法人成りで個人財産を引き継ぐ方法とは?

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法人成りで個人財産を引き継ぐ方法とは?

個人事業主が事業の成長や節税対策を目的として法人化(法人成り)する際、個人財産を法人にどのように引き継ぐかが重要なポイントになります。

本記事では、法人成りに伴う財産の引き継ぎ方法や注意点について解説します。

1. 法人成りとは?

法人成りとは、個人事業主が新たに法人(株式会社や合同会社など)を設立し、個人で行っていた事業を法人として継続することを指します。

法人化することで、節税効果や信用力向上などのメリットを享受できます。

2. 個人財産を法人へ引き継ぐ方法

(1) 資産を現物出資する

個人事業主が所有する事業用資産(不動産・車両・機械設備など)を法人の資本金として出資する方法です。

メリット:資本金を増やすことができ、法人の財務基盤を強化できる

デメリット:出資財産の評価手続きが必要であり、場合によっては税務署の確認が求められる

(2) 法人へ売却する(譲渡)

個人事業主が保有する資産を法人に売却する方法です。

メリット:法人の資産として明確に計上できる

デメリット:個人側で譲渡所得税が発生する可能性がある

(3) 賃貸契約を結ぶ

個人が所有する不動産や設備を法人に賃貸する方法です。

メリット:個人の安定した収入源になる

デメリット:法人側に継続的な支出が発生する

3. 財産移転における税務上の注意点

譲渡所得税の発生:個人から法人へ資産を売却すると、売却益に対して所得税が課される可能性があります。

消費税の課税:事業用資産の譲渡は消費税の課税対象となる場合があります。

法人の会計処理:法人側では、取得した資産を適正に計上し、減価償却の対象とする必要があります。

4. 現実的な処理(法人へ売却する)

実務的な処理方法は「売却」

(1)の現物出資による資産の引継ぎは、手続きが煩雑になってしまうため、実務上はほとんど行われることはありません。

また、(3)のリースやレンタルも、個人の側で収入が生じてしまい確定申告をしなければなりませんので、あまり現実的ではありません。

そこで今回は、個人から会社に対して、一般的な減価償却資産を”売却”によって引き継ぐ場合の取扱いについて、簡単にご紹介したいと思います。

個人から資産を買い取る場合に注意すること

個人から減価償却資産を買い取る場合には、次のような点に注意が必要です。

・売却した個人の所得税や消費税

・いくらで買い取るか

・耐用年数をどうするか

売却した個人の所得税や消費税

原則的には、その買取時の時価により評価した金額で買い取る必要があります。

もし、個人事業の貸借対照表に計上されている帳簿価額(簿価)よりも、買取時の時価の方が大きい場合には、その差額が売却益となってしまい、個人の方で課税されることになってしまいます。

※逆に、帳簿価額>買取価額の場合は、資産の購入価額の一部が費用にならない可能性も出てきてしまうため、注意が必要です。

そのため、買取金額をいくらで設定するのかが重要になります。

ちなみに、一般的な減価償却資産を会社に売却する場合には、その資産の売却は「事業所得」ではなく、個人所得税における「譲渡所得(総合課税)」に該当します。

引き継ぐ資産が棚卸資産の場合は「事業所得」になりますが、もし土地や建物などを譲渡するようであれば、「譲渡所得(分離課税)」となります。

売却する資産によって、個人所得税の取扱いが異なりますので注意してください。

また、売却する個人事業側で消費税の申告納税を行っている場合には、消費税の取り扱いも重要です。

若干複雑になってきますので、税理士さんにご相談いただくことをお勧めします。

いくらで買い取るか

上記の通り、原則的には、その買取時の時価により評価した金額で買い取る必要があります。

ただし、個人で売却益が出ると所得税が掛かってしまいますので、売却益が生じないような買取金額にする必要があります。

例えば買い取る資産が、パソコンや自動車であれば、世間には中古品を扱うお店やインターネットサイトが多くありますので、同モデルで同様の使用期間を経た中古資産の時価を調べることが可能です。

そこで調べた時価が、帳簿価額と大きな乖離がないようであれば、帳簿価額で買い取ることを検討しても良いかと思います。

一般的に中古品として出回っていないような資産の場合は、帳簿価額がその資産の時価であるという考え方に一定の合理性が認められる余地もあるかと思いますが、この場合は顧問税理士にご相談ください。

なお、もし棚卸資産を会社に引き継ぐ場合には、原則としてその棚卸資産の販売価額で売却することになります。

ただし、販売価額の70%未満で譲渡すると、税務上は販売価額の70%相当額で譲渡したものとみなすというルールがありますので、この規定も考慮に入れて買取金額を決定するのが良いかと思います。

