外国の会社にコンピュータの保守料を支払う場合【国際取引の税務~支払編・事例④~】

【国際取引の税務~支払編・事例④~】コンピュータの保守料を支払う場合

外国法人や、外資系企業の日本支店から、何らかの技術サービスを受ける場合に、その支払いに対して源泉徴収が必要となるケースがあります。

その一方で、そのサービスが一定の業務に該当する場合には、源泉徴収を不要とする取扱いが設けられています。

今回は、外国法人に対して技術サービスの対価を支払う場合の源泉徴収の取扱いについて説明します。

【支払編・事例④~】コンピュータの保守料を支払う場合

 

【質問】コンピュータの保守料に源泉徴収は必要か?

当社は、外資系企業の日本支店から、サーバを含むコンピュータ設備一式を導入することになりました。
社内にメンテナンスを行う人員が不足しているため、定期的な保守契約を併せて依頼することとして、今後は毎月、一定の保守料を支払うことになります。

この場合、保守料の支払い時に源泉徴収は必要でしょうか?

 

ご質問への回答

ご質問のケースでは、コンピュータ等の販売活動の一貫として定期的な保守業務が行われるものと考えられますので、その保守料の支払いについて源泉徴収は不要と考えられます。

 

解説

源泉徴収は必要か

日本において、「人的役務提供事業」に該当するサービスを外国法人から受けて、その対価を支払う場合には、源泉徴収が必要となります。

「人的役務提供事業」とは、外国法人などが日本において、その外国法人に雇用されている人や、その外国法人と契約している人などを派遣して行う一定の事業を言います。

 

「一定の事業」とは具体的には、次のような事業とされています。

(1)映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とするもの

(2)弁護士、公認会計士、建築士その他の自由職業者の役務の提供を主たる内容とするもの

(3)科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能を有する者のその知識又は技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とするもの

 

ただし、上記(3)のうち、機械設備の販売その他事業を行う者の主たる業務に付随して行われる場合における事業で、その機械設備の販売業者が、その販売業務に伴って販売先に対して技術者等を派遣する業務などは除かれるものとされています。

 

本件の保守料についても、その保守業務は販売活動の一貫として同一の販売者により提供されるものであることから、源泉徴収は不要であると考えられます。

 

なお、類似の事例として、機械設備の導入に伴って設置や試運転、アフターサービスなどを受ける場合にも同様の取扱いになることが想定されます。

【参考記事】
機械の輸入に伴ってアフターサービスを受けた場合

 

 

(参考)個人の外国人技術者に技術サービス料を支払う場合

間違いやすい点ですが、上記の事例は、サービスを行う本人に対して支払う対価ではありません。

本人が自らサービスを提供する場合は、似たような用語ですが「人的役務の提供」対価となり、取扱いが異なりますので注意が必要です。

もし日本に住所がない外国人技術者に対してサービスの対価を支払う場合には、原則的にその支払額の20.42%を源泉徴収しなければならないことになっています。

【参考記事】
海外の大学教授に講演料を支払う場合

 

 

源泉徴収の手続き

源泉徴収の手続きについては、こちらの記事を参照下さい。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編④~】源泉徴収の手続き(租税条約届出書、納付、法定調書)

 

租税条約の適用を受けることができる場合には、こちらの記事も参照ください。

【参考記事】
【国際取引の税務~支払編⑥~】租税条約による特例を受けるための手続き

 

 

参考条文

所得税法161条、同212条、同213条
所得税法施行令282条三号
所得税基本通達161-11

 

 

当ブログでは、代表的な事例を基に基本的な考え方をご紹介しておりますので、全てのケースに該当するものではありません。
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