましょう。
Q. 控除証明書をなくしてしまったのですが再発行できますか。【日本年金機構HP 】
http://www.nenkin.go.jp/faq/kokunen/seido/kojoshomei/20150317-01.html
社会保険料(国民年金基金)
添付する証明書
「国民年金基金の社会保険料控除証明書」
なくした時はどうする?
各都道府県の国民年金基金に、再交付の申請を行います。
国民年金基金連合会のHPに、控除証明書の再交付申請書が用意されています。
国民年金基金連合会HP
http://www.npfa.or.jp/join/application.html
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済法に規定された共済契約、個人型確定拠出年金、心身障害者扶養共済などの掛金を支払った場合に、その掛金支払額を所得金額から控除することができます。
添付する証明書
「小規模企業共済掛金控除証明書」
「小規模企業共済等掛金払込証明書 確定拠出年金(個人型年金)」
証明書に記載がない保険料(過去の分や将来の分など)を支払った場合には、その納付済領収書も添付します。
なくした時はどうする?
<小規模企業共済>
電話による自動応答の発送サービスか、HPのWebフォームが用意されています。
どちらも利用できない場合は、共済相談室(コールセンター)に連絡します。
『掛金払込証明書』を紛失しました。再発行できますか。【中小企業基盤整備機構】
http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/faq/reissuance.html#no2
<個人型確定拠出年金>
払込証明書は国民年金基金連合会から発行されますので、こちらから再発行の問い合わせをします。
国民年金基金連合会HP
http://www.npfa.or.jp/join/application.html
なお、掛金の払込方法が「事業主払込」の場合は、会社が年末調整を行っているため、確定申告書への添付は不要です(証明書は発行されません)。
生命保険料控除
一般の生命保険契約等、介護医療保険契約等、個人年金保険契約等の保険料を支払った場合に、一定額を所得金額から控除することができます。
平成24年1月1日以後に契約したもの(新契約)と、それ以前に契約したもの(旧契約)で取扱いが異なります。
添付する証明書
「生命保険料等の控除証明書」や「保険料払込証明書」と記載された書類を添付します。
控除証明書は、多くの保険会社が毎年10月~11月頃に郵送されてきます。
申告時期より大分早い時期に届くので、きちんと保管しておかなければなりません。
なお、旧契約のものについては、年間支払保険料が9,000円以下の場合、控除証明書の添付は不要です。
なくした時はどうする?
ハガキや封筒など、保険会社によって形式は様々ですので、見つけにくいかもしれません。
改めて書類が届いていないか探してみましょう。
また保険加入初年度であれば、保険証券の端に控除証明書が付いていることもあります。
心当たりを探しても見つけられないときは、保険会社に再発行を依頼します。
保険会社のホームページを見ると、よくあるお問い合わせや、「控除証明書の再発行はこちら」といった案内が出ていることが多いです。
注意が必要なのが、再発行の請求の方法によって、再発行に掛かる日数が異なる場合があります。
申告期限ギリギリの場合には、できれば電話か窓口で急いでいる旨をお伝えいただいた方が良いかと思います。
なお、会社で一括して加入している生命保険等の場合は、人事部で証明書を保管している可能性もあります。
この場合、年末調整で既に控除も織り込み済だと思いますので、確定申告の際に改めて証明書を添付する必要はありません。
地震保険料控除
損害保険で、地震等による損害部分の保険料を支払った人が受けることができる控除です。
添付する証明書
「地震保険料控除証明書」
なくした時はどうする?
ハガキや封筒など、保険会社によって形式は様々です。 また保険加入初年度であれば、保険証券の端に控除証明書が付いていることもあります。 加入している損害保険会社に問い合わせて下さい。 保険会社のホームページを見ると、よくあるお問い合わせや、「控除証明書の再発行はこちら」といった案内が出ていることが多いです。 注意が必要なのが、再発行の請求の方法によって、再発行に掛かる日数が異なる場合があります。 申告期限ギリギリの場合には、できれば電話か窓口で急いでいる旨をお伝えいただいた方が良いかと思います。
勤労学生控除
申告者が勤労学生であり、給与所得が103万円以下である場合に受けることができる控除
添付する証明書
学校や職業訓練法人から発行された証明書
なくした時はどうする?
発行元の学校に問い合わせて下さい。
医療費控除
その年の医療費が10万円以上かかった場合(年間総所得金額等が200万円未満の人はその5%分の金額)に受けることができる控除です。
添付する証明書
医療費の領収書を確定申告書に添付するか、申告書の提出時に提示をすることになっています。
※平成29年度税制改正により、平成29年分(平成30年に申告する分)以後については、領収書の提出は不要となる見込みです。
ただし、申告期限から5年間は保存が必要となりますので、捨てることの無いよう注意して下さい。
なくした時はどうする?
