【国際取引の税務〜支払編⑦〜】租税条約届出書を提出しなかった場合

海外との取引の場合は、租税条約を適用することで、源泉徴収が不要になったり、源泉徴収すべき税額を少なくすることができます(これを「減免措置」と言います)。
租税条約の減免措置を受けるためには、その取引の支払いをする前に、租税条約届出書などの必要な手続きを行う必要があります。
租税条約届出書を提出しないと、これらの減免措置を受けることができません。
そもそも、租税条約の適用を受けられることを知らなかったケースや、うっかり届出書の提出を忘れてしまったようなケースなどもあると思います。
今回は、租税条約届出書を提出しなかった場合の取扱いについて解説します。
【国際取引の税務〜支払編⑦〜】租税条約届出書を提出しなかった場合
租税条約に基づく減免措置(源泉税率の軽減や免除)を受ける場合には、租税条約届出書などの書類を、その支払の日の前日までに税務署に提出しなければなりません。
今回のように、租税条約届出書を提出しなかった場合としては、次のようなケースが想定されます。
・租税条約届出書を提出していないにもかかわらず、租税条約で認められている減免措置を適用してしまった場合
・本来は租税条約の減免措置を受けられたのに、租税条約届出書を提出せずに、原則通りの税率で源泉徴収してしまった場合
それぞれについて、以下ご説明します。
届出書未提出にもかかわらず、減免措置を適用してしまった場合
減免措置には、「源泉税が軽減される場合」と、「源泉税が免除される場合」があります。
減免措置を適用して源泉徴収した場合
これは、たとえば原則通りの源泉徴収税率が20.42%で、租税条約の適用により源泉税率が10%に減免されるような場合に、租税条約届出書を提出せずに10%の税率で源泉徴収したようなケースです。
租税条約届出書の提出漏れが発覚するのは、おそらく税務調査の際に指摘を受けることが一般的かと思われます。
この場合の流れとしては、次の通りとなります。
①厳密に言えば、まず本来納めるべきであった20.42%と、実際に納付した10%との差額部分について税務署に納付します。
②その上で、『租税条約届出書』と『租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書』を提出して、その追加納付した差額分の税額の還付を受けることになると考えられます。
結局は還付されるので同じように見えますが、その差額相当については納税が漏れていたことになるので、不納付加算税や延滞税などのペナルティが掛かることになります。
減免措置を適用して源泉徴収しなかった場合
こちらは、たとえば原則通りの源泉徴収税率が20.42%で、租税条約の適用により源泉免除となるような場合に、租税条約届出書を提出せず、しかも源泉徴収も行わなかったようなケースです。
こちらのケースも、上記と同様です。
租税条約届出書の提出漏れが発覚するのは、おそらく税務調査の際に指摘を受けることが一般的かと思われます。
この場合の流れとしては、次の通りとなります。
①源泉徴収を行っていないため、本来納めるべきであった20.42%の税額を税務署に納付します。
②その上で、『租税条約届出書』と『租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書』を提出して、その追加納付した税額の還付を受けることになります。
結局は還付されるので同じように見えますが、その納付漏れであった税額については納税が漏れていたことになるので、不納付加算税や延滞税などのペナルティが掛かることになります。
原則通りの税率で源泉徴収してしまった場合
原則通りの税率で源泉徴収してしまった場合
もし租税条約届出書を提出していたら、低い税率での源泉徴収か、または源泉徴収をしなくても良かったような場合に、租税条約届出書を提出せず、原則通りの税率で源泉徴収を行なったようなケースです。
これは、手続きとしては何ら間違っていません。
繰り返しになりますが、もし租税条約の適用を受けるのであれば、相手方(支払いを受ける者)から租税条約届出書を提出してもらって、支払日の前日までに税務署に提出しなければなりませんので、この届出書の提出をしていないのであれば、原則通りの税率で源泉徴収するのが正しい処理になります。
従って、特に相手方から何の申し出もなければ、支払側である貴社は何もする必要はありません。
ただし、もし相手方から後日、「遡って租税条約の適用を受けたい」との申し出があれば、所定の手続きを行って源泉税の還付を受けることができます。
この手続については、次回ご説明します。
【参考記事】支払先から租税条約の適用を受けたいと言われたら
さいごに
租税条約に基づいて減免措置の適用を受けることができる場合には、届出書を提出するなどの適切な手続きを行わないと、結果的に後日面倒な手続きが必要になってしまいます。
できるだけ最初の支払の時点で、租税条約の適用を受けられるかどうか、また、相手方が租税条約の適用を受けるかどうかを確認することが必要です。
- ご注意事項(必ずお読みください)
・本記事は記事執筆当時の制度・税制をもとに執筆されたものであり、現在の法令や実務とは異なる可能性があります。内容の正確性・最新性について保証するものではありません。・恐れ入りますが、本記事の内容に関する個別のご質問やご相談にはお答えいたしかねます。あらかじめご了承ください。
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代表税理士 下島聡司