海外から機械を輸入にした場合の源泉徴収【国際取引の税務~支払編・事例⑫~】
海外の会社から機械装置等を輸入してその対価を支払う場合、通常は、関税や輸入消費税以外に特に税金の支払いなどが発生することはありません。
ただし、稀に日本において源泉徴収が必要なケースや、現地においてVATなどの課税が生じるケースがあります。
今回は、海外から機械装置を輸入する場合に、税務上気を付けたいことを解説します。
【支払編・事例⑫】海外から機械を輸入した場合
- 【質問】海外から機械を輸入する際に源泉徴収は必要か?
- 当社は、海外の会社から完成品である機械設備一式を購入し、海外から輸入しました。
この輸入に伴って支払う購入対価については、源泉徴収を行う必要はあるのでしょうか?
ご質問への回答
ご質問のように、単純に機械設備一式を購入して輸入するだけであれば、源泉徴収が必要となるケースはほとんどありません。
この場合、輸入元のメーカーから付随したサービスを受けることもあり、ほとんどのケースでは付随サービスが源泉徴収の対象になることはありませんが、念のため確認されることをお勧めします。
また、通関に係る関税や輸入消費税、引取運賃や保険料などを取得価額に算入する処理を忘れないよう気を付ける必要があります。
解説
源泉徴収は必要か
通常は、単に商品や製品、機械装置などを輸入しただけでは、その対価の支払時に日本において源泉徴収が必要となることはありません。
ただし、その輸入に付随して何らかの技術サービスを受けた場合には、その契約の状況やサービスの内容によっては、そのサービスについての支払いが人的役務提供事業の対価として源泉徴収の対象となるケースもありますので、注意が必要です。
なお、その技術サービスが、機械設備の販売その他事業を行う者にとっての主たる業務に付随して行われる場合には、それがその機械設備の据付け、組立て、試運転等のために技術者等を派遣したりする行為は、源泉徴収が必要とされる人的役務提供事業の範囲から除かれています。
【参考記事】
ロイヤルティを支払う場合
機械の輸入に伴ってアフターサービスを受けた場合
仕入計上のタイミング
税務や会計において、仕入をどのタイミングで計上するかは、出荷基準や引渡基準、検収基準などが想定されますが、輸入をする際に税務上もっとも注意すべきは、その所有権が移転するタイミングがいつか、という点です。
輸入仕入の場合、FOBやCIF、DDUやDDPといった貿易条件によって、引渡し時期や保険料及び運送、関税などの負担方法が決められていますが、厳密に言えば、これらの取引条件は所有権移転の時期を直接定めたものではありません。
そのため、所有権移転のタイミングを明確にしたい場合には、売買契約書などにおいて所有権の移転時期について明記するなど、双方がどのタイミングで所有権が移転するかを取り決めておくことになります。
商慣習上は、引渡し時又は代金の支払い時に所有権も移転したものと解釈されており、税務の世界でも、これらの商慣習に応じて仕入計上のタイミングとしているケースが多いものと思われます。
税務とは直接関係ありませんが、重要な売買契約であれば、契約書等において所有権の移転時期についても明記するということを検討しても良いかと思います。
関税・輸入消費税
通常、商品や製品、機械装置等を海外から輸入する際には、関税や輸入消費税が掛かります。
関税はその輸入する品目ごとに税率が決められており、関税や運賃・保険料を含む金額に対して、輸入消費税が掛かる仕組みになっています。
このうち、関税については、引取に係る運賃や保険料などとともに、その資産の取得価額に含める必要があります。
一方で輸入消費税については、消費税の課税事業者であれば、その課税期間の売上に係る消費税額から控除することになります。
参考条文
所得税法161条1項六号
所得税法施行令282条三号
所得税基本通達161-25
法人税法施行令54条
当ブログでは、代表的な事例を基に基本的な考え方をご紹介しておりますので、全てのケースに該当するものではありません。
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海外企業への支払いに関するテーマで、ブログを更新しています。
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(更新予定)
海外企業に支払いをする際に気をつけること
源泉徴収の要否を判定する(基本的な流れ)
源泉徴収しないとどうなるか
源泉徴収の手続き(租税条約の届出、納付方法、法定調書など)
海外企業に仕入れ代金を支払う場合
海外企業にロイヤルティを支払う場合
海外企業にソフトウェア開発の委託費を支払う場合 など
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