領収書は再発行を受け付けてくれない医療機関もありますが、まずは一度相談してみて下さい。
寄附金控除(ふるさと納税)
添付する証明書
自治体から送付される「寄附金受領証明書」を添付します。
「ワンストップ特例制度」を利用して特例申請した方は、寄附金受領証明書は不要です。
ただし「ワンストップ特例制度」を利用することができるのは、確定申告の不要な給与所得者等で、ふるさと納税を行う自治体の数が5団体以内である場合のみですので、ご注意ください。
なくした時はどうする?
寄附金受領証明書は、通常寄附をした1ヶ月後くらいに自治体から郵送されてきます。
返礼品に同封されているわけではないので、ご注意ください。
「ワンストップ特例申請」をされた方でも、確定申告をする場合には添付が必要ですので、捨てないようにしましょう。
万が一なくしてしまった時は、発行元である自治体に連絡します。
電話で問い合わせる際は、「寄附金受領証明書」を紛失してしまったこと、氏名、連絡先、住所、寄付をした時期、寄付額などをお手元に控えておくと良いでしょう。
再発行に掛かる日数は、依頼する時期や自治体によって異なります。
余裕を持って早めに手続きをして下さい。
自治体の問い合わせ先は、以下のウェブサイトからも確認できます。
全国の自治体のふるさと納税に関するページ【総務省 ふるさと納税ポータルサイト】
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/area/
雑損控除
災害や横領、盗難などにあって住宅や家財に損害を受けた場合に受けることができる控除です。
添付する署名書
受けた損害のためにやむを得ず支出した金額の領収書を提出するか提示します。
なくした時はどうする?
領収書の再発行は受け付けてくれないところもありますが、まずは一度支払った相手先に問い合わせてみて下さい。
住宅取得控除
いわゆる住宅ローン控除です。 初年度は若干面倒な手続きが必要ですが、2年目以降は、確定申告書への記載と、残高証明書の添付で済みます。 なお、年末調整で控除済の場合は、確定申告書への添付は不要です。
添付する署名書
金融機関から送られてくる、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」が必要となります。
なくした時はどうする?
融資を受けている金融機関にお問い合わせ下さい。
再発行が間に合わなかったときは?
ここでは、いくつか対応例を挙げておきますが、実際に手続きされる際には、ペナルティや延滞税が発生する可能性もございます。
申告書を提出する前に、最寄りの税務署にご相談されることをお勧めします。
①e-Taxで申告書を提出する
e-Taxで確定申告書を提出する場合は、上記証明書のほとんどを添付する必要はありません。
ただし、電子証明書(マイナンバーカードなど)やICカードリーダーなどの事前準備が必要ですので、ご留意下さい。
税理士に確定申告を依頼している場合は、税理士が代わりにe-Taxを行うことができますので、ご自身で電子証明書などをご準備頂く必要はありません。
なお、証明書類は確定申告期限から5年間保存しなければなりませんので、必ず再発行を受けて下さい。
②その控除がないものとして申告をして、後日「更正の請求」という手続きを行う
一旦、その適用を受けようとする控除がないものとして確定申告書を提出し、後日控除証明書が手元に届いたら、その控除を入れて再度計算をした上で、多く払い過ぎた税金の還付手続きをすることができます。
申告期限を過ぎてから行う還付の手続きは「更正の請求」と言い、「更正の請求書」という書類を提出します。
記載事項はほぼ同じですが、書類や様式が異なるため、注意が必要です。
なお、申告期限内での再提出などの場合であれば、申告書の差し替えを受け付けてもらえます。最寄りの税務署にお問い合わせ下さい。
e-Taxの場合、申告期限内であれば、最後に提出した申告書を「正しいもの」として受理してもらえます。
その場合、税務署から確認の電話が掛かってくる可能性があります。
③控除できる金額が分かっている場合には、証明書を添付せずに確定申告書を提出し、控除証明書が手元に届いたら証明書だけを提出する(または申告書を再提出する)
証明書を添付せずに確定申告書を提出した場合、控除を受けられない可能性もありますので、この方法で受け付けてもらえるかどうかは、事前に税務署に確認してください。
最後に
今回は、確定申告書に添付する各種証明書について、添付書類やなくした時の対処方法を簡単にご説明しました。 確定申告で皆さんが気になる領収書のギモンについても、4回に分けてご説明しています。 ご興味のある方は、次の記事もご参照ください。
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【確定申告の基礎】控除証明書をなくしたときの対処方法~(この記事です)
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