外国の会社にソフトウェア開発の委託料を支払う場合【国際取引の税務~支払編・事例③~】
ソフトウェア開発の業界において、国内で販売や使用するソフトウェアであっても、いわゆるオフショア開発として、その一部または全部をインドや中国、東南アジアなどの会社に開発委託する場面が多いものと思われます。
海外への開発委託に当たっては、言葉の壁や契約書の整備など、クリアにしなければならない事項が多いのですが、税務の論点については検討が漏れていて、後で源泉徴収が必要と指摘されるケースが大変多くあります。
今回は、海外の会社にソフトウェア開発の委託を行う場合に、気を付けるべきことを説明します。
【支払編・事例③】ソフトウェア開発の委託料を支払う場合
- 【質問】ソフトウェア開発の委託料を支払う場合に源泉徴収は必要か?
-
当社は、国内で販売する予定のソフトウェアについて、機能の一部分の開発・制作を海外にあるソフトウェア開発会社に委託することになりました。
具体的な開発作業については、当社が仕様書を作成し、その仕様書に基づいて開発会社が海外現地において開発を行うことになります。
また、開発されたソフトウェアの著作権や所有権などは、原則として当社に帰属するものとされています。この場合、当社が支払う委託料について源泉徴収は必要でしょうか?
ご質問への回答
ご質問のように、ソフトウェアの単純な開発作業だけを海外の会社に委託する行為については、日本国外で行われる役務提供であると考えられますので、その対価として支払う委託料について、源泉徴収は不要であると考えられます。
ただし、その開発内容についての具体的な事実関係を確認した上で、著作権の譲渡に当たる部分がないかを精査する必要があります。
さらに、その委託先のソフトウェア開発会社がインド法人である場合には、取扱いが異なりますので注意が必要です。
解説
源泉徴収は必要か
ご質問の内容から推察するに、貴社は販売するソフトウェアの企画や開発指示までを行うものと想定され、委託先の開発会社は、貴社が作成した仕様書に基づいて開発作業を行うとのことですので、その開発作業に付随して生じる著作権などの権利を貴社が取得するような行為ではないものと考えられます。
貴社が企画して開発を行うソフトウェアの一部について、その開発業務を委託する行為は、業務委託契約に基づく役務の提供であると考えられますので、その開発作業が日本国内で行われるものでない限り、源泉徴収の必要はありません。
著作権の有無に注意
ソフトウェアは、著作権法において、プログラムの著作物として著作権の対象となっています。
ソフトウェアの開発を海外の会社に委託する場合には、その開発業務や委託の状況によっては、著作権の譲渡と認定されて日本で源泉徴収が必要となる可能性があります。
例えば、その開発の内容が、ソフトウェアやゲームソフトの開発などで、相手方から著作権の譲渡を受けるような内容である場合には、国内法及び租税条約で規定される「使用料」に該当することが想定されますので、慎重に判断する必要があります。
インド法人に支払う場合
ただし、これがインドの会社に対する開発委託の場合には、取扱いが異なります。
インドとの間で締結された租税条約によると、使用料条項である同条約12条4項において、「技術者その他の人員によって提供される技術的性質の役務に対する料金」については、いわゆる「使用料」に含まれるものとされています。
その場合は、その開発業務が日本国外で行われていたとしても、日本法人がインド法人に支払う開発委託の対価は、源泉徴収が必要となっています。
租税条約届出書を提出すれば10%の源泉徴収となりますが、届出書の提出などの所定の手続きを行わないと、国内法に従って20.42%の源泉徴収が必要となります。
【参考記事】
【支払編・事例⑰】インド法人に対して役務提供の対価を支払う場合
源泉徴収の手続き
源泉徴収の手続きについては、こちらの記事を参照下さい。
【参考記事】
【国際取引の税務~支払編④~】源泉徴収の手続き(租税条約届出書、納付、法定調書)
租税条約の適用を受けることができる場合には、こちらの記事も参照ください。
【参考記事】
【国際取引の税務~支払編⑥~】租税条約による特例を受けるための手続き
参考条文
所得税法161条 ほか
当ブログでは、代表的な事例を基に基本的な考え方をご紹介しておりますので、全てのケースに該当するものではありません。
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