耐用年数をどうするか

減価償却資産を買い取った会社側では、耐用年数をどうするかが問題となります。

まずは、その買取金額が30万円未満の場合には、次のような取扱いが考えられます。

10万円未満の資産等
・少額なもの(10万円未満のもの)や短期間しか使えないようなもの(使用可能期間が1年未満のもの)は、購入して実際に使用開始した年度において費用として計上することができます。
30万円未満の資産等
・資本金の額が1億円以下の中小企業者である青色申告法人に限っては、取得価額が30万円未満の減価償却資産についても、その取得した年度の費用とすることができます。
(ただし、その事業年度中に取得した30万円未満の少額減価償却資産の合計額が、300万円に達するまでのものに限られます)
10万円〜20万円のもの
・取得価額が20万円未満の減価償却資産について、通常の減価償却の方法によらず、3年で均等償却することができます。

【参考記事】
【会社決算のポイント⑥】少額減価償却資産の処理方法

もし少額減価償却資産の取扱いを受けられなくても、引き継いだ資産は中古品であると思いますので、耐用年数を決めるに当たって、新品よりも短い期間で償却(費用化)することができます。

中古資産の耐用年数の決め方には、原則法と簡便法がありますが、簡便法の場合の耐用年数は次のような算式で計算します。

【簡便法】

①法定耐用年数の全部を経過している場合

法定耐用年数×20%

②法定耐用年数の一部を経過している場合

(法定耐用年数ー経過年数)+(経過年数×20%)

※1年未満の端数は切り捨て。計算結果が2年未満のときは2年とする。

【参考記事】
【会社決算のポイント⑤】減価償却費を計算する

事業用資産以外で会社に引き継ぐもの

個人事業から法人成りした場合、今まで個人事業で行っていた売上や契約について、「何を引き継ぐべきか」「どこまで引き継げるのか」で悩んでしまう部分があるかと思います。

ここでは、パソコンなどの減価償却資産以外で、会社として引き継ぐものとして主なものを挙げておきます。

売掛金や買掛金、未払金など

基本的に、個人事業の時の売上や仕入れに係るものであれば、あくまでも個人事業の範囲内で完結させますので、新しく作った会社に引き継ぐ必要はありません。

従来通り、個人事業の口座に入金してもらったり、個人事業のお金から支払いをしたりします。

ただし、法人設立前の売上について、法人を設立してから請求書を出すような場合もあるかもしれません。

その場合も、あくまで個人事業としての売上になりますので、注意が必要です。

もちろん、個人事業としての活動については、その年分について確定申告が必要になります。

【参考記事】
【法人の決算に向けて⑦】法人設立前の売上については、個人で確定申告が必要

賃貸借契約

事務所を賃借している場合には、改めて会社と大家さんとの間で、賃貸借契約を結び直す必要があります。

法人契約については保証金などについて特別な条件が付されている場合があるかもしれませんし、そもそも会社との契約を認めていない物件もないとは言い切れません。

法人成りをする前に、忘れないように確認しておきましょう。

また、もしパソコンなどの事業用資産をリースにより使用している場合にも、リース会社との間で、契約者変更について相談しておく必要があります。

敷金や保証金など

事務所を賃借している場合で、その契約者を法人に変更した場合には、大家さんに預けていた敷金を会社に引き継ぐことになるかもしれません。

契約の方法によりますが、もし法人との契約に変わった後でも、従前と同額の敷金を預け入れたままにしておく場合には、会社から個人に対して、その引き継ぐ敷金に相当する金額を払い込んで、会社の貸借対照表に敷金を計上することになります。

官公庁の許認可手続きなど

仕事によっては、許認可が必要な手続きがありますが、これは法人成りしても自動で引き継ぐことにはなりませんので、改めて法人として手続きを行うことがほとんどかと思います。

青色申告の承認申請

税務上の手続きも上記と同じで、個人事業の手続きは法人には引き継がれません。

従って、法人設立届と合わせて、青色申告の承認申請も改めて行う必要があります。

【参考記事】
【起業を考えている方へ】<STEP 6>開業手続きをする

さいごに

今回は、個人事業から法人成りをするにあたって、個人事業で使用していた減価償却資産を買い取る場合についてご紹介しました。

今回ご紹介したのは概要ですし、あくまでも一般的な考え方でしかありませんので、個々の事例については顧問税理士と相談して処理していただけますようお願い致します。

 
 

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